michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

君は花じゃない、君は、花なんだ。 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 33     Sanmu Chan へ

さとう三千魚

 
 

届くのか

言葉
届くのか

その言葉

届くのか
亡き者たちに届くのか

言葉 鉄格子の中に届くのか
言葉 鉄格子の中に届くのか

言葉 鉄格子の向こうの世界に届くのか
言葉 鉄格子の向こうの世界に届くのか

挽歌は、裂けて口を開けた隙間に埋め込まれた。 **
挽歌は、裂けて口を開けた隙間に埋め込まれた。 **

Sanmu!

君は花じゃない、君は、花なんだ。 *
君は花じゃない、君は、花なんだ。 *
君は花じゃない、君は、花なんだ。 *
君は花じゃない、君は、花なんだ。 *

Sanmu!

花なんだ。 *
紫の薔薇だ!

冬の夜に亡き者たちの薪を抱いている

 

 
***memo.

2023年2月8日(水)、自宅で書きました。
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った33個めの詩です。

タイトル ”さとうさんに任せます”
好きな花 ”薔薇、紫色の”

 

* 香港の詩人 陳式森の詩「更日子的艱難來臨」より引用しました。
* 日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 "你不是花,你是,花。"
  深深地,如此的深
  如雀喉,如烏雲。

 「君は花じゃない、君は、花なんだ。」
  深々と、こんなにも奥深くに
  雀の喉のように、真っ黒な雲のように。

更日子的艱難來臨
https://beachwind-lib.net/?p=34710

** 香港の詩人 陳式森の詩「碎斧」より引用しました。
** 日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

  輓歌,填入裂開的空缺。
  挽歌は、裂けて口を開けた隙間に埋め込まれた。

碎斧
https://beachwind-lib.net/?p=35052

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ようやく今日

 

駿河昌樹

 
 

ゆうぐれ
赤坂や
芝のあたりの
ビル群が
とりわけ美しかった

空がゆうやけに染まっているのも
美しかったが
ビルひとつひとつの
ひとつひとつの
窓に
あかりが灯って
ちいさなダイヤを
いっぱい
散りばめているようなのが
美しいのだった

毎晩のように
このゆうぐれを見てきて
美しさのひみつが
ようやく
今日
わかった

こんなことが
いっぱいあるのだ

 

 

 

代車の顔をした

 

工藤冬里

 
 

描くべきではない代車の中で描いている
ノイズ・エッセイの次元で塗る色のあれこれが
見えていない風景に置かれると
遺失は突然顕になる
鋭敏な、冴えた状態sober(2tim4:5)を保ちなさい
助言されると「津軽」の
「酒飲みというものは、酒を飲んでいない時にはひどく厳粛な顔をしているものである。」
を思い出す
(嘘は寒いぜ濁らない)
書くべきではない代車の中で開戦前夜の黒い溝(ドブ)の上澄みのように透明だ
松前には良い公園が3つあり、みな水系を意識して造られている
その代わりに住民は癌で死ぬ
そうやって代車でオウテカを流しながら
ノイズ・エッセイ的なものとは何か、を考えていた
それはいたたまれなさとの分離が完了した公園の
草木も鯉も鴨も見えていない形態である
(DJ代車)
その限定された晴れがましさはシェア・カーに慣れた東京の人には伝わりにくいだろうな、と思う

 

 

 

#poetry #rock musician

袖師 横砂 庵原 覆盆子山 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 32     musashi 様へ

さとう三千魚

 
 

午後の広場に
ミャンマーの人

叫んでいた

国軍の
残虐を

叫んでいた

日が傾き
青年が

声を
掛けてくれた

住む
地名を教えてくれた

袖師

横砂
庵原

覆盆子山 *

木苺や
くちなしのしろい

花の咲く

山が
あったのだろう

草の下に
母がいる

 

 

***memo.

2023年2月5日(日)、静岡駅北口地下広場で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第九回で作った32個めの詩です。

仲野麻紀さんの”OPEN RADIO”をリピートしてJBLの小さなスピーカーで鳴らしていました。

タイトル ”袖師 横砂 庵原 覆盆子山”
好きな花 ”くちなし”

