温かな未来

 

工藤冬里

 
 

気の滅入る情報は最小限​に​
落ちた胡瓜を可能性として料理する
蝉の腹から伝わっていく梅雨明け

<接触しようとしている>

遠い近所のパン
集落は一族の陰謀なので
ヴォネガットが政体を同姓クラブに変えても
変わりようのない未来に変わる

 

 

 

#poetry #rock musician

死刑

 

工藤冬里

 
 

子供の頃から知ってるが
天才だった
でも今は商売の邪魔になるから消す

奴が消えることで
すべてうまくいく
everything’s gonna be alright
生き返られちゃ困る

腕白でもいい
たくましく育ってほしい
でも生き返られちゃ困る

生き返られちゃ困る
あったかーいお部屋で
つめたーいカルピス

ぶん殴れ
唾をかけろ
違法裁判でもいい
生き返られちゃ困る

 

 

 

#poetry #rock musician

8月4日広島相生橋「すっからかん節」のための経哲草稿

 

工藤冬里

 
 


すっからかん
すっからかん
ジャックラカンも すっからかん
五百羅漢も すっからかん
三月四月 すっからかん
五月六月 すっからかん
七月八月 すっからかん
数年後でも すっからかん
吸うからいけん すっからかん
吸わなきゃいいのか すっからかん
ソーシャル・ディスタン スッカラカン
(振付:肘タッチ)

橋の欄干 手を腰に
はるか向こうを 眺むれば
十七八の 姉さんが
アニス羅漢果はバンド名
姉さん姉さん どこ行くの
スリランカカレー 食らわんか
私は九州 鹿児島の
西郷すっからかんの 娘です
薩摩焼なら 沈壽官
鞍馬天狗の アラカンが
かんらかんらと 観覧車

ワイン安けりゃ あっけらかん
楽観的な 約款も
TPPで すっからかん
あきらかなのは すっからかん
シーラカンスも すっからかん
乱獲されて すっからかん

アキラも明菜も すっからかん
ランタンパレードも すっからかん
キップ・ハンラハンも すっからかん
バート・ランカスターも すっからかん
ピンカラトリオも すっからかん
からゆきさんも すっからかん
スカラーシップ返せず すっからかん
夜間高校 すっからかん

ずらかんないと すっからかん
使えぬ薬缶と 水道管
餡から食べて 実を枯らす

すっからかん
すっからかん
ソーシャル・ディスタン スッカラカン
etc

 

 

 

#poetry #rock musician

sunday morning

 

工藤冬里

 
 

セミの波状の侵入が
卓上のディスプレイに混ざる
邪魔するのに飽いて人語を話す猫は
人生の削りかすを睡眠剤に変える
あゝ皿ヶ嶺の進化論の障害
燐寸箱のデザインの家が建ち並び
龍は天麩羅にされている
地球が人間にフィットしたのであって
人間が地球にフィットしたからではないので
十日の旅をする水に
胸の筋肉で話しかけなければならない
柿の木の刺蛾と蟷螂の戦いをじっくり考えた洗濯物は軒下で首を吊る
刺蛾の食う実のない言の葉の
雨のような音
と雨

 

 

 

#poetry #rock musician

マルコス

 

工藤冬里

 
 

香港生まれぽい名前を付けられて
職業はカウンシルの奴隷
巴旦杏ムーンの夜中に
ワイン三杯
パンとマトンで
爆報観て寝るだけのところを
駆り出され
オリーブ園で耳を切られる
ダウヴァの白亜の断崖が脳裏を過ぎり
勇気は下位の層に対して示されると知る
なんでマングースがコブラと闘わなきゃならないんだ
それでもマルコスはいまは犬が吠えないことを知る
人は区別されるということを知る
血に慣れろマルコス
緊張も人生の一部だ
立て、立つんだ
耳を切られたマルコスの
明日はどっちだ

 

 

 

#poetry #rock musician

subluxation

 

工藤冬里

 
 

TLネットワーク見てるとなんかサブカルのラスク齧ってる感に吐き気がしていたのがここにきて急に人が粒立って艶やかに
ネカフェのトイレで流れる音楽さえ
ターゲットなのだろう、オルタナ主体の有線がgreat song after great song
いまは削ぎ落とされて良くなってるんじゃないかとさえ思う
ヨーヨーマが明日モリコーネ追悼のオンライン・コンサートを行うと言ってる
モリコーネはヨーヨーマに、音楽とは空間、時間、エナジーの三つだ、と語ったらしい
モリコーネがそれを語った瞬間は、空間と時間とエナジーで充ちていたことだろう
しかしいまはその三つを運べない運送屋を見詰めなければならない
それを浮き彫りにするのが釣り堀屋の仕事であろう
後期ルネサンス以来のチェンバーが終わったのだから
風通しの良すぎる洞門が建築様式とならなければならない
そのための寒暖対応ではペスト医者の鳥頭の脱着の操作性がファッションの決め手となり
マツエク以外のコスメは絶え、頭部は鬼太郎の父親に変異するだろう
だから音楽を変えずに演奏空間をデザインするのではなく
ディスタンスを前提して音楽の方を変えるのが王道(バ)ロックだ
それは順番でいけばバロック前夜のマニエリスム或いは倍音としてのキュビズム前夜に対応するものになるだろう
顔の美がヴァーチャルに加速するとき忌避される筈の血が逆にさらに流れるだろう
左右から刺してくるシニフィアンの複製が無く
垂直なトレ・ユネールとしての
あまつかぜ
場の外では犬が泣き叫んだり歯軋りしたりしているだろう
音楽は言葉のsubluxationだ
ドグマ爺さんたち
土グマたち
浣グマに食べさせる野良の白
クマの子を散らすように
アースが産んだドグマ大使
愛は六千年限定のサブスクだ

