キャンプの夜

 

辻 和人

 
 

嵐が収まった
午前1時
これが噂のギャン泣きか
ギャンギャン泣きまくった後
やっと眠ってくれたコミヤミヤとこかずとん
「昼間は割と穏やかですが夜は迫力ありますよ」
先生から聞かされていた通りだ
今日退院して育児タクシーで家に連れてきた
病院の前で一家初の集合写真
撮影は運転も赤ちゃん言葉も巧みな初老のドライバーさん
ただいまぁと入ったお家の配置は
ミヤミヤの熟考を反映してる
水場が使える1階に備品を集約
中央にベビー用マットレスを敷き
隣に見守り用の大人のベッド
東に紙オムツやベビー服が整理された箱が3つ
西にハイローチェアと空気清浄機
キッチンには哺乳瓶とミルク缶のストック
棚の上にはミルクの時間と量を記したホワイトボード
そしてミヤミヤ新米ママとかずとん新米パパ
「すごかったね、ミヤミヤ。
 2人とも声の限りを尽くして絶叫してたよね。
 この嵐みたいのが毎晩続くと思うと緊張するけど
 ウチの子がウチの子らしくしてるわけだから全然ヤじゃないね」
「大変だけどかわいいから全然許せちゃうね。
 逆にキャンプみたいで楽しくない?」
そう言やそうだ
1つの部屋に家族4人
テント張って水汲み行って火起こして
オムツ替えしてミルク飲ませて抱っこして
深夜だから灯りは鳥さんの形のランプ型照明のみ
キャンプファイヤーの残り火の
ぼんやりした明るさが
流れ星見ぃつけた
てな気分にさせてくれちゃって
嵐の後の静けさを
交互に小さく乱す
2つの寝息が
渓流から吹く風に撫でられた
てな気分にさせてくれちゃって