あきれて物も言えない 32

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 

 

花粉がきた

 

朝、起きてみたら、
来ていた。

泉のように水が流れでて止まらない。

くしゃみが、
立て続けにでた。

 

この2年は、
来なかった。

コロナ禍で家の外ではマスクをしていたからなのだろう。

ティッシュを、
箱ごと抱きしめて鼻のまわりを赤くするあの日々がはじまったのか?

昼前に近所の病院に行ってみた。
受け付けは昼で終了です午後3時に来てくださいと女の事務員は言った。

それで、近くの農家の無人販売所で蜜柑とデカポンを買ってそれからホームセンターに寄り小鳥の餌の剝き実を買った。

本の部屋の窓辺に蜜柑と剥き実を置き小鳥が来るのを待った。

雀が、
来た。

つがいで来た。

いつもこのつがいが来る。

元気な方が餌を啄ばみおとなしい方がおずおずと真似る。

今度はヒヨドリのつがいが来た。
ヒヨドリは雀を追い払い餌を食べ尽くすのだ。

そんな景色を見ていると時間になっていた。

病院に向かう。
病院の受付では風邪気味なのかコロナなのか花粉なのか、問われた。

コロナの可能性がある場合は外のプレハブの診察室で診察するようだ。
花粉か風邪かコロナかわからないから来てみたのだが患者がコロナかどうか問われる。可笑しい。

熱もないし、たぶん、花粉だと思います。

受け付けの女性は安心したのか一般の診察用待合室に通してくれた。

そこには老人たちがいた。
車椅子に乗せられて俯いている老人もいる。
歳を取ると自然とみんな持病を持っているのだ。
持病を持っているから年寄りはコロナで死んで行くのだ。

診察室に呼ばれた。
男性の医師だった。
マスクを外すように言われた。
鼻の奥と喉をペンライトを点けて覗かれた。
鼻の奥の粘膜が腫れているそうだ。

花粉だろうという。
わたしも同意する。

やっと来てくれた。
コロナやデルタやオミクロンを通さないようにしてきたマスクのはずだ。
そのマスクを通して、
花粉はわたしのところにやって来てくれた。

懐かしいバッドボーイにあったように思えた。

やっと来たのか、きみは。
すこしながい2年間だったよ。

鼻水がだらだらと流れ眼玉しょぼしょぼとしてクシャミ連発のあの憂鬱な花粉がこれほどに懐かしいと感じられるのは、
コロナ様のお陰なのだ。

コロナでこの日本では416万1,730人の人が感染し2万989人の人たちが亡くなったのだ。 *
世界では4億1,550万8,449人の人たちが感染し583万8,049人もの人たちが亡くなったのだ。 *

 

自宅に帰って駐車場で空を見上げた。
西の山のこちら側に雲が盛り上がっていた。

夏の入道雲のような大きさだが雲は灰色に盛り上がり冬の雲だった。
この巨大な雲は冷たい雪の結晶で出来ているのだろう。
灰色の雲の縁から太陽の光が斜めに射して来ていた。

その光の中にわたしたちがいる。
老人たちがいる。
車椅子に乗せられて無言で俯いている者たちがいる。
雀のつがいがいる。
ヒヨドリのつがいがいる。

それはこのひろい宇宙のなかのひとつのいのちということなのだろう。
いのちのひとつひとつが個々に光を灯しているのだろう。

 

この世界には呆れてものも言えないことがあることをわたしたちは知ってる。
呆れてものも言えないですが胸のなかに沈んでいる思いもあり言わないわけにはいかないことも確かにあるのだと思えてきました。

 

作画解説 さとう三千魚

 

* 朝日新聞 2022年2月18日 一面 新型コロナ感染者数詳細 記事より引用

 

 

 

ぼくはちょっと ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 31     michiuo へ

さとう三千魚

 
 

静岡駅の
北口の

地下広場には
水が

流れていて
小川のよう

水音がしている
水の流れの横を

人びとが
エスカレーターで

昇っていく

地上の
木立が

見える

ぼくはちょっと *
群青の空を

見上げてる

木の葉
ぜんぶ落ちている

 

