鈴木志郎康
その女のひとは悩んでいたっす。
黙々と木を削って、
悩んでいたっす。
削った木のかけら
ことばにすれば、
木くずだっす。
ひとつひとつが違う木片、
それが木くずだっす。
ひとつひとつ、
その木くずを生かせないか、
どうすれば
捨てないですむか、
そのひとは悩んでいたっす、
俺っちの夢の中で。
いい夢を見たなあっす。
ハイチャンポ。
ポン。
そのひとのいる所に行ったっすは、
エレベーターの
隠された地下に行くボタンで押して、
扉が左右に開くと
広々と開けた地上だったっす。
驚いて降りると、
子どもたちが
土を掘ったり、
水を溜めたり、
地面を楽しんでいたっす。
そこでそのひとは
木を削っていたっす。
そうだったっす、
戻ろうと、
またエレベーターに乗ったっす。
そこで目がさめたっすね。
窓の外はもう明るくなっていたっす。
ハイチャンポ。
ポン。