吸血キスマーク

 

辻 和人

 
 

腕の中にいるのは何だ?
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ
ひっきりなしに吸っている
目は固く閉じて吸っている
シャツをぎゅっと掴んで吸っている
コミヤミヤ、軽いうなり声あげて甘えたそうだから
抱えあげた途端
ぷっくりした唇が
ちゅぱっ
Tシャツから覗くかずとんパパの二の腕に吸いついた

皮膚の一番薄いトコはどこだ?
ここだ、ここだ
狙って
吸え、吸え、吸い破れ!
破っちまえば精のつくものが出てくる
何かしら濃いもの
ミルクより濃いものが
たぷたぷ出てくる
牙の代わりのぷっくりした唇のねっとりした内側の
鋭いこと鋭いこと
かずとんパパのうっすい皮膚を破って精吸い尽くせば
グングン成長するぞ
今は抱っこされてるけど
成長すれば逆転するぞ
かずとんパパの方が小さくなって
こっちの腕にしがみつくことになるぞ
口動かせ、もっと口動かせ
つむった瞼の奥の奥で
ほら、かずとんパパ、もうこんなに小さい
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ

かれこれ20分も一心不乱
そっと剥がしてみるか
げげっ、二の腕にキスマークできちゃってるよ
おっきいのが2つも
キスマーク、つまり内出血、つまり血
こりゃ吸血鬼だな
口動かせば生きる元気が湧いてくる
あんなにちっこく生まれてきたのに
こんなにでっかいキスマークつけるようになっちゃって
ならば吸血鬼コミヤミヤ
吸え、吸え、吸い破れ!

吸われて縮むかずとんパパ
縮んで縮んで
吸血鬼コミヤミヤの腕にしがみつく恰好に
どうしよう
でもこのままじゃ終わらないぞ
コミヤミヤのぷっくりしてきた二の腕
2000gで生まれたとは思えない二の腕
かずとんパパ、ちゅぱちゅぱし返して
いつか復活してやるからな
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ

 

 

 

 

廿楽順治

 
 

お濠のまわりに
時計屋さんがいくつもあって

おなじ時間を売っている
ようにみえるが
(ほんとうはそこに陰謀がある)

わたしは右回りに歩いた

今はもうないが
お城の天守閣には
青くておおきな目玉があったらしい

教室のうしろで
柱時計みたいに
立たされた日を思い出す

みんなの時間なんか踏みつぶしてやる

右回りで
子どもたちの国がひとつずつ

音を立てないように
空へ消えていくのを見ている

 

 

 

大宅世継作詞・夏山繁樹作曲による詩篇交響曲第8番『雄大なる楽天』

 

佐々木 眞

 
 

1「ズビズバー、パパパヤー」~2019年トランプ・ヴァージョン原典版*

 
カツオ「ねえねえ、NHKってまた偽ニュース流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ。誰が言ってるの?」

しずか「トランプさんよ」

くまモン「でもあのひと、偽大統領なんだよ。知らなかった?」

シャイアン「へえー、そうなんだ」

トト子「安倍さんも偽総理大臣なのよ」

おそ松「へえー、そうなんだ。知らなかったなあ」

ワカメ「ISって、偽イスラム国のことでしょ?」

サザエ「そうよ。満洲国も偽満洲国なのよ」

イクラ「バブー」

イヤミ「ところで、あんた、誰?」

チコ「あらま、わたしのことを知らないの。ボーっと生きてんじゃないよ」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

チコ「平成が終わったら、あんたらは死ぬといい。あんたらの死は近いぞ」

伴淳「アジャパー!」

アチャコ「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」

黒柳徹子「チコちゃん、あーた、そんなひどいこと言うと、死んでも『徹子の部屋』で追悼してあげないわよ」

左ト伝「ズビズバー、パパパヤー、やめてケーレ、ゲバゲバ」**

 *『佐々木眞詩歌全集』(らんか社)p18
 **『老人と子供のポルカ』     
 https://www.youtube.com/watch?v=LZZk0tP49H8
 作詞作曲/早川博二 歌/左ト伝とひまわりキティーズ

