michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

夢素描 06

 

西島一洋

 

飛ぶ(飛ぶ方法)

 
 

トントントンと走って、トトントンのト、で、すうーっと垂直に天空に。簡単だ。でもこのタイミングが微妙に難しい。

いったん、この状態になれば、あとは結構自在だ。フワフワとして若干降下し始めた時は、地上の細い細かい尖端を見つけて、そこをツンと軽く蹴れば、さらにグーンと高くにいくことができる。

時に、崖っぷちのようなところに降り立って、悩んでいても、それそこに、とんがった尖端が、あるではないか。そうそう、そこを蹴れば良いのだよ。またまた、ツーンと高くに、すぐに行っちゃう。ピョーン、ピョーン、ピョーン、というよりも、トンスーッ、トンスーッ、トンスーッ、という感じ。

景色はかなり悲惨だ。街は全て崩れている。人の声も聞こえるが叫び声でも、呻き声でもない。ひそひそと話している。その、ひそひその声は、倍音の二乗の繰り返しで豪倍音になっている。その割には、静謐感もある。

その辺りを、ヒョイ、ヒョイ、とすり抜けて、やっぱり天空へ。ああ、天空は良いな。何も無くって。だが、漂うことはできない。あるところまでくると、急に失速し、というより落下し始める。落下する時間感覚は、ここまで上昇してきた時間感覚よりはるかに早い。ビューとさらに加速度的に落下し始めるのだ。

でも、安心、どっかに突起物があるだろう。そこに、ツンとやればまたピューンだ。

まだ他にも色々な飛び方がある。たくさんたくさんあるので迷ってしまうが、今回はもう一つだけ書いておこう。

屋根、何故か黒瓦。二階の物干し台からポンと降りればこの黒瓦屋根、だから、一階の屋根なのだ。面積は身体感覚からいえば若干広い。頂点つまりうだつのところまで上がり、滑り台では無いけれど、道路、ここが結構具体的なのだが、飯田街道に向けてスルスルというか、ヒヨヒヨというか、つまり、若干瓦より数ミリ程度浮いた状態で街道に向けて滑り落ちるのだ。

瓦屋根の先端の縁からヒュイと街道に落ちるのだが、ダメかというすれすれで、ビュイと宙空に身体が放り出されるのだ。これが飛ぶ瞬間だ。この時は結構長く飛べる。というか、いったん飛び始めるとあとは自在だ。

でも、そんなにそこから遠くへ行くことは無い。周辺をヒョロヒョロと飛び回っているだけだ。でもそれが逆にリアリティが生じてしまうのだ。薄暗いが、妙に輪郭がくっきりしているのだ。石っころも、うどん屋のコールタールの塗ってあるトタン壁も、曙町子供会開催のお知らせのための自転車の後ろに乗っている少女の呼び鈴も、銭湯の壁で鳴いている蝉も、理科室のアルコールランプの匂いも、川名神社の石垣にいた小さな草亀も、広路小学校の近くでアイロンで火災になって避難した山崎川のほとりとか、
 ‥とここまで書いて中断した。そして数日がたった。文頭から読み直し、若干推敲したが、読めば読むほど、元のが良いかと思われて悩んでしまう。

で、一応なる推敲作業を終えて続きを書こう。

なんといっても、やっぱり草むらだ。草むらの中ではなく、風景としての草むらだ。牛蛙が鳴いている。草むらの奥は川だ。ただここに突起物はないので、バサバサというかフワッというかボテチョというか、草むらのさらに草むらの凝集している若干固いところに着地するというか、まあ若干包まれるという感じか。でもそこでは寝れない。不安定ということもあるが、風が強い。この風に乗ればきっと飛べる。待とう。良い風が吹くまで。

草むらの風景はなぜだか暗い。蔓がある。牛蛙のこえ。自転車。遠くに光が見える。あそこはきっとエレベーターだ。あそこのに行けば、違う階に行ける。もう飛ばなくとも良い。あのエレベーターに乗ろう。

