海から帰った

 

さとう三千魚

 
 

昨日も
行ってた

昨日も
海に行ってた

知り合いのおじさんが
マリーナ横で

竿を出していた
黒鯛をねらっていた

陽に焼けた
白髪の

おじさんはいた
ずいぶんと会ってなかったな

おじさんは
おとなしく話す

おじさんは
オレンジの軽トラに乗っている

膀胱と前立腺を手術でとったんだと言った
海浜公園の土手の坂はもう登れないから

ここで竿を出している
と言った

今日も

海に
行ってみた

おじさんはいた
おじさんに会えた

マリーナ横の海は

空を映して
青く

うねうね揺れていた

風に吹かれていた
夕方に帰ってきた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

川岸で女たちは見つかる

 

工藤冬里

 
 

うっすらとはみ出してゆく
盤の外へ雪崩れて
水平の斜面を氷河のように

ガス抜きを見抜けても
本体に属していない党派性など
ボンベごと爆破された方がよい

不安は和らがない
サメに喰われるので街路は進めない
薬剤では治せない

はみ出た貝の中身のように絶望し
どこから始めてよいのか信号待ちして
探りながら
閉店だらけの街道の
雨に濡れた舗道をゆき
川岸で女たちは見つかる

晴れた日も雨の日も
はみ出たまま
碁盤の街を潰してゆく

 

 

 

#poetry #rock musician