 

2「フェイクニュース」~2022年プーチン・ヴァージョン改訂版***

 
カツオ「ねえねえ、NHK ってまた偽ニュース流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ。誰が言ってるの?」

しずか「プーチンさんよ」

くまモン「でもあのひと、偽大統領なんだよ。知らなかった?」

シャイアン「へえー、そうなんだ」

トト子「キシダさんも偽総理大臣なのよ」

おそ松「へえー、そうなんだ。知らなかったなあ」

ワカメ「I Sって、偽イスラム国のことでしょ?」

サザエ「そうよ。満洲国も偽国家なのよ」

イクラ「バブー」

イヤミ「ところで、あんた、誰?」

チコ「あらま、わたしのことを知らないの。ボーっと生きてんじゃないよ!」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

伴淳「アジャパー!」

アチャコ「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」

黒柳徹子「チコちゃん、あーた、そんなひどいこと言うと、死んでも『徹子の部屋』で追悼し てあげないわよ」

中町綾「アセアセ」

 ***『佐々木眞詩歌全集』(らんか社)p126

 

3「それいけ!自由で開かれたインド太平洋」~2023年異次元男ヴァージョン最新版

 
カツオ「ねえねえ、NHKって、また偽天気予報流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ? 誰が言ってるの?」

しずか「コウ君よ。大雨と落雷で電車が停まるというから早引けしたら、快晴になったんだって」

くまモン「でも、もっとひどいのは、この国の首相だよ。『なにゆえに異次元男を罷免しない公私混同の最右翼なるを』という狂歌を詠んだ人がいるそうだけど、その通りだよね」

おそ松「あの人、金庫にお金もないのに、『ミサイル買いたい、ミルクも欲しい』と叫んでる。無節操で、無定見、まるで<怪人ダヨン面相>みたいだよ」

チコ「あの人、偽総理大臣なんだよ。知らなかった?」

チョロ松「ジェ、ジェ、ジェ、そうなんだ」

トト子「<チャットGPT>を濫用しすぎると、大脳前頭葉がいつの間にか<「スマホチャットGPT脳>に変態して、その人間は<世界AI一家日本支部>の子分になってしまうのよ」

カラ松「へええ、そうなんだ。知らんかったずら」

ワカメ「『なにゆえに原発運転を延長するフクイチ再来が必要なのか?』という短歌を詠んだ人もいるそうだけど」

イラク「バブー」

一松「そういえば、『なにゆえに保険証を廃止する廃棄すべきはマイナカード』という歌もあるよ」

サザエ「真面目にちゃんと働いている保険証を用済みにして、欠陥だらけのマイナカードをアメとムチで強要したり、危険な原発を停止するどころか、勝手に長期運転に切り替えたり、こっそり新設計画を練るなんて、とんでもない話はだわ」

マスオ「<入管法>を改悪はしても改善するつもりなどさらさらない異次元内閣。その胸の奥にあるのは、どうあっても<とつ国びと>を<神国>に侵入させたくないという封建的な島国根性なんだね」

波平「彼らは、いったんは超党派で合意したLGBT法案を、党利党略でちゃぶ台返しにしたりするんじゃ」

フナ「『なにゆえにそんなに急いでどこへ行くマイナ原発LGBT』という狂歌もあるそうだけど、まったくあの人たちは、いったいどういう了見で、あたしたちを、どこへ連れて行こうとしてるんだろうね?」

チコ「そりゃ<自由で開かれたインド洋>に決まってるじゃない!」

イヤミ「ところで、あんた誰?」

チコ「あらま、わたしのことを知らないの? ボーっと生きてんじゃないよ!」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

黒柳徹子「偽者でも本物でもいいけれど、アタシが心配なのは、いつの間にか悪者扱いになっている市川猿之助選手。一日も早く『徹子の部屋』にやってきて、謎の一家心中事件の真相を、キチンと自分の口で説明してほしいな」

タラオ&タマ「そうだ、そうだ、そうだニャア」