芦田みゆき
粒子の粗い闇にひたった皮フが
しくしくと疼くので、
そうっと持ちあげてみる。
光のくずが纏わりついてくる。
痛むのは、ここだ。
目を凝らし、見つめると、
ほんわりと発熱している。
視覚が、はじまったのだ。
あきらめるちからがない
ほろびていくちからがたりない
アバンギャルドの空をのぼりつめて
きみのこころの地面にふれたい
神様のようにあぐらをかいて
言葉で解決しようとしてきたことを
ぬぎすてたい
生きることに襟をつかまれて
いたわる手にささえられながら
あの人たちの目がまぶしさにつぶれてしまう
歌をこの世界に書きつけていこう
◯
冷戦日和の坂道を
しあわせな少年がのぼってくる
しばった本をぶらさげて
古本屋を回って喫茶店まで
暑さにあえぐパヴェーゼの葡萄畑
兵士が乾き求める岩塩の苦さ
あたらしい音楽や映画の話の向こうに
自分を燃やす生活がほしい
イタリアか自衛隊か