 

***memo.

2023年1月8日(日)、静岡駅北口地下広場で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」で作った31個めの詩です。
細野晴臣さんの”ぼくはちょっと”という曲をリピートしてJBLの小さなスピーカーで鳴らしていました。

自分のために書きました。

タイトル ”ぼくはちょっと”  * 細野晴臣さんの歌曲のタイトルからの引用です
好きな花 ”枯葉”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

手探りのフーガ *

 

さとう三千魚

 
 

昨日は

女を駅までクルマで送った

女は
エアロビに行った

エアロビの後に
歯医者に行くと言ってた

帰って
昼前に

風呂を洗った
お湯を満たした

眼の下までお湯に浸かった

午後
背中と首に

針を刺してもらった

夕方

貨物列車が眼の前を過ぎていった
電車で街にでた

火鍋屋で
辛い肉を食べた

男ふたりと
この男たちと

辛い肉を食べた
辛い酒を飲んだ

また明日
また明日

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”右や左でみたこと(メガネなしでも)” より 

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

偽善者のコラール *

 

さとう三千魚

 
 

昼には
自転車で

河口まで走って行った

海には
風が吹いていた

女は
午後に

エアロビに出掛けていった

GDPの
2%を

軍事費に充てなければならないのか
防衛費に充てなければならないのか

アンケートによると
国民の60%が賛成していると昼のTVニュースはいう

自転車で
河口まで走って行った

女は
午後に

エアロビに出掛けていった

海には
風が吹いていた

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”右や左でみたこと(メガネなしでも)” より 

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

象の風景 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 30     chihiro 様へ

さとう三千魚

 
 

象は

歩いた
だろう

堺から
長崎の

西坂の丘まで
歩いただろう

そこには
二十六聖人が

並んで
浮かんでいる

象は

酔って
照れ隠しに

笑っただろう
白い歯で笑った

帰ろう

百合の花の薫る
西坂に帰ろう

海の見える

長崎の
西坂に帰ろう

 

 

***memo.
2022年12月7日(火)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った30個めの詩です。
お名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、お送りしました。

タイトル ”象の風景”
好きな花 ”カサブランカ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

しらす ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 29     tokio 様へ

さとう三千魚

 
 

もう
昨日か

冬の
曇った

港町を

ふたり
歩いた

冬桜が
咲いていた

家並みの
細い道の

向こうの

海が
光っていた

しらす舟は
網を曳いていた

舟は

しらすを
掬う

透明の
無い

ものたちを掬う

 

 

***memo.

2022年11月28日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った29個めの詩です。

お名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し郵送、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”しらす”
好きな花 ”冬桜”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

朝に ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 28     michiuo 様へ

さとう三千魚

 
 

夜中
目覚めた

女と
モコを

起こさないよう
階段を降りる

湯を沸かし
珈琲を

淹れる

紙を
ひらいて

平らに
ひらいて

花を
待つ

待っている

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った28個めの詩です。

自分のために詩を書きました。

タイトル ”朝に”
花の名前 ”無花果(イチジク)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

未来 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 27     mayumi 様へ

さとう三千魚

 
 

路傍に
いた

ピンクの花

咲いて
いた

会えると
うれしい

未だ
ないもの

わたしの先にあるもの
ピンクの白粉花

会えると
うれしい

うれしい

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った27個めの詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”未来”
花の名前 ”オシロイバナ(ピンク)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

窓 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 26     yuki 様へ

さとう三千魚

 
 

きみは
かならず

咲いていた

紅い花
咲いてくれた

そこに
いた

傍に
いた

窓を開けて

きみを
懐いていた

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った26個めの詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”窓”
花の名前 ”彼岸花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

小さな喜び ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 25     yukiko 様へ

さとう三千魚

 
 

朝に

目覚めて
明るい

庭を見ている
生垣に

野ばら
咲いている

うすい
黄色の

野ばら
咲いている

それでいい
それだけで

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った25個めの詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”小さな喜び”
花の名前 ”バラ(うすい黄色)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life