死体の無い死

 

工藤冬里

 
 

まだ世界があり稲は髪の毛のように伸びている
預言とは妄想を塞いでいくことだ
徒刑まであと何歩
全ては変わらないし変えてはいけないことを知るべきだ
ところが
死体の無い死は妄想を塞がずに却って
what is truth
と独語する冷笑的な世を 呼び寄せる
呼び寄せられた世に草生す
生きることしか考えない本能が
真夏の
放水路の脇の
水の流入した畑の
ミントの群生の傍に腹を浸し
生命力の減衰のみを待つ
呼び寄せられた世に草生すまでが妄想の永遠だ
死体の無い死に呼び寄せられたTLが草生す
最期まで生きることしか考えなかったが
最期まで自分のためには生きなかった
きみは冷たい水の流入したミントの傍に腹を浸す
戦後何十年経っても発見されない水漬く屍のように

 

 

 

#poetry #rock musician

王国

 

原田淳子

 
 

 

夜は蝉たちの王国

噎せかえる闇
嗚咽する夏

‪19時、‬
コインパーキングのネオンサインは海を指す
汗まみれの腕
涙とおなじ辛さの泡

髪をほどいて波を歩く

暗闇をみると絵を描きたくなるのは
黒がまぶしいから

蝶を捕まえてみたら
口紅だった
久しぶりに化粧をして、踊った

朝の葉にぶらさがった亡骸
三日月形のゆりかご

水たまりに蹲る
白と黒のきみ

ゆりかごは
まだ微かに揺れている

波音のとどかぬ
貝の螺旋のおくのおくで祈る

どの光も途切れぬように
揺れつづけて

 

 

 

There is no accounting for tastes.
趣味というものを説明することはできない。 *

 

さとう三千魚

 
 

midnight
I’m listening to Sinfonia

Zhu Xiao-Mei’s
Sinfonia

I’m listening

Her life must have been a hardship
but

Her music is far from hardship
Her sinfonia is away from hardship

There are moments of light.
windy

I can’t explain the music
Like I can’t explain life

It’s like love
It’s like a pony

run off

There is no accounting for tastes *

 

 

深夜に
Sinfoniaを聴いている

Zhu Xiao-Meiの
Sinfonia

聴いてる

たぶん彼女の生には苦難があったのだろう
だけど

彼女の音楽は苦難から遠くにいる
彼女のsinfoniaは苦難から離れている

瞬間の光があり
風がある

音楽は説明できない
生が説明できないように

恋のようでもある
仔馬のようでもある

走り去る

趣味というものを説明することはできない *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life