夏の日に ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 38     nobuyo 様へ

さとう三千魚

 
 

遠い日

過ぎて
きた

夏の
遠い日を

過ぎて

ディゴの
花の

下に
逢瀬があった

花は
揺れてた

風に揺れていた

 

 

***memo.

2023年5月27日(土)、しずおか一箱古本市の会場「水曜文庫」での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十三回で作った38個めの詩です。

タイトル ”夏の日に”
好きな花 ”ディゴ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

狩 *

 

さとう三千魚

 
 

今朝
風が吹いてる

枇杷の
黄色の実の

初夏の日射しを受けている

モコは
玄関のタイルの上で眠っている

女は
御殿場の

アウトレットで買った茶色の
チェックの

半袖シャツを着て鏡の前に立っていた

ながく
立っていた

それから
クルマで出かけていった

モコを抱いて
女を

見送った

しゃがんで
庭の隅の

カサブランカのまっすぐに佇つ緑の花芽を見ていた

青く
膨らんでいた

紫陽花の白い小さな花たちもひらいていた

女と
モコと

いつか
野の花を狩りにいこう

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ぶらんこ *

 

さとう三千魚

 
 

夜が
あけて

空には
青空

ひろがっている

モコ
吠えている

肉が

欲しいのか
モコモコ

女が
呼んでいる

モコの走る音が聴こえる
走ってる

ぶらんこが揺れる

遠い

誰も
いない

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

食欲もなくなるコラール *

 

さとう三千魚

 
 

夕方の鐘が鳴った

西の光が
明るい

障子には
白木蓮の葉を青くひろげて

葉の影が
揺れている

朝には
雨はあがり

女は灰色の
車で出掛けていった

モコと
ふたり

見送った

雲が流れていた
サラダを馬のように食べた

それから
一日

冬の毛布を洗った
ベランダの物干しに掛けた

ディキンスンの詩をコピーした
たくさんコピーした

どこにも出掛けなかった
高橋悠治のピアノを聴いていた

風が吹いていた
雲が流れていた

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

脚 *

 

さとう三千魚

 
 

浜辺で

三菱トラック
CANTERの

荷台に
木造の家屋を乗せた

青年に
会った

自作したのだという

入口が
高いところに

四角く
あった

ボルダリングのホールドが

壁に
あり

それを
登り

入るのだという

部屋は四角い空洞で
高い入口から階段が降りている

空洞には大きな窓がある

住むには
足りるだろう

空洞があり
窓がある
空がある

海がある
山もある

水があれば
水浴びするだろう

脚があれば散歩ができる
細く伸びた脚で歩いていく

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”気難しいしゃれ者の三つのお上品なワルツ” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

鼻メガネ *

 

さとう三千魚

 
 

土曜日は
午後に

詩人の集まる会に
電車で

行った

自分を
詩人と言えないが

そう名乗る人たちがいる

いつか
覚悟ができるだろう

自分の愚劣を知っている
愚劣でないところもある

日曜日
重たい雲の下

坂口安吾風の鼻眼鏡をかけていた

女は

ブーは
似合わないからよしなよ

という
わたしのことをブーという

月曜日


晴天

姉に電話した
姉はこれから山に登るのよといった

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”気難しいしゃれ者の三つのお上品なワルツ” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

容姿 *

 

さとう三千魚

 
 

もう
一昨日か

京成立石の
墓に

芍薬の
花を立てた

緋色の
花を立てた

線香の
束を燃やした

墓石にビールをかけた

青空に
雲は流れていた

きみはいつか
言ったね

“ひかりだね”

そう

電話で
言ったね

そのことを
“無名な平凡”と言ったことが

ぼくには
あった

いつか
そこへ行く

芍薬は不思議な花だね
一本の真っ直ぐな茎の先に大きな花が空を見上げてる

そこへ行く

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”気難しいしゃれ者の三つのお上品なワルツ” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

たくましい幻想曲 *

 

さとう三千魚

 
 

今朝
ふたりへ

葉書を書いた

詩人だった
ポストに入れた

それから郵便局で
亡くなった詩人のエッセイ集の費用を振り込んだ

その本の帯に
ぼくらは人生というやつに慣れていなかった **

そう
刷られてた

ぼくらという時代があったのだ
ぼくらという時代があったのだ

たくましい幻想はもうAIに任せたらどうか

クルマで
ディランの激しい雨を聴いてた

帰って花に水をやろう

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”右や左でみたこと(メガネなしでも)” より

** 清水哲男のエッセイ集「蒐集週々集」帯のことば(部分)

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

夜空 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 37     ryou 様へ

さとう三千魚

 
 

みあげて
しまう

いつも

見上げて
しまう

月や
木星や

金星が
いる

オリオンもいる

紫の
クレマチスが

夜空にいる
きみもいる

咲いている
夜空にいる

 

 

***memo.

2023年4月2日(日)、静岡駅北口地下広場で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十一回で作った37個めの詩です。

高橋悠治さんのインベンションとシンフォニアのピアノを聴きながら地上の木立と空を見ていました。

タイトル ”夜空”
好きな花 ”クレマチス、紫の”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

まっさら ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 36     noriko 様へ

さとう三千魚

 
 

しらなかった

赤や
青や

紫でなく

白い
アネモネが好き

そうきみは
言った

色を捨て
野に佇つ

花は咲く

きみの
白い花は咲く

 

 

***memo.

2023年4月2日(日)、静岡駅北口地下広場で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十一回で作った36個めの詩です。

高橋悠治さんのインベンションとシンフォニアのピアノを聴きながら地上の木立と空を見ていました。

タイトル ”まっさら”
好きな花 ”アネモネ、白い”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life