産む男

 

工藤冬里

 
 

これだけの人が居ても
一人居なくなったと思うと
平穏では居られない
飛ぶことはできるが
低空でしか飛べない日に
やっとの思いでビルを超え
嵌め込み式ベッドを倒し
覗き窓に「まど」と書いて埋没しようとしたが
平穏では居られない
日が斜めに射す田圃
感情を押しつけて指を切らないよう注意しながら
白鷺の下を通過する
斜めの陽は秋にまで到達する
一人が居なくなっただけで

夜中に救急車を呼んで6万5千円かかり払えないので保険証を持ってまた病院に来ている
人生は一割負担にかかっている
最初期のルーリードのまま一生を終えなさい
デモテープのまま発表なさい
いますぐ発表なさい
近づいてくる救急車の
サイレンの音も入れること

自分のことしか考えていないので自分が子供を産むことをなかなか実感できない

https://youtu.be/gPna4mxNr_w

 

 

 

#poetry #rock musician

濃重的陰影

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

濃重的陰影
沉痛的烏雲擠壓著天際。
大水將至的早晨
寫下詩行,離別的眼神。
很久很久以前,請你取下這詩集
尋覓今日;今日大雨,
這世界的淚水……….
孩子們老去,昏昏欲睡。
那些垂死的世代!
行刑者已經在回家的路上;
杯子已飲盡琥珀;你刑期已滿,
手中的傘回到雲上,
在雨中下雨,為你洗旗洗塵
為你準備好渡日渡海的舟船。
暴政削減我們的季節,
路途消耗我們的滄桑,
而我們的抵抗勾勒出呼吸;
在黑暗的律動之間製作曙光。

 
2023年8月11日~8月14日西貢

 

 
 

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Poetry On My Mind (さよなら、黄明珍 life goes on)

 

今井義行 2023©Cloudberry corporation

 
 

さよなら、黄明珍(コウメイチン)、
あなたは、ヘルパーさんを辞めて
台湾・高雄に帰ると言うのだ……

どうしてですか、と聞きたいけど
聞いてしまったら
帰国が早まりそうで出来ない……

還暦をまえにして
一度人生を整理しておきたいのは僕も同じなので、
止められないん、だろうな

「はい、おそうじ、おそうじ!」と黄明珍(コウメイチン)が微笑む火曜日 そんなとき僕の住む古い木造アパートは、急に、明るくなる

彼女は、ヘルパーさんの仲間から、
明珍(めいめい)チャンと呼ばれているので、僕もそう呼ばせてもらっている。どうでもいい流行歌なんかには流されず……落ち着いた暮らし、出来れば、それで、O.Kなのさ……!

僕は、明珍(めいめい)チャンと、随分語り合ったものだ。「僕は、詩人なんです。30年くらい、毎日、毎日書いてきましたよ。」「義行サンは、ずうっと、部屋に籠もってきたのですの?」と明珍(めいめい)チャンはしばしば僕に言った。少しあきれ顔で。

明珍(めいめい)チャンは、お掃除の名手で彼女が部屋の角から角を通り過ぎるたびに、その跡が綺麗に片付いていた。いつの間にかペン立てが机の上で輝いていたり、タオルケットの髪の毛がすっかり払い落とされていたりした。ものたちが本来の意義を取り戻して、光を宿していた、と言うべきかな? 僕は、思ってた。(こういうのを、詩的とも称するのではないかしら……。)と。

でもね。そんなとき、僕は、思い返したりもしたのだった。ペン立ての置かれていない机だったものの佇まい、髪の毛が払い落とされていないタオルケットだったものの佇まい。そこにきっと詩はあるのではないかという僕の頑固な考え。
明珍(めいめい)チャンと僕との間には、大きな溝があるのかな、と思ったら、ちょっと寂しい気持ちもした。

そんな明珍(めいめい)チャンがある日「来月から台湾ニ帰ります。」と告げてきたわけだ。僕は「えーーっ」と大声を上げた。「そんなあ…僕たち、仲よしになれたのに…?」「仲よしですけど、帰りますのよ。」「明珍(めいめい)チャンには、大事な親族がいるんだものね、台湾には…。」「CORONAでずっと帰れませんでしたから。帰った後はずっと居るのですけど。」「明珍(めいめい)チャン。明珍(めいめい)チャンの栗鼠みたいな眼がだいすきなのに…白髪のない髪の毛も、好き。」「わたしも、義行サンの、おおきな子どものところ、好きですのよ。」「うわーっ。((泣))」Poetry On My Mind (相手をいつも輝かせる、僕のなかの詩人。さよならですか?黄明珍ちゃんlife doesn’t go on……) 「義行サン、そんなにも、哀しむことはないのですのよ。」と、明珍(めいめい)チャンは、僕に言った。

「私たちは、長い間とは言えないけれども、ヘルパーとお客様として、ずっとお付き合いしてきましたね…。」「うん、そうだよね。」「その間で、私たちは、とても気持ちが合いましたので、どんどん仲よくなり
ほとんど親友のようになりましたわね。」「……僕は、毎週火曜日に明珍(めいめい)チャンに会うのが本当に楽しみなんだよ。人に対してこんな気持ちになることは、随分なかったのです…。」「私も同じですのよ。義行サンの笑顔を見るのが楽しみなんですのよ……。」

「でもね、やはり別々の人生、なんですのよ。それは、間違っている考えではないと思いますのよ。」「明珍(めいめい)チャン。そのことは、僕もよくわかっているつもりです。もしも、僕と明珍(めいめい)チャンが恋人同士であったとしても、きっと僕たちの人生は、別々の人生なんでしょう……。」「さて、どうするか……私は、ずっと考えてきましたの。」

「私は、限られた時間、これまでよりももっともっと、義行サンのヘルプをいたしますわ。いつどこへ出ても義行サンが活躍できるように、協力して差し上げたいのですわ。」「…明珍(めいめい)チャン…いつも、そのようにしてしてくれて、どうもありがとう。でも、明珍(めいめい)チャンは、子どもっぽい僕に、なぜそこまで、関わってくださるのですか…?」「……それが、大きな友情というものだと思いますのよ。」「そう…。僕は、女の人とお付き合いしてみて、友情のことを考えたりするのは、たぶん初めてだよ。」
「私だって、きっと初めてですのよ。私には70歳になる夫がおりますが、彼のお手伝いをすることも、大きなお仕事ですのよ……。でも、夫も義行サンも、どちらも大切にしています。夫とは、一緒に台湾・高雄に帰ることになりますのよ……。」

「明珍(めいめい)チャンとご主人が無事に台湾に帰り、幸せに暮らしていくことを祈るよ……!」「私も、義行サンがこれから死ぬまで幸せに生きられらるようにできることをしますわ。」「…………。」「私の勤務日は、火曜日2時間ですけれども、これからの残りは、勤務外の時間もたくさんヘルプに伺いますわ。私は、義行サンを応援したいのですわ…!」
「僕も、心から、あなたの幸せを祈るよ。明珍(めいめい)チャン、今までどうもありがとうございました……。これからもよろしくお願いしますね!」
Poetry On My Mind (さよなら、黄明珍ちゃんlife goes on)お元気で!!

 
 

2023/05/28