 

 

 

#poetry #rock musician

解体屋ゲン

 

工藤冬里

 
 

彼の仕事は建設ではなく解体であった
それがその時期の一番建設的な仕事だった
パラダイスとは飲み放題で天女が舞い踊るような所ではない
それは弘岡さんとこの庭のように人がちまちま作り上げるもので
彼女が庭師になるための障害を壊すのが彼の仕事だった
庭師は長生きすると言われていたけれど
それは先取りの三角であって
先走って置かれた原理でしかない
彼の仕事はシバの如く破壊であった
パラダイスとは受け身で放り込まれるようなところではない
地上とはほんらい、尾道でハライソに寄ったら原マスミに出くわしましたというような
受け身で放下されるところではないのだ
隣の刑柱の男に約束したから
彼が来るまでに生きている者だけで急いで整地して
オリーブでも植えておかなければならない
三色スミレは大将の趣味じゃない
チューリップなら黒一色にするとか
それは彼女の趣味に任せるけれども
兎に角戻って来る者たちのために
いまの趣味のままで間に合わせる
だから身受けのハッピーエンドはダサくなりそうだ
それでいいじゃないか
社会と芸術の解体は彼以外には出来ない仕事だったが
その後は庭師たちの引き摺っている解体前の趣味で造園されるのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

アンディーの気苦労3

 

工藤冬里

 
 

誰もどこにも行けなくなっているうえに三日間SNSもzoomも使えなくなった
国連に関する暴露本なども出されて鉄と粘土は最後まで混じり合わぬ演劇を続けた
しかしアンディーの家にはフレッツ光があったので行政職員や町内会の人々の間ではちょっとしたスターになり菓子折りなど差し入れがあった

最後にすべての犬猫やすべての家畜の産んだ最初の雄やすべての長男が死んだ
真夜中の官邸で皇居で網走でネカフェでホテルカリフォルニアで大きな叫びが上がった
アンディーも一人っ子だったので菓子折りを抱えて死んだ

エンドロールにイアンの次の歌が流れた

This is a crisis I knew had to come
Destroying the balance I’d kept
Doubting, unsettling and turning around
Wondering what will come next
Is this the role that you wanted to live?
I was foolish to ask for so much
Without the protection and infancy’s guard
It all falls apart at first touch

Watching the reel as it comes to a close
Brutally taking its time
People who change for no reason at all
It’s happening all of the time
Can I go on with this train of events?
Disturbing and purging my mind
Back out of my duties, when all’s said and done
I know that I’ll lose every time

Moving along in our God given ways
Safety is sat by the fire
Sanctuary from these feverish smiles
Left with a mark on the door
Is this the gift that I wanted to give?
Forgive and forget’s what they teach
Or pass through the deserts and wastelands once more
And watch as they drown by the beach

This is the crisis I knew had to come
Destroying the balance I’d kept
Turning around to the next set of lives
Wondering what will come next

 

 

 

#poetry #rock musician

BBQ

 

工藤冬里

 
 

メタフィジカルな線が抽象なのではない
ピンクの釦でブリキ缶は留められている
線の世俗は具象も郡上も問わない
美しい地を殺そうと米露は仲良くジュークボックスに入る
その時から白の奥に緑のストレスや不安が現れ始める
白の奥の緑が抽象だ
子供はハシビロコウなので
食器洗いはハシビロコウだ
花は三十五万種に増えた
愛してるかと確認されることのないようにしなさい
信頼を勝ち得るのは重い肉なので
顔の造りが違う 彫られた青蕨かスペード♠️のようだ
三十五万種に増えた花を楽しむ能力
一日一つ調べると九百五十八年かかるので
華やかなユリの服を着て
十万種の味で装う
全て反射すると白になるので
反射的に動くことが幸せにつながる 例えば
使えば性能が上がるあり得ない車の音のするガレージで
家主に住んで欲しいと思ってもらえるまで待つ
待つ間の喜びは可能か
可能だ 揺すって押し入れてくれる
ガスを止められた時バーベキューしてて分かったのは
欲しいものではなく必要なものが与えられるということだ
どの日も悪いが悩まない
信じてなくても欠落を反射する空の色
犬猫がいればオーロラも見える
待つ間の喜びによって喜びなさい

 

 

 

#poetry #rock musician

赤と緑

 

工藤冬里

 
 

恐ろしいフラッシュ・バックでオノマトペで言うと ギン という感じである
月が無くなるまで続く力について話していたが

おいちゃんが呼んどるけんまた後で電話するわ

ギン

血の汗
水槽の藻
冒涜者として死ぬことの奥には余人の窺い知れぬ言語的な実体が横たわっていた

希望の原理を拾い集めていたシティー・ポップスの時代は終わった

希望はない

ギン

 

 

 

#poetry #rock musician