さて、今回は、意図的に中断する。次にいつ書くか不明だが、今月23日が締め切りなので、それまでには追筆すると思う。今日は、2020年9月4日。‥。

追記、エレベーターは、次回か次々回回しとしよう。

追筆、まずは、先端つっかけビューンの飛び方の方法の伝授をしよう。

飛び方はとても簡単だ。まず落ちる。飛ぼうと思ってはいけない。初心者は高いところからではなく、上記のように、一階建ての屋根ぐらいが丁度良い。飛ぶのに失敗しても、一階の屋根から飛び降りても若者だったら平気だ。(僕は夢では無く実際に子供の頃は一階の屋根から飛び降りていた。もちろん僕だけで無く、他の子供もビョンビョンとびおりていた。2メートル強3メートル弱くらいはあったと思う。)臆することはない。地面すれすれでビユイーンというかフワッと宙にうかび、そのままスイーッと飛ぶことができるのだ。

もうひとつ勇気のいる方法がある。高いところ、ビルの屋上とか高い崖の上とか、そこから飛び降りるには極めて勇気がいる。飛べるとは思っていても、不安はある。飛び降りてそのまま落下ということも否めない。やはりこの時は自分を信じる力だ。きっと飛べるというより、飛べないわけがないという感じかな。でも、心理的に恐怖はあるのだ。それなのに、ふっと宙空に。あら飛べた。やっぱり飛べた。飛ぶのはとても簡単なのだが、そこまでの心の揺らぎがあることは事実だ。

さらなる飛び方、色々あるが、きりがないのでとりあえず今回は筆を折る。

そう言えば、ここ最近、というか、長らく、おそらく20年ほど、飛んでないなあ。

 

 

 

So much for today.
今日はこれでおしまいです。 *

 

さとう三千魚

 
 

last night

“Mikawaya” was vacant

always
I couldn’t enter because it was full

many times
I couldn’t enter

“Mikawaya” oden

I ate

Then
I went to the “bridge”

The “bridge” was also vacant

Empty chairs were lined up

I drank the transparent liquor of this country

on the way home
I walked home

alone

I crossed the bridge and went home

when crossing the bridge

on the horizon
people’s lights were lined up

there are many people’s lives in the horizontal lights

So much for today *

 

 

昨夜

“三河屋”は
空いていた

いつもは
いっぱいで入れなかった

なんども
入れなかった

“三河屋”の
おでん

食べた

それから”橋”に行ったのだったか

“橋”も空いて
いて

空の
椅子が

並んでいた

この国の透明な酒を飲んだ

帰りは
歩いて帰った

ひとり

橋を渡って帰った

橋を
渡るとき

地平には
人々の明かりがならんでいた

水平に並んだ明かりのなかにたくさんの人々の生がある

今日はこれでおしまいです *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

depict

 

工藤冬里

 
 

作りに行くかたちの場と時間の中に自分では操作できない要素が入っている時、やっと支払いは賭けや投げ銭によって完了する。例えば死にかけている時の所有物の分配や、死んだ後の埋葬の仕方などである。そこには自分より大きな胴元が動いていなければならない。
自分で処理できない護美芥はない。ゴミ・カス・クズの整理がアルシーヴであるとしたら、アルシーヴじたいに支払い能力はない。アルシーヴはロック史でなければならない。Yo soy とYo estoyの違いのように、焼成される私には二つの動詞が纏わり付く。それがdepictされなければならないのだ。
災厄は未だ限定的である。大火事はここからは見えないが宇宙からは見える。その赤の画竜点睛で時間と場への投げ銭は完了する。
死を飲む、或いは死を飲み込む者のように酒場の代金を払いなさい。

 

 

 

#poetry #rock musician

SEVEN STEPS TO HEAVEN

 

狩野雅之

 
 


紅いドアがある

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iPhone SE2

 


なんでもない午後

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FUJIFILM X-T2, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


雲の浮かぶ街

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FUJIFILM X-T2, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


ここにひかりあれ

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FUJIFILM X-T2, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


今日という名の奇跡

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FUJIFILM X-T2, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


生きているだけじゃダメなのか

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FUJIFILM X-T2, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


生きるているだけで十分

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FUJIFILM X-T2, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 

※Miles Davis のアルバム “SEVEN STEPS TO HEAVEN”を聴きながら。

※「いちばん大事なことはな、己に忠実になれ、この一事を守れば、あとは夜が日につづくごとく、万事自然に流れ出し、他人に対しても、嫌でも忠実にならざるをえなくなる。」
~ウィリアム・シェイクスピア著福田恒存訳「ハムレット」P32

