michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

You Light Up My Life…?(Goes Rock,愛のよろこびGoes To The Future, Fried Rice…!)

 

今井義行 2023©Cloudberry corporation

 
 

世界のすべてのをんなおとこは、“受精”(ジュセイ)を、めざして
在る、のです、か……?
性徴が悩ましく途絶えそうになり、わめいてしまった夜も、あります。
……どうしようもなく、抱かれてしまうことだけが、幸せでした。
僕には、おさない頃から、子どもを
つくる…能力がありません。
うあ、目の前に、嘗て一緒に暮らしたをとこである…建志(タケシ)サンが、居ます
「不死鳥なんて、見過ごそう。」と彼は今日、呟く。
アア…僕たちは…ずいぶん、歳をとってきました。
お互い、毛髪を朱く染めた。
一緒にながく歩いてきた。
「ドラムが巧くって、SEKAI NO OWARIって、良いバンドデスネ…!」と僕は言う。「義行(ヨシユキ)、お前の声、まだ声変わり前みたいな揺れ方ダネ。色めき立つような口づけを、?」
「幾つもの、聖夜のもとに…僕はふたたび身籠りましたよ。有り難う…!」
すると、建志(タケシ)サンは
ベッドでキラキラ身を震わせながら言うのです。「世界のすべてのをんなおとこは、“受精”(ジュセイ)を、めざして
在る、のです、か……?」
……………………
精子、どしゃぶり。
幾つもの性徴、幾つもの夜を辿っているとはいえ…僕たちは、衰えながら新鮮な、全裸です……。
愛し過ぎて苦しいと思うまもなく僕のぱんぱんに張り詰めた乳房の先から温かい母乳が零れ出す。You Light Up My Life…?(Goes Rock,愛のよろこびGoes To The Future, Fried Rice…!)
「建志(タケシ)サン、僕は柔らかいロックに行くし、未来にも行きます。」
「義行(ヨシユキ)、おなかが空いたからライスに行こう!ガーリックバターたっぷりのFried Rice…!」Fried Rice…!!あとで、お尻

の穴に塗りたいですね。

…………
そこからも時間は経ちました。お互いを愛おしみあいながら手を繋いで向かい合うとき…僕たちは、まだ綺麗だ。幾つもの性徴を過ぎて皮膚はたるんでいるかもしれないが、それでも、
世界のすべてのをんなおとこは、“受精”(ジュセイ)を、めざして
在る、のです、か……?

 
 

2023/06/13 アパートにて。

 

 

 

スガイ燃料店

 

廿楽順治

 
 

燃料店のむすめはあかるかった
いつもわずかだが体が燃えているのだ

ばくはつのひとつ手前
(なのだろうか)

燃料
ということばには
わからない思想がないようにみえる

中学生のむすめの頬はいつも赤かった
あかるく
ふっとばすようなものがみのっていた

今日ふいにおもいだす
燃料のこと
燃料を売って暮らしていた家のむすめのこと

ばくはつのひとつ手前
(そこでしかみんなは暮らせない)

わからない思想はやがて
こっぱみじんになるのだろうか

むすめはもう
燃料ではないのだろうか

 

 

 

女たらし

  ―女たらしって、なに?
    だらしないひとのことよ。(「ある家族の会話」)

 

佐々木 眞

 
 

わいらあ どうせ だらしないひと
おぬしも さいごは だらしないひと

女たらしが おるように
男たらしも わんさと おるがな

ときにそこいく お客さん 
よってらっしゃい みてらっしゃい

この世で いちばんめか 2番目に大事なこと
ただで 教えて しんぜよう

あんさんに どうしようもなく 好きな人が 出来
その人と やりたいと 思ったら

すかさず それを やることだ
抜く手も みせずに やることだ

パッパラパーと 脱ぎ捨てて
ペロペロペーと 舐め回し

グチュグチュグチューと 口吸うて
ズビズビズバーっと 突き入れて

アレアレアレーと 叫んだら
グルグルグルンと 捏ねまわし

一念発起 無念無想
一心不乱 一気通貫

四の 五の 言わず
二人揃って 成仏するんだ

よってらっしゃい みてらっしゃい
耳をほじって お聞きなさい

お二人さんも よござんすか
あたしは 二度は 申しません

好きで やりたく なったなら
ここを 先途と やることだ

これぞ この世の 置き土産
死に物狂いで やりきる ことよ

 

 

 

満天

 

原田淳子

 
 

 

かなかなの鳴く宵には
いのちのかけらが降ってくる

月のない夜に
羽根を埋める

葉の指さすあの西の明星をごらん

あれは
死んだ者たちがもたらしてくれる未来
いのちあるぼくたちにおくってくれる暁の光

『詩の国に住むことにきめた』
夢のつづきを描くのだって、
微笑んだ彼はそこにいるのだろう

きみもともにゆこう 
新しい朝が生まれるところ

ぼくたちはそこで花のようにとべるだろう

 

 

 

また旅だより 59

 

尾仲浩二

 
 

フランス、アルルでのフォトフェスティバルも終わってマルセイユに移動
アルルの駅は旧式で、向かいのプラットフォームへ線路を潜らないといけない
スーツケースが重いがエレベーターもエスカレーターもない
炎天下のプラットホームに20分遅れで列車はやってきた
ヨーロッパのホームは低いので荷物を抱え上げるのが大変
車内はクーラーが効いていてやっと汗が引いたと思った頃
片田舎の駅に停車したままいつまでも発車しない
そのうちエアコンが止まり送風も止まった、窓は開かない
ちなみにこの時の気温は37度
客は車外に出て車体の陰でタバコを吸っている
しばらくして車掌がもうこの列車は動かないと言った
重い荷物を下ろして駅の外へ出るがどうしようもない
給水のためのペットボトルが運ばれてきた
駅のトイレはひどい状態らしく誰もが扉を開けては諦めた顔をしてすぐに閉める
車掌からの指示があり、多くの人は反対方面のホームからアルルへ引き返して行った
僕らは駅前に一軒だけある食堂でビールを飲みながら呼んでもらったタクシーを待った
翌朝、恐ろしい痛さでベッドから起きれなかった
はじめてのギックリ腰だった
それが7月11日の朝のこと
昨日帰国したがまだ痛い
痛い

2023年7月18日 東京中野の自宅にて