迷い出た羊のバラード

 

工藤冬里

 
 

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解像度という飲み物
居酒屋のような明かり
垂れ下がる洗濯物
柿の実は太り
髪もくるり
やましさの故に
飲めないくすり
二つの夕方の間に

愛されてはぐれ者
雲塊に阻まれる祈り
彷徨うのは標野
以前の死者との隔たり
わたしを自分で屠り
食用のために
自分で調理
二つの夕方の間に

モオブからモノ
日本と同じみどり
納屋から斧
作業の滞り
思いは偏り
試練を蝶結びに
アクアパッツァにはアサリ
二つの夕方の間に

道は先細り
羊は南(エル・スール/ネゲブ)に
食べるなら微塵切り
二つの夕方の間に

 

 

 

#poetry #rock musician

我が家の庭紹介/Introduction to my garden

 

辻 和人

 
 

ドミッッミ レファッッファ
ファラッッラ ソシッッシ
ドミッッミ レファッッファ
ファラッッラ ソシッッシ

ミヤミヤが夏休みを利用してウチの庭の動画を作った
たった3坪ちょい日当たりも良くない
けど庭師さん呼んでああでもないこうでもない
渾身の力傾けて植えるもの考えた
ミヤミヤ魂こもった庭なんだ
約2分で非公開のくせして英語字幕入り
チープなフリー素材の音楽もついている
そんな動画をご紹介します!

「はじめに我が家に1つだけある寄せ植えです」
This is a flower pot at the entrance.
「トウガラシ、ミント、アイビーなど。アイビーが存在感ありますね」
Red pepper, Mint, Ivy, etc., are there. Ivy has a presence.

鉢から零れんばかりの緑のもじゃもじゃ
「目線」がふうわり近づいて、静止
この前面にあるのがヒトデ型の葉っぱの奴がアイビーだな
狭い狭い空間を埋め尽くして
伸び足りない伸び足りない
伸び足……

「南側の庭」
This is a garden on the south side.
3坪の庭の左横から「目線」がふぅっと入ってくる
下方に落として、落とし過ぎか、おっ少し上に修正しました
「いろいろ植わっています。ソヨゴ、ゆず、ジューンベリーなど」
There are various plants, such as Longstalk, Yuzu, Juneberry, etc.
右から左へゆっくり移動する「目線」
ナツハゼもあるね
うへぇ
数本しか植えてないのに結構鬱蒼とした感じじゃん
夏の威力か
いろんな濃さの緑がぎらっと光る
ゆず、今年はあんまり実をつけてないな
去年は結構取れたんだけどな
おっと

「目線」、不意に上方に浮いて
「ジューンベリーがかなり伸びてきました」
The Juneberry tree grew tall.
ねえねえ、このジューンベリー
冬にぼくがハシゴ使ってギッッチョギッッチョ枝切った奴なんだよ
あんなに切りまくったのにもうこんなに伸びてるのか
画面をさわさわ揺らして勝利宣言
植物様には敵いません
秋になったらまた切るかなあ、と思ってたら

「目線」が下に切り替わる
左から右へゆっくりと
「下草も元気です。ヤブランどんどん増えています」
The plants beneath trees are perky. Liriope is growing steadily.
ほんとだ、植えたのは一カ所だったのに
いつのまにか庭中に点在してる
細長い葉がしなっと半円描いて澄ました様子
庭は毎朝見てるつもりなのに気がつかないもんだ
と、

「目線」が不意に真下へ
「グラウンドは芝にしたかったのですが、日当たりがあまりよくないので、
実際はコケと混合です」
I wanted the ground covered by lawn. But actually, it is a combination of lawn and moss, since it is not so sunny.
そうなんだよねえ
芝があんまりふさふさしなくてねえ
水やりが不足してるのかと思ったらそういう問題じゃないらしい
でもね、悪くはないんだよ
ここで「目線」がぐっと地面に近づく
じっとりじっとり土に粘りつくコケ
味わいあるよね
芝とコケ、仲いいんだか悪いんだか絡み合うように共生している様を
「目線」は舐めるように映して
そのまま庭の右奥へ、と思ったら

