室 十四彦
森は庇に満ちている
雨は漏れ落ち
陽はこぼれ出る
忍び寄る風に遠慮はなく
毛虫は糸をつたい降りてくる
クワガタは枝を踏み誤って落ちてもくる
枯れ枝は樹上の茂みから勝手気ままに投棄される
森の神様は上の方ばかり気にかけているんかい!
エナガからカラスに至るまで庇の隙間を狙い定めて脱糞だ
朝のさえずりの爽快さの真意はそこに在る
森は庇に満ち
嵐ともなれば
吹き飛ばされないテントを張ってくれる
巨木の腕は太く枝葉は厚い
頼もしい限りだが
俺ももう歳だと云わんばかりに
バギッと雄たけびを森中へ轟かせる
庇は柱ごと崩落し
森の屋根にホールを産む
さらに大きな
森のような宇宙が現れる
これから、何が落ちてくるんだろう