老いていく人、怒る人

 

ヒヨコブタ

 
 

ひとは怒ってもだいじょうぶだと見下した相手にしか怒りや理不尽をぶつけないだろう
わたしはまたもやなめられていると
義理のきょうだいの横暴に眠れない

じぶんはまだ介護される必要を感じないと
子どもたちも母も困っているというのに
そう言い放ってしまうひとは

嫁という立場は弱いそうだ
発言権がないという意味で

酷いことにならぬための転ばぬ先の杖が届けられないことに泣き腫らしている

当人の意思確認はいつまでできるのだろう
80をとうに超えてもなお頑ななひとの言うことを聞くという他の家族たちよ
なぜそれほどまでにじぶん主義でいられるのか
わたしにはわからない

日々のストレス発散のためにと散財し続けるのもまったくわからない
計画性というのがどこにもなく、困れば持っている人に頼るという
不可思議極まりなくてわたしは眠れないのだ
持っているひとはあなたの財布ではないのだと横っ面をひっぱたきたくなる、真夜中
何も意味がないことがわかるぶん、涙している

わたしには子どもとの縁がなかった
良かったのかもしれないとこういうときつくづく認める
その反面、更に悲しくもなる
夢見た現実は、夢でしかなかったと

冷静に気分を変えろという声が聞こえる
お前だけ悩んで悲しんでもしかたないと
よし、と踏ん切ることもとても大事なのだから
よくよくわかっている
ここから一旦離れよう

 

 

 

島影 52

 

白石ちえこ

 
 

 

その小さな岬にたどり着いた頃、日はすでに傾きかけていたと思う。
遠浅の磯にはごろごろとした石ころがころがっていて、なにか珍しいモノが見つけられそうで、下を向いて歩いた。
海と空の間にふと、一本の白い線が見えた気がした。
辺りが暗くなりはじめると、線は次第にくっきりと強くなってきて、それが小さな灯台からの光線であったと気がついた。
まっすぐに一点を照らしている。
おもたい雲が空を覆い、日が沈むと星も月もなく、海も真っ暗になった。
光線はますます力を増すようにまっすぐにのびる。
灯台と光線と海は不思議な三角形を作り出す。
時間が止まったような暗がりで、小さな灯台が照らし出す波頭がうごめいていた。