穴か

 

道 ケージ

 
 

闇市跡の
カトリ屋で
一杯ひっかけ
路地を
出た途端

目深の野球帽
突然突き出しやがった

黒い穴
やたら大きな
虚ろな筒

あっ
遠い野からのような
大きな音

気が抜けたように
膝が崩れ
左側頭部の大きな穴に
変な風が通った

顔は分からない
組合の二人がやられたから
気を抜くべきでなかった

Dの仕業だ
こんなことなら
奴を先に殺っとけば
まあしゃぁない

撃たれてからというもの
俺の視界の
右側には
いつも黒い穴がある

近寄ってのぞくと
ブラナの草原
何百もの豚の背中だったり
故郷の港だったり
「築港の博多タワーやん
空0家族で上ったわ」

おめでてぇ奴だ
でもまだ熱がある
掌には痣まで
穴に氷
放り込んでも
鼻からすぐ出る

あゝ
母が悲しむだろう