広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
こういう女は石で打ち殺せ
あのひとは
身をかがめて
指で地面に何か書いておられた
「ひとりで書くのは
あかしではないだろう」
死んでしまったやつと
いつもふたりで
「おれたちは法のあかしをしている」
奴隷はすぐに
町へと出て行くだろう
だがわたしは子としてここにいるのだ
女と死んだやつはここにいるか
あなたたちは女の下からでてきたか
女に石を投げ続けたやつはいるか
どうして
この話がわからないのか
そう地面に
指で
ふしぎな不等式を書いておられる
日暮れてイエス十二弟子とともに往き、みな席に就きて食するとき言ひ給ふ。
『まことに汝らに告ぐ、我と共に食する汝らの中の一人、われを賣らん』
弟子たち憂ひて、一人一人『われなるか』と言ひ出でしに、イエス言ひ給ふ。
『十二のうちの一人にて、我と共にパンを鉢に浸す者は夫なり。
實に人の子は、己に就きて録されたる如く、逝くなり。
然れど、人の子を賣る者は、禍害なるかな。
その人は生まれざりし方よかりしものを』
――1968年改譯新約聖書「マルコ傳」第14章第17-22節
追記
写真は2025年11月24日まで東京都現代美術館にて開催中の「日常のコレオ」展に出品された佐々木健の油彩画《ゲバ棒、杖、もの派の現象学、または男性性のロールモデルについてのペインティング》である。