無題

 

たいい りょう

 
 

死という名の列車に乗って
はるか はるか彼方 
何億光年の星を旅する

ワインボトルは 
わたしのこころのように
空っぽになってしまったけど
愛する人との思い出が
そこには 詰まっている

黄色い三角錐の形をした流雲が
列車の窓を叩いたとき
これは 亡者たちの記憶の欠片だと感じた

わたしは 欠片に 手を伸ばしたが
ふれると とたんに 水泡のように
消えてしまった

その音は 耳を砕くような烈しい音で
わたしは 一瞬 音を見失った

 

 

 

雲を描く

 

工藤冬里

 
 

縫いぐるみの尻尾のニ線の切り結ぶ哺乳類の目付きに動く大皿小皿
複合的な大小のからくりが組み込まれた洗濯機のような構造を考えていると嘔吐せざるを得ない
歴史を定点で観測する百葉箱的な設え
アレウトAleut

火によって明らかになる
焼いてみたら分かる
土台があるのに焼け落ちた
弱い部分を補強
土は燃えない
雲を描く
土台の上に建てたものが燃えずに残るなら
ひと言の土壁
ひと言の土が塗られて
燃え残れば
雲を描く
雲を描くことを考えた
辛抱してくれていると思うと安心する
鳥の視界に 頭蓋の中を 置き換えて
風が強くて寒い
辛抱強さは過渡的な側面として強調されているのではない
それは元々全体の中に含まれていたのだ
風が少し冷た過ぎる
クラフトフェアで辛抱し
アートフェアには辛抱しない
農家の人はコントロールできないことがある限り辛抱する
待っている間 優先順位を守ると 辛抱が勝ってくることがある
待っている間 畑仕事よりも優先すると 辛抱が優ってくることがある
待っている間待つことよりも辛抱を優先させる

雲を描こうとしている
筆は使えない
ターナーとか絵筆だろうけど
滲ませるといいのかもしれない
白は輪郭がはっきりしている
鳥は相変わらず電線に止まっている
鳥の脳内に置き換えることは忘れていた
鳥は雲を見ている
風が 寒い
漫画のような雲は描きたくない
字体が空に浮いている
柱とポーチはローマを排したことによってさびしくなっている
彫り物のひとつもなくて末世かな
オレンジの酸化焼成の屋根の一帯
この無装飾も辛抱なのか

辛抱されている時間

すぐにキレない
あ、鳥はいない
それぞれが負っている
メタモルフォース
個人的に体験を通して当て嵌めることを待つしかない
待っている間は
チョッキを着て辛抱
疑わなかった
クラフトフェアはもう寒いだろう
試飲の紅茶を一杯貰い
辛抱は冥王星のように遠くて近い
もっと穏やかで幸せな気持ちになれるし、もっと健康になれる
自分では無理

引け目からからくる辛抱と雲との違い

 

 

 

#poetry #rock musician

露寒の指に触れるや小さき花

 

一条美由紀

 
 


ワタシハワタシノナカノ彼女デアル
彼女であるワタシはワタシの全てを知っている
でもワタシは彼女であるワタシを拒否し見ようとしない
彼女であるワタシはワタシの一番の味方であり友人でもある
彼女であるワタシは時に固く小さな実となる
そして待つ
ワタシをワタシが理解してくれる時まで

 


生まれた時から数字で考える機械と育ち、
この世は自分たちとは違う命の形があることを知っている
肉体だけに命が宿るわけではないの
私たちは浮遊する、肉の塊を超えて
私の実存は機械の中にもあり、あらゆる世界と繋がっている
私は我々で、我々は私
個人の肉体を超えて未来を見つめてる

 


言葉遊びの結果は二次元で終わる

 

 

 

結婚指輪(Last one, My bell…)

2023©Cloudberry corporation
 

今井義行

 
 

Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(オネガイ、モウイチド…)
わずかな写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…
花、を…愛してしまったが最後、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
首の周りに silk 巻いてた、
だから、口吻、出来なかった。
僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」
「駄目な、僕デシタネ …」
…………「もう、いいわよ」
Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(タノムカラ、モウ一度…)
一枚の写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…死ぬ前に、モウ一度。
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
“悠”はるか、
という意味デスネ
girly girl was 36ages.
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

ソレは、歌詞のようなものである。
だからといって
恥ずかしがることなく
「恋は、水色」。
…彼女…と…いまは、
うたいたい…

君は、病みあがり、の
僕の部屋に すわって
「学生さんの住む
部屋みたい」と笑った

For Everyone!!

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

調布から八王子方面まで降りて、
深夜の……
イタリアンに行った1993年……

seafood pasta
分け合い、ながら……
将来のことについて、話し合う
こと、一つ、無くって、

二つ、歳上……

黙ってしまった
モノデシタネ……。

「此処の、pasta、不味いのよ」

それから、しばらく
君は……、
スポットの下
dance して、いたね…

花、を…愛してしまったが
最後……、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
だから、口吻、出来なかった。

僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」

本当は、
僕の、恋人…では、なかった
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
死ぬ前に、モウ一度。
お逢い…、しましょう、ね!

girly girl 36 ages.

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

ソウシテ……

君が、亡くなった……という
噂を聞いた。
ソンナ噂を、書いてはいけない。
だって……

ミンナが、
信じてしまうだろう?

僕は、取り消すよ、君とは
結婚してみたかった……

本当、だ。

That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
girly girl 36 ages.

乳首が尖っているかどうかも、
知らないまま、

It was so fine……!

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 
 
(2023/10/04 アパートにて)

 

 

 

深淵

 

有田誠司

 
 

ひとつひとつの言葉に関係性を探した
理解出来ない謎かけ 暗号の様な言葉の欠片

その断片は他を寄せ付けない独立独歩
僕は全てを同意した
理解出来るか出来ないかなんて
たいした問題じゃ無い

詰問される事も
事の迅速さを要求される事も無い
沈思黙考が少ない語彙の間に流れていた

巧妙な罠 言葉巧みに警戒心を取り除き洗脳して行く
僕はその世界の一部を除外しただけの事だ

一面の雲に隠されたままの太陽と
何かをあてもなく待っている僕が居た
君は時計を持たずに
君に適した時間の流れの中に存在し続けている

僕の意識の周辺にある壁の枠組を
まるで何も無かったかの様に君は入り込んで来る

壁の向こう側にある深淵 其処に君は居る
恐れる事は無い 光無き混沌と沈黙と静寂
其処に君は居る もうひとりの僕が居る