ぶらんこ *

 

さとう三千魚

 
 

夜が
あけて

空には
青空

ひろがっている

モコ
吠えている

肉が

欲しいのか
モコモコ

女が
呼んでいる

モコの走る音が聴こえる
走ってる

ぶらんこが揺れる

遠い

誰も
いない

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

モンハン

 

工藤冬里

 
 

藤消えた山がもう「さみしくないだろ」

たたかいなど忘れてしまった頃にノスタルジーは否定し去るものではなく効用もあったことに気付く
人間味、てことだ

目と歯と胸の順に我に返り身を投げる崖の腰の痙攣

息の仕方をあれこれ
急なダウンロードにハッとして
眼球の水平線を招来する
防御も祝福
水を抜くように洗濯機の根底が見えるようになったAIに
何をどうすればいいかというより
何故なのか訊け

 

 

 

#poetry #rock musician

また旅だより 57

 

尾仲浩二

 
 

この夏に終わってしまう中野サンプラザ
そこでの最後のブックイベントに出店した
会場に溢れる沢山のマニアックな本の中に堀ちえみのアイドル本があった
1981年、写真学生だった僕はホリプロのファン会報紙のカメラマンのアルバイトをしていた
その年、中野サンプラザで開催されたホリプロスカウトキャラバンで優勝したのが堀ちえみ
なので僕は会報誌のために楽屋で、誰よりも早く彼女を撮ったのだ
中野サンプラザ、そして堀ちえみ、これは運命だろう
なのに結局買わなかった、なんども手に取ったのに
レジに出すのが恥ずかしかったから
どうせ本人が書いたわけではないしと言い聞かせ
たった600円だったのに
まだ後悔している

2023年5月3日 中野サンプラザにて

 

 

 

 

致 本來無一物野郎
本来無一物野郎に寄せて

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

雲很遠,海岸線
準備讀詩的人
站在站前的廣場,等
人群來去,而我
岩塊的流域,再來
一節。空無
物,同時打開每一
無。思緒,我響應風
流水,響應Bach
激流中的磐石。
一和所有,都先於我
而我只是復述。

 
 西貢,五月的雨中

 
    .
 

雲很遠,海岸線
 雲の遙かな、海岸線に
準備讀詩的人
 詩を読もうとしている人
站在站前的廣場,等
 駅前広場に立って、
人群來去,而我     
 人々の往来を待ち受けている、そして私は、
岩塊的流域,再來
 岩の流域から、
一節。空無
 もうちょっといってみるか。すっからかんな
物,同時打開每一
 もの、それを同時に開いていけばまたまた
無。思緒,我響應風  
 無だ。思うに、私は風と響き合い、
流水,響應Bach
 流れる水と、Bach この 
激流中的磐石。
 激流にも流されぬ巨石と響き合う。
一和所有,都先於我
 一そしてすべて、みんな私に先立つもので
而我只是復述。
 ただ私は繰り返して述べるのみだ。

 
西貢,五月的雨中
 サイクンにて、五月の雨の中で

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

まっしぐら

 

道 ケージ

 
 

まっしぐら
まっしぐらだ
しぐらって何だ
なんだなんだ

くじらかな
くじらのしんせき
しぐれてまっしぐら
海雪分けいる
よけいに白い

らくだだろ くろらくだ
だらくしたんだ
ぐらぐらしてさ
こぶ、重いってさ

グラだよグラだクリグラだ
でっかいケーキを落としてさ
まっ、しんでしまったという話だな

 

 

 

声を漕ぐ

 

野上麻衣

 
 

ぷかぷかと浮かぶ
雲みたいな声は
本人ではなく
だれかのいるほうから
聞こえてきた

(声はその人が持っていなかった)

まず椅子を用意する
声が座れるように
ぜんぶで8つ
どちらかあまってしまっても
かさなってゆくから
心配ない

(声は椅子に座りたがらない)

それから
舟をくみ立てる
泡はからだに沿って音をたてる
そのかたちをたどり
水面を漕いでゆくことにした

(声は舟に乗ってくれるだろうか)

2メートル先
水の中で声がする

ぷぅーと吹かれたラッパのように
からだがふるえる
ずっと手のひらにあった
ひとの、声