姉ちゃんとおんなじ車に乗っとんのにしょっちゅう修理に出しよるわあ

 

工藤冬里

 
 

世界電池に腐った金柑
謙遜な貧乏籤の男
違いを再び目にすることに
患難とか処刑とか
南らしい真逆のイントネーションで
両親を選ぶ時自分が入ることになる胎を

 

 

 

#poetry #rock musician

謹賀新年2021

 

みわ はるか

 
 

今年も赤いチェックの半纏をクローゼットから出した。
肩にかけるだけでも温かい。
今年はよく雪が降る。
空もどんよりで暗い。
将来は暖かい所に住みたいと小さいころから思っていたけれどそれに拍車をかける。
そうでなくても未曽有の2020年だった。
明日が必ず今日のように来るとは限らないということを思い出させてくれる。
色んな人の人生が変わった。
そして、これからもきっといつもより早い速さで変わっていくのだろうと思う。

年末、不燃物のごみ袋、可燃物のごみ袋がベランダにたくさん並んだ。
使い古したキッチン用品、着なくなった洋服、不要になった書物・・・・・。
すっかりこぎれいになった部屋を見渡すとすっきりした気分になった。
ごみを収集場である場所まで運ぶとすでにたくさんのごみ袋で埋まっていた。
みんな同じだなぁとなんだか嬉しくなった。
普段顔を合わすこともない、隣に誰が住んでるか分からない集合住宅でも、ここでは間接的にみんなきちんと生きていることが分かる。
年末にきれいに部屋を整え、元日を清い心で迎える。
明るい未来を信じて。

今年は何十年かぶりに「おせち」というものをお店に頼んだ。
わたしの2020年最後のミッションは大寒波が来ると言われる31日に歩いて30分程のお店からおせちを持って帰ってくること。
この文章が載るころにはそんなおせちを食べているのかな。
小さい頃は何事にもきちんとしていた祖母が1つ1つ手作りで何日も前から作っていた。
黒豆、かずのこ、だし巻き卵、煮物・・・・・・。
お正月が過ぎても残っているそれらを見てぶつぶつ文句も言っていたけれど。
そんな思い出も今では大分忘れてしまった。
自分の人生が大分進んだということなのだろうか。
それならばこれからどんな日々を紡いでいこうか。
悩んだところで答えは出ない。
「今」を生きてみようと思う。

みなさんにとって良い1年になりますように。

 

 

 

少女

 

塔島ひろみ

 
 

男女の間で何かあった
少女は傷を負い
血を流しながら夜の町をよろよろと歩く
倒れてしまう
少女はこの辺りの住人だが
道行く人はだれも少女を知らなかった
少女もだれも知らなかった
汚い靴底が鼻先をかすめザクザクと軍靴のように歩きすぎる
星を見ていた
ぐしゃり
ブーツのかかとに嫌な感触があり
私は少女の顔面を踏んだ
少女の頭部がアスファルトの割れ目に斜めにめりこむ

翌朝。
大人たちが数人集まり、足跡だらけの少女に土をかける
私も 大きなシャベルでかけている
土が入り、大きく見開いた少女の目から涙がこぼれる
もう 空は見えない
コンクリートを流して固め、舗装が終わった
大人たちはそれから別の家に行き、倉庫の下の土をかきだし、
家出に失敗した少年をそこに突っ込みコンクリートのふたをした
若者を埋める町 足の悪い老人が押し車を押しながらたくさんの買物を
運んでいる 食べきれないほどの食料を運んでいる

髪を染め、あちこちに穴を開けてピアスをし、タトゥーを入れ、化粧をし、
化粧をし、化粧をし、
何度も何度も鏡を見てやり直し、それでようやく外に出た
少しだけ楽しい時間があり やがて傷つき
倒れ、道に寝てまっすぐに星空を見た
毎晩スマホの画面で見ていたゼウスとエウロペのロマンスを見ていた

アスファルトの下に 少年少女たちの青春が埋まる
彼らは年取ってから掘り出されはじめて深く呼吸をし町を見まわし
曲った足でよろめきながらも、かつて血を流してさまよった道を
新しい若者を踏んづけながら 生きるために
歩く

つぎはぎだらけの舗装道に朝日が射す
道はいつも少し温かい
猫が日向ぼっこをしている
私はときどき足を止め 道端の草花の写真を撮ったりもする

 

(12月某日、西小岩で)