工藤冬里
昭和新山の麓、
海はいっしゅん静かになった
ゴジラが現れる前のように
水中から言葉の枝が張り巡らされていたが
それは迷路を試そうとする電流のようだった
ヘルメットを被り、
転倒せよ
救急車は間もなくやってくる
そのドップラーにライムを乗せて
きみが時間になれ
#poetry #rock musician
昭和新山の麓、
海はいっしゅん静かになった
ゴジラが現れる前のように
水中から言葉の枝が張り巡らされていたが
それは迷路を試そうとする電流のようだった
ヘルメットを被り、
転倒せよ
救急車は間もなくやってくる
そのドップラーにライムを乗せて
きみが時間になれ
#poetry #rock musician
Bresson Photobook
where
did it go
that
with an aunt who dazzledly narrowed her eyelids
a moment of her face
took
Bresson
where did they go
nakameguro’s “cow”
at the bookstore
bought
there was a river nearby
・
He went on with his reading *
ブレッソンの写真集
どこに
いって
しまったのか
あの
眩しげに瞼を細くした
おばさんと
おばさんの顔の一瞬を
撮った
ブレッソン
どこにいってしまったのかな
中目黒の”牛”という名の
本屋で
買った
近くに
川が流れていた
・
彼は読書を続けた *
* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
#poetry #no poetry,no life
クリスマスの夜 午後10時
訪問看護師さんの 木暮さんが やってきた
──おゝ いらっしゃい!!
20代半ば位 髪をゴムで束ねて ひっつめ髪で 化粧っ気は無し
黒いズボンの 出で立ちで 何て言うか 女性性を脇に置いているようすだ(ゴメン!)
──おゝ 待ってましたッ!!
「こんばんは お加減は いかがですか?」
「向精神薬のパキシルを 3ヶ月間服用してきて ようやく 状態が安定してきました」
あゝ 木暮さん もっと女性性を楽しんでもいいんじゃないかなあ なんて余計なおせっかいか
パキシルは 切れ味鋭い薬品で 効果絶大な薬品なのだけど 副作用には 性機能を失わせる という事がある
わたしも 例に漏れず すっかり性欲を失って 男性性の外に出て
初めは 結構 虚しかったけれど
それにも だんだん慣れていって 今度は
どんどん ラクに なっていったのだった
57歳の今 あっと言う間に 迎えるだろう
還暦が 案外 愉しみにも なっていったのだ
──性欲が無いって 良いじゃない!!
──どうせなら 髭も 生えてこなければ 良いのに ね・・・
「最近は どのようにして 過ごされていますか?」
「この部屋は 日当りが悪くて とても寒いので 在宅している時は ほとんど ベッドの中にいて 過ごしています」
「昼間も 眠っているのですか? 昼夜逆転は 良くないですよ」
「眠ってはいません ぼんやりしていたり くだらない事を あれこれ考えていたり 昨日は 多目的トイレで わいせつ行為をした 芸人さんの事を 考えていました」
「・・・わたし あの芸人さん すっかり バッシングされて ちょっと 可哀そうだななんて 思ったりも してるんですよ」
「・・・どうしてですか?」
「だって 多目的なんですから 何したって 良いじゃないですか?」
「そういう もの ですかね」
「わたし ああいう シチュエーションじゃないと 燃え上がれない人たちって おおぜい いると思うんですよ
日本中にも 世界中にも──」
窓の外には しろい外灯が チラチラしている あゝ 今日は クリスマスの 夜なんだ
「芸人さんで たまたま バレちゃったから ああいう騒動に なったんでしょうけど クリスマスの夜の 今この時にも 似たような事は 行われていると思いますよ」
(あゝ そういう 考え方も あるかなあ)
──性欲が無いって 良い事じゃない
なんだか ややこしくなくて 良いもんだ
「人間だもの※ って事だと思います!」
「でも アレを イチローさんが やってしまったら もう 干されるどころの 話じゃないですね・・・?」
「国民栄誉賞を 何度も辞退して プロ野球の監督になる事も 眼中になくって 高校球児たちに 一生懸命 指導している レジェンド中の レジェンド・・・ そのイチローさんが そんな事したら もう 国外に 亡命するしか ないかもしれません ねえ」
「イチローだったら 亡命生活へっちゃら だと思いますよ 世界のイチローですからね
アフリカの子供たちに 野球教えてるかもしれませんよ」
「あはは・・・!!」
「あはは・・・!!」
「それはそうと これから 血圧を 測定しなければなりません」
訪問看護師の 木暮さんが わたしの すぐ傍らにきて わたしの腕に 血圧測定器を 巻き付けていく
わたしの目の前に 木暮さんの 乳房が
迫ってくる が それは 木暮さんの「乳房」という「もの」が 迫ってくる というだけで 衝動的に 抱き寄せよう などという 気持ちには まったく ならない
小暮さんの「乳房」は いいなあ
女性性から 自由になって
「もの」になって
気楽にぶらっと揺れている
わたしの「ペニス」も
男性性から自由になってから 気楽だもんなあ
「上が 132 下が 84 問題ありません ね」
「あゝ 安心しました」
「それでは わたし そろそろ 失礼しますね 訪問看護時間は 30分きっかりと 決まっていますので」
小暮さんが 血圧測定器を かばんにしまった
小暮さんが 立ち上がって 玄関に向かった
小暮さんが ブーツを履いて わたしに言った
「それでは また 来週
あっ そうそう 挨拶を 忘れていました
メリークリスマス!!」
「はい 小暮さん メリークリスマス!!
また 来週 よろしくお願いします!!」
・・・・・・・・・
わたしには この世で 最も愛している人が
2人 います。けれど、ずっと プラトニックのままで、良いと 思っています。
人間だもの
人間だもの
※相田みつを氏の詩句より