michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

當傍晚無聲地抹去星辰

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

當傍晚無聲地抹去星辰,前世
塵土,起伏如波瀾
黑暗的文件如晦,裏面好黑
大地蟄伏,花朵猶豫

這最難將息,寒冬骨架
自來世生出肋骨,種子沉痛
家譜灰燼;那就重讀灰燼,從此無名
此刻退色,你是唯一的音節。

就是不屈的石頭
那些在流亡裡往返的孤魂
洗滌我們的盲文,奧德修斯!
來到盡頭,我一無所見⋯⋯

 
.2020年1月11日

 

 

・翻訳はこちらで
https://www.deepl.com/translator

 

 

 

I don’t have my dictionary at hand.
手元に辞書がない。 *

 

さとう三千魚

 
 

this morning

I ate yesterday’s chirashizushi

then
I went to see the sea

I copied Aimyon to the player in the woman’s car

“I heard that there is delicious pasta”

before noon
I updated the beach wind library

Ichijo’s “painting”
Matsuda’s “heaven”
Hirose’s “Fence 381”
And Kudo’s “freeze”
I released it to the beach wind library

I’m trying to make life

now
here

trying to live

I don’t have my dictionary at hand *

 
 

今朝

昨日の残りの
ちらしの

寿司を食べた

それから
海を見に行った

女の車の
プレーヤーに

あいみょんをコピーした

“おいしいパスタがあると聞いて”をコピーした

昼前に
浜風文庫を更新した

一条さんの”絵”と
松田さんの”天国”と
広瀬さんの”塀381″と
工藤さんの”凍結”を浜風文庫に公開した

わたし

生を作ろうとしてる

いま
ここに

生きようとしている

手元に辞書がない *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

凍結

 

工藤冬里

 
 

左と右が千切れて飛んだ構造の中で
愛国心というものを風花の軽さに浮かせて
ぼやけさせた未来の雪曇りに
ひとときの麻痺を狙うマヌーヴァー

愛によって絡め取られ
我方他方(アバンタバン)を 失い
凍結され永絶されて
雪曇りの中にひとり
完全な孤独の中にひとり追いやられる

 

 

 

#poetry #rock musician

回れ独楽(こま) 散れ散れに我 ゆきゆきて

 

一条美由紀

 
 


王冠の下に泉があった
民は隠れている
王は言った
「出でよ、我が前に!」
白漠とした宮殿には王の声だけが響いた

 


栄えるものは滅びる
地下に眠るものはやがて起きてくる
静かに静かに彼らはやってくる
我々の乗る電車はいつか停車する

 


ネコは暖かい
ネコは柔らかい
ネコはひだまり
そして私の猫は天国にいる

 

 

 

手を洗う

 

須賀章雅

 
 

陽が沈み黄昏て
黄色く汚れた街に月が出る頃
男たちは手を洗う

むかし場末の名画座でみた映画で
男が手を洗っていた
敵との闘いから生還した警部補が
洗面台に向かって延々と手を洗い続ける
疲れと血を洗い流すようにいつ果てるともなく
それがラストシーンだった

若い志賀直哉も日に何度も手を洗った
さきほど洗ったばかりの手を
また執拗に洗わなければ気が済まなかった
その若い清潔な手にケガレがみえていたのだろう

あの映画をみた頃の
若いわたしも頻繁に手を洗っていた
潔癖でもないのに手を洗った
自分の手にケガレがみえていたのだろう
「神経たかり」とも云われていた
「ケッペキにいさん 手を洗う」
と吉田美奈子が歌うレコードが出た時
自分の生活が視られているようだった

女たちだって手を洗う
それは知っているつもりだよ
マクベス夫人も執拗に手を洗っていたもの
彼女にだけはみえる血糊を流そうとして

あの映画の俳優もすでに遠く死んでしまったが
あの映画の中で警部補はいまだに手を洗っている
呼び物だったカーチェイスの場面より
洗面台の鏡の前で手を洗う男を思い出す
疲れ果てた寂しい背中をみせて手を洗っていた男と
蛇口から流れ続ける水の音

黄色く汚れた街に月が出た
ところでわたしはまだ手を洗い続けている
あれからずっと
擦り切れて血の滲むまで
夢の中でも手を洗い続けている

 

 

 

*2020年1月10日作
これを書いた頃はその後、至る所でみんなが熱心に手を洗うようになろうとは思ってもみなかったのだったが……。

 

 

 

The road runs along the coast.
道路は海岸に沿って延びている。 *

 

さとう三千魚

 
 

the cold feels
tonight

the moon
is it there

I opened the window

seaside town
I have walked

Fukaura
Owase

I have walked

the moon would have been

even then
the moon

I can’t see it
in the sky

would have been

The road runs along the coast *

 
 

寒さが
沁みる

今夜

月が
そこに

いるかと

窓を
開けてみた

海辺の街を歩いたことがある

深浦とか
尾鷲とか

歩いたことが
ある

月はいたのだったろう

そのときも
月は

見えないが
空に

いたのだったろう

道路は海岸に沿って延びている *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

あの幻冬

 

小関千恵

 
 

10年前の今日は、雪が降っていた
10年経った今日は、風が吹いている

猫は10歳、歳を取ったはず
わたしも10歳、歳を取ったはず

コーヒーを淹れている
同じ電動ミルを使い続けている

眩しさは同じように、
陽は日に差している

ずっと、同じ部屋に住んでいた

何処かを見つめている、わたしがいた
何処かを見つめていた、わたしがいる

浮かんでゆくクラムボン
あれはなんだ 不思議だったから、ついていった

いつか、わたしを閉じ込めて、
何処かへと連れさった、あのクラムボン

今、この場所から、
そのクラムボンを、大空に見ている

何処かを見つめながら、居なくなるわたしを、
かぷかぷわらう、クラムボンの中に見る

(死んだ?)

何度旅から帰っただろう
陽が差す 冷たい空気を抜けたあと
変わりようの無かったものたちが
なんも変わらんかったよ、って
教えながら、ほんの少し揺れていた

わたしは、
この部屋で何度も眠った