原田淳子
ティン カン トン
根っ子の 奥の
きみの 響きさ
ティン カン トン
ひかりの 泉の
ぼくの 寝ぐらさ
ティン カン トン
ここに 来て
ここに 来ないで
白い 太陽が
ぼくらを 灼く
雨の ハンモック
逆さまの 虹
ぼくらは 子のない
無口な 家族さ
このところ
荒井くんと
話していない
64の頃だから
6月くらいからかな
話していない
どう
してるかな
酔うと
荒井くんは
ひどいことを言う
それで
しばらく
電話していない
でも
気になってる
どうしてるの
かな
いま聴いてる
ラ・モンテ・ヤングも
工藤冬里も
荒井くんの
両国か
浅草のアパートで
聴かせてもらった
ラ・モンテも
工藤も
音で石を積んでいる
ちいさなころ
わたしも
軒下の土台柱の端に石を積んだ
雨垂れを避けて
ひとり
積んだ
いまも
石を積んでいるよ
#poetry #no poetry,no life
思いつかなかった理由を挙げられ続け
煮しめられた魚の子の
冬に向かって段々に着膨れしていく忍耐
喉にはARDBEG
綿を仕舞って自分がアルバニアからペルーへ
祖母から受け継いだ稲荷の理由を知って
痒みと死別の種類について 根を剪定される
糺されながら氷を求めているのだろうな
矯正の歯からキャラメルの音声
葛の国から顔を覘かせる爬虫のように
日頃から自分の考えを持つな
雲にハードルがないのがいけないんだ
アルバニアから離れちゃだめだ
入院の無駄が役割を果たす
私は忍耐です
忍耐に時給をあげる
賢い花が地方に咲いて
身に付くために学ぶことやらいろいろあります
鍛えられたハードルのない雲の
欠け茶碗の欠片
白く尖った貝の
無釉の
硬貨の重さ
思いやりは英語で
自由な者にも奴隷にも
売り買い出来ない凍結が臨む
関西弁で覚えてしまった氷結
違いを楽しんでいる筈だ
世界は趣味の悪い花壇としての
ピンクの遺跡
思いやりは英語でcompassion
じっくり考えるはreflect on
そろそろ焦ったほうがいいかもしれない
#poetry #rock musician
あっ、落ちた。
スルスルと僕の手から簡単に滑り落ちた。
闇の異臭のする液体の中に。
もうだめだ。
きっともうだめだ、と瞬間頭をよぎった。
こうなったら、冷静になって、拾い上げること。
多分だめだ。
とはいえ、僕は、拾い上げるための道具、いや、専用の道具では無いが、それを思いついた。それしかない、と、思った。
時間がないという理由もある。
あと二時間弱、それが、限界だ。
急いで、家に帰って、風呂場にある、自作の天窓開け用の金具を、現場に持って帰る。
先日、確か針金を買ったはずなのに、それが、見つからない。
しょうがない。
この天窓開け用の金具に全てを賭ける。
落ちたのは、プラスチック製の、40センチほどの菅だ。
内径は、10ミリほどかな。
闇の液体の中の彼の存在に、光を当てなければならない。入り口は、直径10センチ。ヘッドランプを頭から外し、なんとか彼の存在を確認する。液体を通してゆらゆらしているが、間違いなく彼だ。
彼というのは、落とした、パイプのこと、内径10ミリ、長さ400ミリ。
浮遊しているが、安定していない。小さな、覗き穴、そして、わずかの灯り。何度も、何度も見失う。
おや?
引っかかったぞ、もしかして、救い上げることができるかもしれぬ。
頑張るしかない。
小さな覗き穴、そこに金具を入れて、浮遊している彼を取り出すのだ。
浮遊する彼は、金具になんとか、引っ掛かる時もあるのだが、おっ、ピンとはねて、スーイ。
よし、引っかかったぞ。
あ、だめだ。
もおいい。
あきらめよう。
しょうがない。
そんなこんなで二時間が経過。
だめだ。
だめだ。
やっぱりだめだ。
もう一回チャレンジしてだめだったら、もうあきらめよう。
だめな時はあるんだ、それを感受しよう。
奇跡が起きた。
いまだに信じられない。
取れた。