「シソを昨日植えてみたのですが、早速虫に食われてしまいました」
I planted Perila yesterday. It was already eaten by insects.
穴あきの葉っぱをクローズアップする「目線」
ありゃありゃ
ぼくもミヤミヤもシソは大好き
増えたら刻んで冷ややっこの薬味に、なんて思ってたのに
植物の繁殖力もすごいけどそれを狙う虫の食欲もハンパない
残念に感じているのか
「目線」はしばらくシソの穴あき姿を愛おしそうに撫でる
気を取り直して

「こちらは玄関の植え込みです」
There are plants near the entrance,
北側の玄関サイドを左横から覗く「目線」
白い家の壁に緑が映えてるね
家と自動車の間の縦30センチ横2メートルの極小スペース
「アジサイ、ソヨゴなど」
including Hydrangea, Longstalk holly, etc.
このアジサイ、茎のトコぶっとくて木みたいなんだよ
右端の名前わかんない庭木は緑の実に甲虫が集まっちゃって大変
「目線」、上に向かったか、
もう次?

「コンクリートの隙間はクリーピングタイムを植えました」
I planted Creeping Thyme in the space between the concrete.
クリーピングタイムって地を這うように伸びるハーブで
春にはピンクの花が咲く
「目線」、ちょっと近づきました
しばらく静止
駐車場のコンクリートの細い隙間の土から
きっちり水分養分取って
もしゃもしゃたくましく生きてます
「目線」、もしゃもしゃを軽く追っかけて

「庭を屋内から見るとこんな感じです」
When I view the garden from inside, it is like this.
大きな窓越しに庭を眺める
正面から近づいて
「目線」、ゆっくり左から右へ
ジェーンベリー、ゆず、ナツハゼ、ソヨゴ
お澄まし顔で整列
うん、これはいつものおとなしい庭の植物って感じだ
家の外ではやんちゃだが内からだとと猫かぶってる
「目線」、また正面に戻り
両脇にカーテンが軽く映るくらいまで
下がって、下がって、下がって

横長長方形のフレームに
ふぅわふぅわ浮かんだ庭
「目線」が一生懸命整理してくれたおかげで
3坪ちょいの我が家の庭の<今>がとーってもよくわかったよ
ミヤミヤ魂
家の外でも内でも
フレームありでもなしでも
しっかり漂ってた
お疲れっ、よくできてるよっ

「ご視聴いただき、ありがとうございました」
Thank you for watching the movie.

ドミッッミ レファッッファ
ファラッッラ ソシッッシ
ドミッッミ レファッッファ
ファラッッラ ソシッッシ

 

 

 

Turn out the light before you go to bed.
寝る前に明かりを消しなさい。 *

 

さとう三千魚

 
 

in the evening
go home

update on the beach wind

I had a curry made by the woman
And then I fell asleep?

on the sofa

midnight
wake up

I took a shower

Moco is sleeping with the woman

at the desk
I’m calling off

I’ll go near the sleep

Turn out the light before you go to bed *

 

 

夕方に
帰って

浜風を更新した

女の作ったカレーを食べた
それで眠ったのか

ソファーにいた

深夜に
目覚めて

シャワーを浴びた

モコは
女と眠っている

机の前で
エポケーを中止する

眠りの傍にいく

寝る前に明かりを消しなさい *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

すすり泣く曇り空のバラード

 

工藤冬里

 
 

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暑いが曇っている
夏も終わりだ
事物は震えている
きっと冷房のせいだ
木々の緑は殆ど黒だ
花もなく
道といえば獣道だけだ
曇り空の下ですすり泣く

うす青い峰々が白濁している
病院から見える景色はみな同じだ
車は車道を走る
薬もあの時と一緒だ
死ぬ元気が出るほど元気だ
今は夏だけが往く
夏だけが終わりだ
曇り空の下ですすり泣く

来ないまま死ぬと思っている
のはだめだ
生きているうちに来る
と思っているのもだめだ
いつ来てもいいと思っていなければだめだ
病気も死もなく
トラウマを思い出すこともなくなるのだ
曇り空の下ですすり泣く

いつ来てもいいように待っていなければだめだ
恐れもなく
思い出すこともなくなるのだ
曇り空の下ですすり泣く

 

 

 

