Strange Fruit

 

工藤冬里

 
 

いっぽんの名前のない木が言語を拒否して立っていた
その果実は味覚による命名を拒否して生っているのだった

去らせることに関する愛の定義はJ-POPでは言語化が難しかった
一滴も残さずに絞り出しても名前のない木がある以上それは伝わらなかった

腑に落ちることが目的ではないからだ
混ざらないことが言葉のやくわりだった

一部は逃れ出て安全な場所に置かれる
自然な話し方という誇張で画像は編集され
肌色のマスクを通して
言葉を拒否した木の周りを役立つ言葉が回る
その木いがいのすべての形容詞が総動員される
命名できない果実があるということが他の全てを成り立たせているのだ

すべての朗読で言語が使用されるが
夕陽の丘に翼が舞い
ひかりの束の源は沈む太陽ではなく名前の無い実だ
進んで従うためにもその実が必要だ

拡声器を使ったり黙り込んだりしてみても味は分からない
分からない味をベタな声で語ることが敬意なのだ
名前のない果実のアルペジオを受け入れ、捨ててはならない

不可能の木の周りを決意が回る
家の中の型に囚われない石の壁がいい感じだ
言葉を短くすることで解決する時期もある
話題を出してもらったり男女の役割を変えたりするのも有効だ
いったん始まればたのしくなるのは木に名前がないからだ
そこではあるものをないと言うシュミレーショニズムを逆手に取ることも許されるだろう

岩盤を削る努力とは言い換えによる更新を続けることである

 

 

 

#poetry #rock musician

You Light Up My Life…?(Goes Rock,愛のよろこびGoes To The Future, Fried Rice…!)

 

今井義行 2023©Cloudberry corporation

 
 

世界のすべてのをんなおとこは、“受精”(ジュセイ)を、めざして
在る、のです、か……?
性徴が悩ましく途絶えそうになり、わめいてしまった夜も、あります。
……どうしようもなく、抱かれてしまうことだけが、幸せでした。
僕には、おさない頃から、子どもを
つくる…能力がありません。
うあ、目の前に、嘗て一緒に暮らしたをとこである…建志(タケシ)サンが、居ます
「不死鳥なんて、見過ごそう。」と彼は今日、呟く。
アア…僕たちは…ずいぶん、歳をとってきました。
お互い、毛髪を朱く染めた。
一緒にながく歩いてきた。
「ドラムが巧くって、SEKAI NO OWARIって、良いバンドデスネ…!」と僕は言う。「義行(ヨシユキ)、お前の声、まだ声変わり前みたいな揺れ方ダネ。色めき立つような口づけを、?」
「幾つもの、聖夜のもとに…僕はふたたび身籠りましたよ。有り難う…!」
すると、建志(タケシ)サンは
ベッドでキラキラ身を震わせながら言うのです。「世界のすべてのをんなおとこは、“受精”(ジュセイ)を、めざして
在る、のです、か……?」
……………………
精子、どしゃぶり。
幾つもの性徴、幾つもの夜を辿っているとはいえ…僕たちは、衰えながら新鮮な、全裸です……。
愛し過ぎて苦しいと思うまもなく僕のぱんぱんに張り詰めた乳房の先から温かい母乳が零れ出す。You Light Up My Life…?(Goes Rock,愛のよろこびGoes To The Future, Fried Rice…!)
「建志(タケシ)サン、僕は柔らかいロックに行くし、未来にも行きます。」
「義行(ヨシユキ)、おなかが空いたからライスに行こう!ガーリックバターたっぷりのFried Rice…!」Fried Rice…!!あとで、お尻

の穴に塗りたいですね。

…………
そこからも時間は経ちました。お互いを愛おしみあいながら手を繋いで向かい合うとき…僕たちは、まだ綺麗だ。幾つもの性徴を過ぎて皮膚はたるんでいるかもしれないが、それでも、
世界のすべてのをんなおとこは、“受精”(ジュセイ)を、めざして
在る、のです、か……?

