広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
妹の電話がどやどや連れてきた
「お父さんとお母さん車に乗せてあちこち走ってたら
何か近くまで来ちゃったの。
突然で悪いけどさ、今から行ってもいい?」
近いうちに孫の顔見せに行かなきゃとは思ってたけど
向こうから
どやどやどやってきた
父は膀胱悪くて腰に尿パックつけてる
顔色はいい
母は父を支えるのに忙しいけど顔色はいい
突発的な行動取るのが得意な妹は顔色はいい
コミヤミヤもこかずとんもミルク飲んだばっかりで顔色はいい
折角来てくれたんだから抱っこもしてもらわなきゃ
オジイチャン、腰にオシッコ袋つけたまま抱っこ
意外な重さによろけたけど踏ん張れた
コミヤミヤ、ちょっと傾いて
ふぇって顔崩れそうになったけど
まだ人見知り始まってないコミヤミヤ
態勢立て直すとほわっと笑顔
ぼく含めて3人育てた経験あるオバアチャン
昔取った杵柄でこかずとんを一発でしっかり横抱き
まだ人見知り始まってないこかずとん
肘のくぼみにすっぽり収まって
薄目開けてほわっと笑顔
介護の仕事長いオバチャン
高齢者も赤ちゃんも基本は同じと2人一緒にピシッと抱っこ
人見知り始まってない2人、今度は正面向いて
ピシッと笑顔キメる
「ああ、笑ってる笑ってる」
「あんなにちっちゃい手なのにしっかり服つかんでかわいいねえ」
さて、あり合わせだけどお茶にしますか
ちょっと疲れたコミヤミヤとこかずとん
下したマットでもぞもぞ
大人はスーパーで買ったモナカをもそもそ
小休止
沈黙の時が訪れた
もぞもぞ、もそもそ
音がする
ありゃりゃ
ここにいるみんな
体でつながってるな
コミヤミヤとこかずとんを真ん中に
性器やらへその緒やらその他いろいろ
体でつながったことのある者たちだ
性器は見えない
顔は見える
意外な重さによろけたりしたけど
体でつながってるから
沈黙してても途切れない
もぞもぞ、もそもそ
いい音がして
いい顔色だ
赤や
黄色
白や
ピンク
むらさきいろ
ドレスは
いろいろ
箪笥にある
わたしは百日草だった
ダンスホールの花だった
遠いのか
近いのか
遅いのか
早いのか
青いのか
深緑か
わたしにはわからない
最後に
踊りましょう
わたしと
***memo.
2023年7月24日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った48個めの詩です。
タイトル ”ラストダンスはわたしに”
好きな花 ”百日草”
#poetry #no poetry,no life
いっぽんの名前のない木が言語を拒否して立っていた
その果実は味覚による命名を拒否して生っているのだった
去らせることに関する愛の定義はJ-POPでは言語化が難しかった
一滴も残さずに絞り出しても名前のない木がある以上それは伝わらなかった
腑に落ちることが目的ではないからだ
混ざらないことが言葉のやくわりだった
一部は逃れ出て安全な場所に置かれる
自然な話し方という誇張で画像は編集され
肌色のマスクを通して
言葉を拒否した木の周りを役立つ言葉が回る
その木いがいのすべての形容詞が総動員される
命名できない果実があるということが他の全てを成り立たせているのだ
すべての朗読で言語が使用されるが
夕陽の丘に翼が舞い
ひかりの束の源は沈む太陽ではなく名前の無い実だ
進んで従うためにもその実が必要だ
拡声器を使ったり黙り込んだりしてみても味は分からない
分からない味をベタな声で語ることが敬意なのだ
名前のない果実のアルペジオを受け入れ、捨ててはならない
不可能の木の周りを決意が回る
家の中の型に囚われない石の壁がいい感じだ
言葉を短くすることで解決する時期もある
話題を出してもらったり男女の役割を変えたりするのも有効だ
いったん始まればたのしくなるのは木に名前がないからだ
そこではあるものをないと言うシュミレーショニズムを逆手に取ることも許されるだろう
岩盤を削る努力とは言い換えによる更新を続けることである
#poetry #rock musician