#poetry #rock musician

夢素描 05

 

西島一洋

 

飛び転死

 
 

今回は飛ぶ夢について書こうと思っていた。最近は飛ぶ夢をあまり見ない。もしくは見ていても思い出せない。とはいえ、昔たくさん見たので、それらをのんびり思い出しながら書こうと思っていた。もちろん、書けないことはない。

しかし昨日見た夢が、特に鮮明だとか強烈だとかではないけれど、妙に心の奥底に引っかかっていて、やっぱり吐露した方がよいかとおもう。

これは夢ではないのだが、一回りほど年下の友人が、ある時ある集まりの中である出来事を述懐した。というより告白か。十人くらい居合わせたと思う。

子供の頃の体験談である。しかし、この日まで人に言ったことはなく、ずっと苦しんでいた。話したことで癒されるわけでもないが、この話は、もちろん本人にとっては切羽詰まった現実そのものなので、奇異とか面白いという類のことではない。

ただ僕は面白かった。何が面白いかというと、僕にはその情景がくっきりとイメージできたからだった。おそらくは、現実のイメージとは違うのだろうが、そんなことはどうでもよい。

薄暗い。水が流れている。勢いよく。溜まりもある。濁ってはいないが透き通ってはいない。流れてきた。少女だ。小さい少女だ。3歳ぐらいだろうか。最初はゆっくりと、そして、目の前に来た時は異様に早い。手は出せた。だが、怖くて動けない。少女はそのまま流されて、そして、死んだ。

さて、昨日見た夢だが、ここまで書き進んでいるうちに、なんだか、書く必要もないのかなあとも思えてきた。

ただ、どうしても気になるので、書いておこう。おそらく今書かなければ、きっと忘れてしまう。いや、書くことによって忘れてしまうということもあるので、記憶を留めるためには文字化しない方が良いのかなあ。

労働と死という夢であった。

この国では、死も労働として認められており、貨幣経済も認知されている。したがって、死ぬことによって労働の対価が支払われる。死ぬことに宗教とか哲学とか思想とかもちろん芸術とか一切の共同幻想は介在しない。死ぬことの大義名分も無い。

ただ、死ぬのである。なぜか、淀んだ水の中に飛び込んでそれでおしまいなのだ。死への労働志願者は途切れることなくどんどんやってくる。気になるのはその労働への対価は誰に支払われるのだろう。

夢だから情景は、くっきりというかもやもやというか、ただ、あっさりと死んでいく人たち、僕はまだこちら側にいたが、ああそういうもんだなあ、と、特に悲しくもなく、苦しくもなく、罪の意識も無く、ああ、いずれ、こんな感じで死んでいくのかなあという感じか。

でも夢のリアリティから離れてみれば、やっぱり死にたくは無いなあ。

 

 

 

A bat is not a bird but an animal.
こうもりは鳥ではなく獣だ。 *

 

さとう三千魚

 
 

already
It’s time to sleep

just now
I got a call from Arai-kun

Midnight
Moco is barking

Moco is in the bedroom with the woman

Maybe it’s because I’m not going
Moco is barking

She’s barking

There is meaning in the barking

Moco’s thoughts are

there

A bat is not a bird but an animal *

Moco is not a bird but an animal

 

 

もう
眠る

時間なのだ

さっき
荒井くんから電話があった

深夜に

モコが
吠えている

モコは女と寝室にいる

わたしが行かないからか
モコは吠えている

吠えている

吠えることのなかに
意味がある

思いが
ある

モコの思いがそこに

ある

こうもりは鳥ではなく獣だ *

モコは鳥ではなく獣だ

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

さらぬ別れ

 

工藤冬里

 
 

むかし、男ありけり。よしがありやられこし野菜を誰にも知らせで一人食ひ、滑らかなる黒の石の板を夜の奥にずらししゆく心地して、人に、

ひとり泣きしほたれネカフェに無農薬野菜を食ひしためしやあらむ

 
昔男が居た。事情があって送られてきた野菜を誰にも知らせずに一人で食べ、滑らかな黒の石の板を夜の奥にスライドしていく心地がして、人に、

泣きながら野菜を食べたことがあるだろうか

 

 

 

#poetry #rock musician