michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

ちょっと傾いた塔

 

辻 和人

 
 

四角い
白い
薄い
ひらひらひら重なり
ちょっと傾いた塔
1回の洗濯でできた
ガーゼハンカチ15枚だ
グリーンのソファーの上に畳み終えたトコ
コミヤミヤのやわやわお顔をやわやわ拭いたり
こかずとんのげっぷたらーりミルクたらーり掬い取ったり
はい1枚、はいもう1枚
他にもベビー服にシーツにバスタオル
気づくと日に4回以上洗濯機回してる
洗濯機のセンタッキー
キミはえらいなあ
ぼくも深夜までコミヤミヤとこかずとんあやしてて
寝不足で階段から転げ落ちちゃったくらいだけど
センタッキーの働きぶりには負ける
こないだ排水の部分を開けたら
ぬるっちょっ、こりゃ何だ
今まで2週間に一度掃除してたんだけど
かつての2週間分の埃がたった2日でぬるっちょっだ
ぼくとミヤミヤが交代で寝てる間にも
グォーングォーン
水回ってる
見えないトコ、知らないトキ
回る水ってのがあって
その結果としてここに
ちょっと傾いた塔が立ってるってわけ
つまりこいつは
センタッキーの不眠不休の化身
おくるみの中で手もにょもにょ口もにょもにょ
お昼寝に入ろうとするコミヤミヤとこかずとんを支えてる
おっ、ミヤミヤまた洗濯モノの山持ってきた
「乾燥しない」モードで動き出す
グォーングォーン
眠らない、休まない
ひらひらひら
四角い
白い
薄い

 

 

 

踏切番

 

廿楽順治

 
 

ひねもす
骨になって
じぶんをわたってくるものしかみていない

それが

今日はずっと
空をみあげてやすんでいた

直線の世界で
いまごろになって
骨は不意にかんがえているらしい

わたしです
とうったえる南洋の怪鳥は
この世にいったいどれほど飛んでいるか

空をみおわって
やっと

近づいてくるけだもののような
でんしゃをみた

ぼくは死んで直線をみているだけ

いったいこの仕事は
骨になっても
するようなことなんだろうかと

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その63

 

佐々木 眞

 
 

 

ぼく、ひとりでトウキュウいきましたお。
え、東急。いつ行ったの?
今日行きましたお。
そう、偉かったね。

お母さん、こんど、ユカリさんに会いたいですお。
そう、会おうね。

―コバヤシ散髪屋にて
おじさん、エモトアキラ、好き?
好きだよ。
おばさん、エモトアキラ好き?
好きだよ。
おねえさん、エモトアキラ好き?
好きですよ。
コウ君、エオトアキラ好き?
好きですお。

ミワさん、いなくなったね。
亡くなっちゃったね。

「千の風に乗って」、亡くなったときでしょう?
そうだね。

お父さん、お母さんは?
当てててごらん。
おばあちゃんチ。
ピンポーン。

お母さん、きょうサケご飯とピーマンの肉詰にしてね。
分かりましたあ。

今日はコウ君、ごはん何にしますか?
コーンスープですお。コーンスープにしてね。
分かりました。

お父さん、お母さんには、朝6時に電話しますお。
お、うれしいね。よく覚えていたね。5時台は早すぎるからね。
分かりましたあ!

お父さん、あさって、ビデオ録画してね。
分かりましたあ。

みんな、いなくなっちゃったねえ。
そうねえ、いなくなっちゃったねえ。
お母さん、そんなこと、いわないでください。
はい、分かりました。

お父さん、あしたビデオ録ってね。
分かりましたあ。
お父さん、今日ビデオ録ってね。
分かりましたあ。

お父さん、きのうビデオ録ってくれた?
撮ったよ。コウ君がおうちに帰ったら、一緒に見ようね。
分かりましたあ。

ぼく、映画村、好きですお。
そうなんだ。

いつ買いに行きますか?
来週のどこかで。
分かりました。

あした、図書館と西友へ行きます。
分かりました。

ままならない、って、なに?
いろいろ、うまくいかないことよ。
ままならない、ままならない、ままならない

ぼく、今日、休みますお。
なんで?
台風だから。
そうですか。いいですよ。

コウくん、今日は何の日?
きょうろうの日ですお。
きょうろうじゃなくて、けいろうの日でしょう。敬老の日はどういう日?
ええと、ボク、お父さんとお母さんを助けますお。
助けてくれるの?
そう。

