徹子の部屋を観ていた

 

正山千夏

 
 

86歳の岸恵子は言った
孤独に食われてはいけない
孤独を食ってやるのよ
ポケットに入れて
身にまとうのよ孤独を

私は想像する
それは宝石かなにかのよう
愛という山で採れ
長い年月をかけて磨かれる
それはダイヤモンドよりも硬く
夜空の星よりも美しく輝き
漆黒の闇を貫く

私は悟る
子がいてもいなくても
男がいてもいなくても
苛まれる孤独
ひとりで生まれひとりで死んでいく
生まれながらの人の宿命が
人を食ってしまうのだ

テレビのこちらがわで
その輝きの光に貫かれた私が
立ち上がる
ポケットのなかで
それが転がる

 

 

 

日々のなかにあって

 

ヒヨコブタ

 
 

過ぎ去ってしまう
わたしとあった日常
ともにあったと錯覚したものたち
どこへいったろう
ときどき混乱し思考のなかに探し求めようと

する

かつてのどこかに置き忘れたならそこで誰かに拾われてほしい
のか
うちすてられたいものもある
のか

いいえもしそうならむかえにいきたいと

当然のような人生の夢は叶いましたか
あなたやあなたのなかで
わたしはずいぶん周回遅れで走っているようで
そのあいだにずいぶんと

これはペナルティなのだろうか
いいえおそらくは走り終えるまでほんとうにわからないだろうと
わたしは保留する
走り終えたとき見える景色は
どんなことでもごまかしようがないと
きりきりいたむ足も頭もすべて
なだめすかして

わたしの意思でおいてきたのかもしれない
置き忘れたというなにかをほんとうには
その可能性からひろがる世界に
またぼんやり歩み出せるように
ひたすら願う