michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

いちまいの

 

峯澤典子

 
 

それを古いノートに挟んだのはだれ。ちいさな子の唇に似たはなびらがいちまい。

まだ朝はやい海岸を歩いたのはいつのこと。なにも話さずに ただ ゆびをあたためようとして。白湯のなかのさくらづけがひらきはじめるように スカートが さらさらさらさら潮風をはらんで。

あのとき 遠くから流れてきたはなびらの さくらいろに さきにふれたのはだれ。浅い夢のなかの足跡を辿ろうとしても 波打ち際の腕時計はとまったまま。裾だけが さらさらさらさら濡れつづけて。どんなことばも 海鳥の声にまぎれてしまうのだから。

ふたたび訪れることはない砂浜には あのとき拾えなかった無数の花の影が さらさらさらさらゆれて。そのささやきを消そうとする波の音しか ここにはもう届かない。

すべてを忘れてしまえば 波にさらわれて どこまでもゆけるのに。それでもあなたは おなじ夢のなかでまた 花のいろに ふれようとして。

いま 閉じられたページのなかで眠るのは わたしの ではなく あなたの愛した いちまいのはなびら。

 

 

 

assert・主張する 断言する

 

Michio Sato

 
 

This morning,

Good weather

Where did the typhoon go?

Neighborhood,
White flowers are blooming on the roadside

I thought this flower was a leek flower
But this morning I knew it was wrong

It was a wild rocambole

An uncle from a farmer in the neighborhood taught me

It seems that the neo-liberal era is over

 
The white flowers of the wild rocambole are swayed by the wind

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

20/05/2020

 

Tori Kudo

 
 

having been being caught up
There are ones that have been catching up with
me that hasn’t been working since
plums, cherry blossoms, wisteria
and fireflies at last
Even if they caught up
I would leave me just being overtaken
All of us will have been being rolled in the last picture scroll
Plums, magnolias, cherry blossoms, wisteria, jasmine,
then final fireflies
are chasing me with sickles
before my reaching the refuge city

 

 

 
#poetry #rock musician

新型日本春歌考

 

佐々木 眞

 
 

ひとつ出たホイの ヨサホイのホイ
一人静と やるときにゃ
義経亡きあと せにゃならぬ
ホイ

ふたつ出たホイの ヨサホイのホイ
不要不急で やるときにゃ
自粛しいしい せにゃならぬ
ホイ

みっつ出たホイの ヨサホイのホイ
民族主義者と やるときにゃ
日の丸掲げて せにゃならぬ
ホイ

よっつ出たホイの ヨサホイのホイ
シンゾー夫人と やるときにゃ
桜の森で せにゃならぬ
ホイ

いつつ出たホイの ヨサホイのホイ
コロナ娘と やるときにゃ
アベノマスクで せにゃならぬ
ホイ

むっつ出たホイの ヨサホイのホイ
ムカデ娘と やるときにゃ
ムヒを塗り塗り せにゃならぬ
ホイ

ななつ出たホイの ヨサホイのホイ
夏井先生と やるときにゃ
梅沢名人の許しを 得にゃならぬ
ホイ

やっつ出たホイの ヨサホイのホイ
ヤチマタ娘と やるときにゃ
8本おっ立て せにゃならん
ホイ

ここのつ出たホイの ヨサホイのホイ
吸血女と やるときにゃ
マスチゲン飲み呑み せにゃならぬ
ホイ

とうとう出たホイの ヨサホイのホイ
とうといおかたと やるときにゃ
テレワークしながら せにゃならん
ホイ、ホイ

 

 

 

brevity・簡潔

 

さとう三千魚

 
 

雨だった

女と
墓参にいった

モコは
家で待ってた

墓前で線香を焚いた

けむりは

低く
青く

たゆたった

霊園の裏山は濃い緑だった

中腹から
雲がかかり

裏山の

天辺は見えない

義母の
見開いた瞳を憶えている

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

断種断酒断首

 

工藤冬里

 
 

人の苗字がなくなって
自分の息子をボクと呼び
犬はみんなジョンだった
レモンは大きくなり過ぎて
人が登れるほどだった
空き瓶も山を成していて
ラベルはみんなおんなじで
タカラという字が見え隠れ
掘る必要もなく見出せた
土はテラテラみどり色
鶏を逆さに枝に吊り
鎌で自分の首を刎ね
断酒の前にダンスして
断首の後にもダンスした
断種断酒断首

 

 

 
#poetry #rock musician

その日の花を摘め

 

原田淳子

 
 

 

飛散させて

通りすがりのあなたに

種を宿せず
髪は肥料にもならず
春はわたしを啄み、
わたしを産み、
去ってゆきました

わたしの色は、夏のそれだと

秋は背を向けて、三億人の他人のよう

花弁をあつめて
心臓のふりをしてきました

Carpe diem

“その日の花を摘め”

あしたを信じてはならぬ.
きょうが終わるまで
わたしには永遠です

不滅の生には語るべきものがなく
原因と結果を永遠に繰り返す

 

飛散させて

わたしを摘むのは、雨ですか

濡れた初夏、
あなたは、
通りすがりの.