広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
かずかずの呵々大笑
かんかん照りのかめかめは
かぴかぴの湖面
かなかなの声
鎌とぐ鍛冶屋わきの
カンナ華麗で
キリン草
きちきちの岩壺
ぎすぎすの二人
きつきつのテント
キズなめキスぎみ
ぎりぎりの稜線
くりくりのぐりぐら
くちなしの花で
くよう、くもなく
ぐだぐだのくやみ
くすくす、くにゃくにゃ
虞美人草もくよくよ
けしの花
けへけへケロケロ
けっしてそんな
ケタケタ、ケラケラ
ゲジゲジが見える
げばげば、ケケケケ
こわごわ恋人占い
コスモスに託す
ことことこんにゃくを煮る人
こでまりの小道
これで終わり?
「こりごり、コストコの胡蝶蘭、送るわ」
先週、吉祥寺のはずれ
「ギャラリー ナベサン」で
詩書出版の「書肆山田の本」という
展示会が開かれていた
編集・装幀で素晴らしい本作りをされていた
「書肆山田」の社主・鈴木一民さんの奥様
大泉史世さんが昨年お亡くなりになって以来
新しい詩集の出版をされていなかった
遺された詩集のなかから
一民さんが、どのくらいあったろうか
多くの美本・稀覯本を搬入されて
美しく陳列、即売されていたのだった
僕は一民さんと、飲みながら
詩集だしたいね
という話をなんどかして
けっきょく、できずじまいだった
なんか愚図愚図してしまったのだ
1980年、池袋の詩書店で買った
吉岡実『ポール・クレイの食卓』
小さな赤い函に入ったフランス装の詩集
表紙には片山健さんの鉛筆画が添えられている
大好きなおふたりによる
『ポール・クレイの食卓』
それ以前から、吉岡実さんの詩集は
何冊も愛読してきたが
この一冊はとりわけ大事な本だ
吉岡さんとは渋谷の百軒店の喫茶店で
お会いしたこともあった
詩の話はしたかなあ
舞踏のはなしを沢山したのだった
10日日曜日、展示最終日になって
一民さんが持ってこられた
鈴木志郎康さんの
『とがりんぼう、ウフフっちゃ。』が
書肆山田の本を買う、ラストになった
『とがりんぼう、ウフフっちゃ。』
なんともなんとも 愛らしい
こんなにすばらしくて いいのか!
80歳を過ぎて志郎康さんが
ピカピカの一年生のような
やさしくておちゃめで
深い詩集を遺された
「浜風文庫」のさとう三千魚さんのことも
なんども出てきます
帰り道の自転車が
ウフフっちゃ、にこにこしてた
其処にある月が全てを綺麗に照らしていた
満月に近い巨大な月が夜空に浮かび
僕は夜の音に耳を澄ませた
真夜中の深い静寂の中
不自然な程明瞭な月明かりが
僕に語りかける
僕は始めて
自然に呼吸する事の出来る場所を見つけた
Stand By Me … Stand By Me
君の記憶をひとつひとつ
呼び起こし断片を繋いだ
世界が夜に属しても月は輝き
君は僕の傍に居る 何も怖くない
むっくり起き出した
夜の一番ふかーいこの時間
マットが微かに震え
震えがだんだん大きくなり
見守り用ベッドで寝てたぼくを睡眠から追い出す
バタッパ、パタババッ
こかずとんが体を反らせて
こかずとんが肩をくねらせて
こかずとんがお尻を突き出して
パタッバッバッバッ
やってるやってる
コミヤミヤが遂に体得した寝返りの術
一度コツを覚えれば後は何てことない
コミヤミヤはころっころっ気持ち良さそうに回転している
焦るよねえ
すぐ横であれやられちゃあ
それからこかずとんは来る日も来る日も
練習練習
でもコミヤミヤより重いこかずとんの体は
ころっとは転がってくれない
バタッパ、パタババッ
思い切り勢いをつけてるけど
肩が十分内側に向いていない
バタッパ、バタッパ
せっかくの力が上に向いちゃって回転に使われないんだな
ウィ、ウィ、ウィエーン
ああ、泣き出しちゃったよ
そんなに悔しいか
このところコミヤミヤもこかずとんも夜まとめて寝るようになっていた
真夜中に目が覚めるなんて余程のことだ
このまま遅れを取ってちゃいけない
ずっと寝返りできなかったらどうしよう
練習しなきゃ、練習しなきゃ
こんなに一生懸命なのに報われない
でもね、こかずとん
これ、大人の世界ではしょっちゅうなんだよ
頑張ったからその分成果が出るかと言えばそんなことはない
残業して作った資料がデータの取り方間違ってるってわかって全部やり直し
こかずとん、君はそういう人生の真実を
ちょっと早い時期から経験してるってわけだね
バタッパッパ、ウィエーン
試練は続く、が
おっと、今のなかなかいいぞ
右肩がちゃんと内側に入ってる、右足も使ってるな
これでもう少しでお尻を浮かすと回れるか
ウィ、ウィ、ウィエーン、ウィ
涙流しながら静かになっていくこかずとん
さすがに疲れたか
寝よう、寝よう
明日もあるし近いうちに絶対成功するよ
こかずとんは眠り
かずとんパパももうすぐ眠り
寝返りころっころっコミヤミヤはぐーぐー熟睡中
モコは
いないから
居間のソファーの
モコの
傍らにいることもない
仏間の
小机の
本や
資料を
二階にあげた
二階の机の上の積まれた本を下ろした
半年
二階のこの部屋は使わなかった
ダンボールは畳んで
クルマのトランクに積んだ
ホームセンターのリサイクル置き場に出して
海を見にいった
フロントガラスの向こうに
半島はいた
貨物船は浮かんでいた
水平線が光っていた
海から帰って
ベッドに大の字に眠った
呻いていた
夢なのか
憶えていない
なぜ呻くのか
わからない
ベッドから起きると羽毛布団は身体の形に凹んでいた
身体の形の凹みを見ていた
#poetry #no poetry,no life