 
 

2023/06/13 アパートにて。

 

 

 

スガイ燃料店

 

廿楽順治

 
 

燃料店のむすめはあかるかった
いつもわずかだが体が燃えているのだ

ばくはつのひとつ手前
(なのだろうか)

燃料
ということばには
わからない思想がないようにみえる

中学生のむすめの頬はいつも赤かった
あかるく
ふっとばすようなものがみのっていた

今日ふいにおもいだす
燃料のこと
燃料を売って暮らしていた家のむすめのこと

ばくはつのひとつ手前
(そこでしかみんなは暮らせない)

わからない思想はやがて
こっぱみじんになるのだろうか

むすめはもう
燃料ではないのだろうか

 

 

 

女たらし

  ―女たらしって、なに?
    だらしないひとのことよ。(「ある家族の会話」)

 

佐々木 眞

 
 

わいらあ どうせ だらしないひと
おぬしも さいごは だらしないひと

女たらしが おるように
男たらしも わんさと おるがな

ときにそこいく お客さん 
よってらっしゃい みてらっしゃい

この世で いちばんめか 2番目に大事なこと
ただで 教えて しんぜよう

あんさんに どうしようもなく 好きな人が 出来
その人と やりたいと 思ったら

すかさず それを やることだ
抜く手も みせずに やることだ

パッパラパーと 脱ぎ捨てて
ペロペロペーと 舐め回し

グチュグチュグチューと 口吸うて
ズビズビズバーっと 突き入れて

アレアレアレーと 叫んだら
グルグルグルンと 捏ねまわし

一念発起 無念無想
一心不乱 一気通貫

四の 五の 言わず
二人揃って 成仏するんだ

よってらっしゃい みてらっしゃい
耳をほじって お聞きなさい

お二人さんも よござんすか
あたしは 二度は 申しません

好きで やりたく なったなら
ここを 先途と やることだ

これぞ この世の 置き土産
死に物狂いで やりきる ことよ

 

 

 

満天

 

原田淳子

 
 

 

かなかなの鳴く宵には
いのちのかけらが降ってくる

月のない夜に
羽根を埋める

葉の指さすあの西の明星をごらん

あれは
死んだ者たちがもたらしてくれる未来
いのちあるぼくたちにおくってくれる暁の光

『詩の国に住むことにきめた』
夢のつづきを描くのだって、
微笑んだ彼はそこにいるのだろう

きみもともにゆこう 
新しい朝が生まれるところ

ぼくたちはそこで花のようにとべるだろう

 

 

 

 

道 ケージ

 
 

草が昨日、獣の背のように揺れ
撫でてみようとすると
風は揺れ、揺れもどり 
緑の皮膚になる

翡翠竜の背中が
ああだった
羊歯の汁をしきりに啜っていた

水面へと続く草陰に何匹も潜む
草波の揺れ具合が違うからわかる
数えきれない程の数だ

あまりに遠いと近くに感じる
身近というのではない親しみ
抱え込まず
風が通る
風が揺らす

曼珠沙華の咲いた辺りに
今日は忘れ草が
一斉に赤橙している

まさかそんなことはあるまい
全ての彼岸は同一である
全ての過去は現在である

 

 

 

ベランダ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 47     yu 様へ

さとう三千魚

 
 

地上だろう

ベランダこそ
地上だろう

乾いている

なにも
置かない

洗濯物が風に揺れていた
いつまでも

風は
吹いた

そのひとは佇つだろう
ベランダに佇つだろう

佇む

あじさいだった
青い

 

 

***memo.

2023年7月17日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った47個めの詩です。

タイトル ”ベランダ”
好きな花 ”あじさい(青)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

石垣の隙間から覗く
Peek through the gaps in the stone wall

 

工藤冬里

 
 

7.12
柿の種の形をした鳩尾に血液があつまり
浮き上がる暗いニュースは腹の上方を漂う

 

 

7.14
夏の夾竹桃の黄色い病葉はとても綺麗である。こういうものでも良いのだと思わせる刀のような力がある。

 
 

石垣の隙間から覗く
Peek through the gaps in the stone wall

息ができない
詩より酸素がない
だからdisりも聞こえない
酸素は作れない
原因と結果を共に箱に詰めて
石垣の割れ目に滑り込ませる
割れ目にはヘビがいるだろう
可愛い眼をした、、
ヘビは友達だ
唯一の、、
字が綺麗ね
そのまま本になりそう

