一切だれにも向けられず

 

駿河昌樹

 
 

言語使用は
たとえ
無人の孤島でなされようとも
必然的に読み手を呼ぶ
ヒトがまったくいない場所であっても
言語そのものが
みずからを「読む」

この言語神学に到る者は少ない

一切だれにも向けられず
ヒトの読み手がまったく想定されず
ヒトに読まれるために言語配置が行なわれず
言語みずから
ひとり
言語使用痕跡を読む

意識的にこれがなされ続ける場で
はじめて
この界において
発生しはじめる波動がある