 

 

 

Blue jeans are as American as apple pie.
青いジーンズはとってもアメリカ的だね。 *

 

さとう三千魚

 
 

afternoon
I went out to the city

I went to a new bookstore named “skylark” in the city

There was no skylark
I ordered the October issue of “Bijutsu Techo”

then
At the Wednesday library

I bought “kukai Jodo”

I was meeting with a woman at PARCO

Looking for soap
I visited several shops with a woman

Because the face-wash soap I bought in Singapore’s Indian town has become smaller

I was looking for a fragrant soap

I bought Nepalese jasmine soap at the 4th store

wash my face
morning

I’m happy with the scent of soap

I’m back in my room and listening to Janis Joplin’s SUMMER TIME
Janice has American pain

I have some jeans

I like LEVI’S 502
LEVI’S 502 is made in China

Blue jeans are as American as apple pie *

 

 

午後
街に出た

街に新しくできた”ヒバリ”という名の本屋に行った

雲雀は
いなかったが

“美術手帖”10月号を注文した

それから
水曜文庫で

“苦海浄土”を買った

PARCOで女と待ち合わせをしていた

石鹸を探して
女と店を何軒かまわった

シンガポールのインド街で買った洗顔石鹸が小さくなったから

香りのよい石鹸を
探していた

4軒目の店でネパールのジャスミン石鹸を買った

顔を洗う

わたしは石鹸の香りでしあわせになる

いま部屋に帰ってジャニス・ジョプリンのSUMMERTIMEを聴いている
ジャニスにはアメリカの痛みがある

ジーンズは
何本か持っています

LEVI’S 502が好きです
LEVI’S 502は中国で作られています

青いジーンズはとってもアメリカ的だね *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

refuse collector

 

工藤冬里

 
 

自由とは捨てること
不自由とは収集すること
排泄物であるかのように捨てることが必要
夏とは捨てるものをゴミのように憎むこと
冬とは収集してしまったことをクズのように憎むこと
refuse collectorが五味カス葛うどんを食べている
愛されるべきだったものは死後数週間放置されている
札が見つかることもある
断捨離とは捨てられないこと
貧乏性とは捨てられたいこと
to know himとは彼のゴミ屋敷の入り口に立つこと
自由な秋の強さとは強力粉と薄力粉を共に踏み付けて五味カス葛うどんにすること

 

 

 

#poetry #rock musician

家族の肖像~親子の対話 その48

 

佐々木 眞

 
 

 

僕、映画村好きですお。
映画村ってどこにあるの?
西日本ですよ。
コウくん行ったことあるの?
修学旅行で行きましたお。
そうなんだ。お父さんも行きたいな。
お母さんも行きたいな。コウ君と一緒にまた行きましょうか?
嫌ですお。