いろいろ考えた
僕もいろいろ考えた
裏のことや表のこと
でもどうやら
問題はアダムの縫い目にあるらしい
蟻の門を渡る舟人かぢをたえ
あと一歩で完成という時に
ラフなクロスステッチで
過程のみを見せる表現方法に窓を遺し
rear gardenのwaste landに風を通した
未踏のハリネズミの裏庭に
日本と似た植生だった
地球だからね

今日も海に行った
水平線は曲がっていく
ここも南極なのだ
舵をなくした舟が
蛇をなくした割れ目から
外を見ている
ゆくへも知らぬO2の道かな

 

7.16
今年のかなかなの歌い始めがFで例年より4度ばかり低い
疲れて生まれてきたのか
生まれてすぐに疲れたのか
全てにおいて紙切れとなった世界の価値のなさをこくんこくんと噛み締めてコロナの喉に無理に水を通そうとする大見得なのか
芸能に絶望して選び取ったジェンダーの最小公倍数なのか

 

 

 

#poetry #rock musician

座った、座った

 

辻 和人

 
 

座った、座った
―何が座った?
首が座った
―首が座るなんてこと、あるのかな?
あるよ、見てご覧よ
まずコミヤミヤの両肩の下に手を入れます
首に支えはなし
きょととんきょとん目を回転させるコミヤミヤ
じゃあ、ゆっくり上体持ち上げますよ
肩前に出る、背中マットから離れる
きょとんの顔が持ち上がって
―ぐにゃりってなったりしないの?
見てて、ほぅら
首が胴体の動きに従って
にゃぐり
ついてきてる
コミヤミヤの首、まだ細い
まだまだ細い
しなりそうに、しなりそうに
ここで懸命に重力に逆らって
にゃぐりっ、にゃぐりっ
胴体から離れるなっ
逆らって逆らって
もうひと息
上体まっすぐ
ちょこん
―わぁおーっ、座ったぁ
でしょでしょ? 
首って座るんです
足はなくても座るんです
コミヤミヤのまだ細いまだまだ細い首にとって
座るって楽な姿勢じゃないけど
寝てばかりは嫌
体の上に座ってちょこんしたい
ちょこんと座れば
白い衣服に包まれた自分のアンヨが
きょとんとした目に飛び込んでくる
―感動、これがアンヨかってなるね?
アンヨだけじゃないよ
首がちょこんと胴体に座れば
おおっ、庭の柚子の木が飛び込んでくる
おおっ、さっき口拭いてもらったガーゼハンカチが飛び込んでくる
今まで見えなかったものが
にゃぐりっ、飛び込んでくるんだ
首が座ると目が忙しくなるんだよね
上にも下にも斜めにも見たいものいっぱいあるよ

―かずとんパパ、首が座るって素敵だね
ああ、首
いっつも首だった
細い首
抱っこするたび
ぐにゃり
柔らかく曲がって、それっきり、なんて
ほんとに怖くてね
お風呂の時もミルクの時も
まず首押さえた
押さえると
柔らかい重さが腕全体に零れた
コミヤミヤの首とぼくの腕が一体化する
すると不安が安心に変わって
柔らかい重さがぽっと周りの空気に広がるんだ
―首押さえたら安心がぽっと、ね
そう、ちっちゃな安心
首が座ってこれから味わえなくなっていくのは
ちと寂しいかな

 

 

 

肇事者

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

餘燼,憐憫吧,
墜落的星辰半醒。
在世界的深遂中
純潔的塵埃獲得了遺忘。

燃燒的肇事者。
星辰,碎片叫喊着
策蘭說:"落雪,
彷彿你仍在沉睡"

蜜蜂,終曲裡一個純綷的音符,
等待著更深的領會;
而骨灰漸漸平靜,繼續旅程。

請傾聽這肺腑語音;
花朵已經僵硬,
北京致命!
紅星二鍋頭已經冰鎮,警察美好!
人們應該與我一起讚頌暴政;
在被捕時短暫的時間一起叫喊。

 
2023年7月4日灣仔警署 7月12日西貢

 

 
 

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