姉に電話する

 

さとう三千魚

 
 

熊が
出てる

という

昨日の夜だったかな
秋田の姉に電話してみた

そうなのよ
その辺にいるのよ

姉は言った

最近は山にも登っていないという
山菜採りにも行かないという

山にもでてるけど
西馬音内にもいるのよ

散歩も
近所にしか行けないのよ

熊も
きっと

気候変動で困ってるのよ
人のせいなのよ

姉は
熊に同情していた

熊も困っているのだ
人も困っている

人は人を殺すけど
熊は熊を殺すのか

どう
だろう

今朝も

窓辺には
雀がきた

ヒヨドリもきた

山鳩もつがいで来ることがある

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

おとうと

 

廿楽順治

 
 

おとうとをまもれなかった

それだけを
根にもって

わたしの父親は生きてきたらしい
(そうだ、おまえがいけなかったのだ)

おとうとの
傷ついたくちびるの

あの血はいつまでもかわかない
それがにくたらしい

老いてから
大学ノートにそのことを書いた

死ぬまぎわまで
おとうとには会おうとしなかった

わたしたちの夢の土地は
ときとして

そのような
遠いおとうとで濡れている