イメージって、なに?
こんな感じ、っていうことよ。

お母さん、今日の夜ごはんは?
お彼岸だから、お赤飯とマーボナスよ。いいですか?
いいですおー、いいですおー、イイデスオー。

さまようって、なに?
ふらふらしてること、よ。

てごわい、ってなに?
つよいなあ、ってことよ。

お母さん、今晩のおかずは、なに?
今日はお赤飯と、クリームシチューと、肉詰めピーマンです。いいですか?
いいですお。

こらえる、って、なに?
我慢することだよ。
コウ君、こらえてるの?
いませんお。

お母さん、ドクダミ、おうちにある?
あるよ。
ぼく、ドクダミ好きですよ。
そう。お母さんもよ。

お母さん、ぼく、あした、セイユウいきますお。
いきましょうね。

ぼく、レンブツさんとフクモトリコ、両方好きだよ。
そう。

姿形って、なに?
そのひとの様子だよ。

お母さん、手術、麻酔でしょ?
そうね。

パーセントって、なに?
100のうち、どれくらいあるか、よ。

やあコウ君、元気ですか?
お母さんと代わって。
お父さんじゃだめですか?
お母さんと代わって。
はいはい、いま代わりますよ。

お父さん、大好きですお。
お父さんも、大好きだよ。コウ君、どうかしたの?
しませんよ、しませんよ。

コウ君、今日はどこへ行きますか?
えーとお、図書館行ってえ、セイユー行きますお。
分かりましたあ。

お父さん、近鉄線みた?
みたよ。健ちゃんは乗ったよ?

綾部にトモエちゃんいた?
いたよ。
ヨシカズ君は?
いたよ。

お母さん、ぼく、ウエハラミツキ好きになりましたお。
え、そうなの。ウエハラミツキって誰?
いまテレビに出てる人。
あのアナウンサー?
そうですお。

お母さん、ふきのとう舎の連絡帳に、「ウエハラミツキ好きになりました」と書いてね。
はい、はい。
書いてくださいね。
分かりましたあ。

ぼく、フクモトリカ、レンブツミサコ、イシハラサトミに続いて、ウエハラミツキ、好きですお。
そうなんだ。続いて、かあ。

コウ君、いつからウエハラさん、好きになったの?
今ですお。
そうなんだあ。

お母さん、この花、なんの花?
センニチコウよ。
どこにあったの?
玄関のとこよ。
ぼく、センニチコウ好きですよ。
そう。お母さんもよ。
お父さんも。

コウ君、暑くない?
ないですお。
暑かったら、一枚脱いだらいいよ。
大丈夫ですお。

―コバヤシ散髪屋にて
おばさあーん、ウエハラミツキ、好き?
好きだよお。
好きだってよ。

お母さん、待ってくれ、って、なに?
待ってください、よ。

お母さん、ミワさん、居なくなっちゃったよねえ。
居なくなってしまったねえ。

お母さん、お墓参り行きますお。
行きましょう。

 

 

 

助ける人は一人もおらず惨めな人さえも残っていないほどだった

 

工藤冬里

 
 

El rey del sur chocará los cuernos con él 南の王は彼と角を突き合わせる
割ってみたら紫だったが甘くなくてかなしい
Mis enseñanzas caerán como la lluvia 私の諭は雨のように降る
Vuelvan a mí, y yo volveré a ustedes 帰って来い。そうすれば
“Sci-Fi Party”
Una nación ha invadido mi país ある国が私の国を侵略した
繰り返されるべき回数を超えて演奏されるミニマルが恐ろしいのは戸が開いてミミズが出てしまうからだ
今日も残り物の猪弁当です
濃いので卵で綴じていますから親子他人というよりケモノ丼といった趣です
それにしても北山認知軒のワンタンは髄を出し切る野蛮なスープが絶品だった。
一番寒い日にはわざと薄着にしたくなる
日本人ほど神を畏れる民族はいないが日本人ほど崇拝の方式に無頓着な民族もいない
サマリヤの如く全ての生い茂った樹の下に取り分けられた木や石の柱を置いている
恐れはあるのですからどんな方法で行うのが良いと思いますかと尋ねるだけで良いのです
ターメリックに漬けたマッカランが光っている
中野重治評論集が関東炊きの色濃さのなかに昭和は黒く染まって酌のあてとなっていた
メジャーに行くと却って無名になり遠ざかったような気がするのは悪霊の無名性を帯びるからだ
1970年潮7月号割腹半年前の三島寺山対談は二人共間違っているが必然とジグザグの偶然がぶつかり合っていて面白い
寺山が悟性、悟性と世の霊の悪影響を使い倒すのは古めかしくて良い
二人共コンピュータを悟性とすり替えるなという意見では一致していて流石慧眼ではあると思った
ウマブドウ毒かと思てましたが薬らしく
売ってますね
寺山はずるいブランショもずるい
僕にとって人を裁かないための唯一の方法は有罪者として裁かれる側に身を置いて無罪のための微かな窓の位置は確認しつつもsuspendeadの期間を絶望を食べながら生きることです

 

 

 

#poetry #rock musician