あの幻冬

 

小関千恵

 
 

10年前の今日は、雪が降っていた
10年経った今日は、風が吹いている

猫は10歳、歳を取ったはず
わたしも10歳、歳を取ったはず

コーヒーを淹れている
同じ電動ミルを使い続けている

眩しさは同じように、
陽は日に差している

ずっと、同じ部屋に住んでいた

何処かを見つめている、わたしがいた
何処かを見つめていた、わたしがいる

浮かんでゆくクラムボン
あれはなんだ 不思議だったから、ついていった

いつか、わたしを閉じ込めて、
何処かへと連れさった、あのクラムボン

今、この場所から、
そのクラムボンを、大空に見ている

何処かを見つめながら、居なくなるわたしを、
かぷかぷわらう、クラムボンの中に見る

(死んだ?)

何度旅から帰っただろう
陽が差す 冷たい空気を抜けたあと
変わりようの無かったものたちが
なんも変わらんかったよ、って
教えながら、ほんの少し揺れていた

わたしは、
この部屋で何度も眠った

 

 

 

 

 

great song after great song

 

工藤冬里

 
 

全てをカレーにして
ステップ・ファミリーも鍋に入れて
前にも見たヴィデオも溶けるまで煮て
エアコンは強に
数の子はもう潰して
シーツは部屋で干す
降る降る言って雪は降らない
風は強い
財布はポケットに
充電器で手の甲が熱い
ナミさんが横浜でライブ中にステージで死んだ
大きな鍋に
ヒット曲を次々と投げ入れて

 

 

 

#poetry #rock musician