ソシラヌふりはできない

 

南 椌椌

 
 


© kuukuu

 

庭の枯れ葉を掃いてゴミ袋に詰めて
ふたつみっつ重ねてるうちに
もうなにも言わずに過ごしたいという思いが
大きくなったのは本当です

10月18日から30日までは喋りすぎた
個展「ソシラヌ広場」を開催中であり
コロナ感染激減の朗報もあってか
連日、多くの旧友知人が
ギャラリーに甘い蜜をそそいでくれて
ワタクシは蜜をくらって喉をうるおし
元気そうだね お互いによかった
テラコッタコラージュのこと
飲食店の危機 まめ蔵大丈夫だったか
健勝の友の噂 死んでしまった友のこと
これからどんな作品に向かうの 
次から次に話題がころがり
おしゃべりは掠れ掠れてよどみつつも
途切れては また果てしない

旧交を温めるというのは大切なことだが
毎日温めすぎると おまえはいったい誰だ?
ギャラリーを出て 火照ったワタクシに
吹きすぎる秋風がささやいたりする

昔、明石の蔵元を出たところで
おまえは友だち作るために生きてると
ほろ酔いの悪友に半分は図星
愛をこめて馬鹿にされたことを思い出す
また別の悪友の幼かった息子に
そんなこたあどうだっていいだろ!と
あらゆる局面で使いたくなる卓見を戴いたことも思い出す

喋りたいことがあるうちは喋る
喋るうちに思い出すことの量
喋るうちに破棄される思い出の量
喋るうちに先送りされる老いの暗証
そんなこたあどうだっていいだろ!と
幼かった彼に叱責されるのがオチだけど
ソシラヌふりなど出来るわけがない

庭の枯れ葉を掃いてゴミ袋に詰めて
ふたつみっつ重ねてるうちに
なにも言わずに過ごしたいという思いが
大きくなったのは本当です