ヒタイ、オデコでしょ?
そうだよ。
ヒタイ、どこ? これ?
そうだよ。

✖️は止めるでしょ?
そうだね。

キケンは止めるでしょ。
そだね。

お父さん、「なんで」の英語は?
WHYだよ。

おどろくって、びっくりする、のことでしょ?
そうだよ。

お父さん、タケちゃんのラーメン屋さん、閉店したの?
そうなんだよ。残念だね。

タケナカさん、体調崩したんですお。
そうなんだ。

疫病神って、なに?
良くないことをひきおこす人だよ。

セイザブロウサン、「ヘーツト」と言ったよ。
そうなんだ。お父さんと同じね。

お父さん、将棋の英語は?
SHOGIだよ。

お父さん、ふきのとう舎は大和だよ。
そうだよね。

お母さん、ケチって、なに?
お金を大事にすることよ。

ぼくはお昼寝しますよ、お母さん。
分かりました。

立派って、なに?
偉いことよ。

オーケストラ、音楽でしょう?
そうね。

必死って、なに?
一生懸命に、だよ。

コウ君、お昼寝したの?
しましたお。
いっぱいしたの?
少ししましたお。

自治医大、栃木でしょ?
え、そうなの?
そうですお。

ショックは、びっくり、でしょう?
そうだね。

ぼく、グリーン牧場好きですお。
グリーン牧場って、どこにあるの?
渋川だお。
コウ君、行ったことあるの?
ありますよ。

ぼく、帰ってから、手をシュッシュしましたお。
お、いいね、いいね。

ぼく、静かにしようね、っていったお。
そうなんだ。静かにしてね。

サクランボは、果物でしょ?
そうだね。
サクランボ、サクランボ、サクランボ

カズエちゃん、お母さん痛いの?
痛くないけど、歩けないのよ。

花盛りは?
お花がいっぱい咲いている、よ。

酸は二酸化酸素の酸でしょ?
そうだね。

お母さん、マナーモードって、なに?
ちょっと待ってね、いまやってあげるよ。ほら呼び出し音がしないでしょう?
分かりましたあ。もういいですよ。

パは、ハと○だよね?
そうだね。

お腹いっぱい、の英語は?
アイアムフル、かな。
フルフルフル。

神様って、なに?
上の方で、コウ君を見守っているひとだよ。

お歳暮って、なに?
「ありがとう」のしるしよ。

お母さん、日本一って、なに?
日本で一番、よ。

人身事故で、電車遅くなってしまうね?
そうだね。

平凡て、なに?
ふつうの生活よ。

お父さん、今日ビデオとってね。
分かりましたあ。
そう言ってるよ、お母さん。
良かったね。

お父さん、「裏切者」って言っちゃ、ダメでしょう?
それはいわないほうがいいね。コウ君言ったの?
いいませんお。

お母さん、今日の晩御飯は、すき焼きにしてください。
え、すき焼きですか? わっかりましたあ。

強敵って、なに?
強い敵だよ。

ワイドドアって、たくさんの人が利用できるようにしてあるんでしょう?
そうだね。
ドアを広くしてあります。
そうだね。

キシモト先生の前は、ミズカワ先生ですお。
コウ君の親知らずを4本いっぺんに抜いた聖ヨセフの先生ね。コウ君、頑張ったね。
ぼく、頑張りましたお。

ゲスト、お客でしょう?
そうだよ。

ボク、マリオ好きだったよ。
そう。
こんど、マリオやりたいですお。
そう。じゃやろうね。
いやですお。

ラッシュアワーって、なに?
電車が込むときよ

お父さん、いったんて、なに?
一時だよ

開始って、なに?
はじめることよ。

レーダーって、なに?
それでもっていろいろ探すんだよ。

とうみょうさんがいったんだよ「プロになるって」
なんの話?
「盤上の向日葵」だお。
そうなんだ。

ヒョウタン、食べられる?
食べられるよ。

コウ君、お父さんのズボンのポケットに入ってた3千円知りませんか?
お母さんのお財布に入れましたお。
そうなんだ。

オクラの葉っぱは、ワタに似てるよねえ。
そうなの?
似てますよ。
そうなんだ。

ワカバ会館、工事したの?
そうよ。

怒りやすいって、なに?
怒りっぽいということよ。

お母さん、せせらぎって、なに?
サラサラ流れることよ。

コウ君、いたいの? かゆいの?
かゆいんですお。
薬つけてあげようか?
つけますお。

お父さん、頂きますの英語は?
ちょっと待って。いま調べてみるからね。アイル・ハブ・イットだよ。

また来てね、って、なに?
また来てね、また来てね、よ。

お母さん、経験って、なに?
いろいろやったことよ。

お父さん、聞くなって、聞かないで、のことでしょ?
そうだよ。

お母さん、一丁目て、なに?
一丁目、二丁目、三丁目。

お母さん、これ、なに?
さつきよ。
これは?
どくだみよ。
どこでとったの?
うちのお庭よ。
ぼく、さつきとどくだみ、好きですお。
お母さんも。

 

 

 

秋のrefuse

 

工藤冬里

 
 

自由とは選べること
不自由とは選ぶこと
正確な情報を前もって知らされた状態で選べることが必要
春とは色が変わること
秋とは見え方が変わること
同じ色が黒枠で埋葬されることが必要
強さとは侮辱を喜ぶこと
弱さを知ることは強さの入り口に立つこと
自由な秋の強さとは強みをごみにすること

 

 

 

#poetry #rock musician