無題

 

たいい りょう

 
 

尖った針を 指に突き刺してみよ
さすれば 赤い血が噴き出し
痛みを覚ゆるだろう

赤い血しぶきは
わたしが 未だ 生を得ている証だ

そう わたしは 生きているのだ

月夜に 瘦せこけた 体を 投げ出してみよ
さすれば 飢えた狼が 
我が腐った肉を 喰らうであろう

真っ赤に染まった犬歯は
汚れた泥溝へと沈み
ふたたび 浮かび上がることはない

朽ちた樹葉に 水を与えてみよ
さすれば ますます 葉脈は動脈となり
死へと赴くであろう

我が精神は 肉体を離れ
糸が切れた凧のように
何処へ向かうのか

壊れた舟は
森のなかの湖沼へと
消えてゆかん