骨の火

 

原田淳子

 
 

 

白火

水にしづみながら
空が美しくみえるまで
結着の地を彷徨う

脚の砕けた骨に火を灯す
溶けてゆく型
哀しみも歓びも
蝋とともに交じり合う

痛みは火で治癒される
夢が過去に殺されぬように

“I do not associate with deceitful men,
And I avoid those who hide what they are.”

賢く、芳醇な人を欺く技術から
その者たちから
わたしは最も逃れていたい
肌で、凍え死ぬとしても

焔が照らすのは
まだ触れられたことのない光の野

絶対零度の消失点

 

 

 

犬儒派の牧歌 *

 

さとう三千魚

 
 

深夜に
モコを抱いて外に出た

夜空を
見上げた

丸い月がいた

それから
モコと布団に入った

モコはすぐに布団の上に這いでて
わたしは赤塚不二夫のシェーのスタイルで眠りに落ちていった

きみの上にも
月は

いるかい
欠けるまえの丸い

月は
いるのかい

朝早く

モコに起こされた
暗い庭の玉石の上でモコにおしっこさせた

それから
部屋を暖めた

モコをおいて
ひとりの部屋に入った

サティの”犬のためのだらだらとした前奏曲”を聴いた

窓を開けると
西の山はいた

近くで
イソヒヨドリが鳴いていた

犬儒派の歌は
きみに

聴こえたろうか

光っていた
ひかりだった

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”犬のためのだらだらとした前奏曲” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life