* 覆盆子山:いちごやま

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

家族の肖像~親子の対話 その64

 

佐々木 眞

 
 

 

わたしはミヤモトノブコです。
こんにちは、ミヤモトノブコさん。
ミヤモトノブコ、ミヤモトノブコ、ミヤモトノブコ。

お母さん、円安ってなに?
円が安くなることよ。
エンヤス、エンヤス、エンヤス。

お父さん、笑ったらウエハラミツキは?
「コウ君、アホ笑いしないでね」っていうよ。

あした、「首都圏ネットワーク」見ます、お母さん。
はい、見てくださいね。

ウクライナ、外国?
そうだよ。

ぼく、充電しましたよーだ。
そうなんだ。
きょねん、おばあちゃんちで個展作ったね。
そうだね。

むかし「あおぞら園」で、納涼祭やってたよね。
やってたねえ。

ぼく、ふきのとう舎、好きですお。
そうですか。

お父さん、いま、どこですか?
ヨコスカだよ。横須賀のどこだか、当ててご覧?
キシモトシカ!
ぴんぽーん!

お父さん、きょうイシハラサトミ録画してくださいね。
分かりましたあ。バッチリ録画するよ。

去る、居なくなることでしょう?
そうだよ。

お母さん、あしたトマトシチューとお、キノコ語ご飯とお、ピーマンの肉詰めにしてくださいね。
分かりましたあ。

お父さん、出かけるの英語は?
Go outだよ。
Go out、 Go out、 Go out!

お母さん、ぼく、ずっと耳ふさいじゃったんですお。
そうだったの。
そうなんですお。

あ、は、アクザワさんの、あ、でしょう?
そうだね。

ミワさん、体調崩しちゃったんでしょう?
そうねえ、崩しちゃったんだよね。

首都圏ネットワーク、好きだよ。
そうなんだ。
ウエハラミツキ、見ますよお。
見ましょうね。

「ガンバロウ、エイエイオオ!」ってなに?
頑張ろうね、のことよ。

お母さん、イノウエユウキ印刷してね。
イノウエユウキシって?
首都圏ネットワークだよ。

お母さん、なんで「舞いあがれ!」飛んじゃったの?北朝鮮がミサイル打ち上げたから?
でそうよ。
舞いあがれ! 舞いあがれ! 舞いあがれ!

お母さん、平和って、なに?
みんながしあわせに暮せることよ。

コウといろんなとこへ行ったね。あのときコウ君と会えたね。あれどこだっけ。
相模原で。
そうだったねえ。

コウ君といろんなことあったね。コウくんのお陰で楽しい人生だった。ありがとう!

お母さん、タイムアウトは?
時間切れよ。

わたしバッファローマンです。
こんにちは、バッファローマンさん。

「コウさんダメ」って、いわれちゃったのよ。
誰に?
スギウラさんだよ。
いつ?
むかし。

お父さん、イシハラサトミ録画してね。
分かりましたあ。

フィルムは、写真撮るときでしょう?
そうだね。

ご先祖さまって、なに?
おじいいちゃん、おばあちゃん、そのもっと前のおじいちゃん、おばあちゃんたちのことよ。

いま福原遥、どんなお仕事してる?
いま空を飛んでいるよ。
ぼく「舞いあがれ!」好きですお。
お父さんも。

お父さん、お母さんは?
さて問題です。お母さんはどこへ行ったでしょう?
スイミング!
ピンポン!

お父さん、お母さんどこ行ったの?
さて、どこへ行ったでしょう?
何がつくもの?
サだよ。
サ、サ、サ…
サカイ内科だよ。

ぼく、アヤベからクンダ行きましたお。ハス咲いてたよ。
クンダって?
クリの栗とたんぼの田だお。
海水浴だね。いつ行ったの?
小学6年のとき。

クンダ、誰と行ったの?
お父さんと、お母さんと、ケン君と、ナホちゃんと、ミワさんと、ヒロシさんと。
そうかあ。栗田、きれいな海だったわね。

マコトさん、お正月は「明けましておめでとうございます」でしょう?
そうだね。

感じるって、思うこと?
そうだね。

ぼくはホウコクジ好きですお。
そうなの。
ぼくはホウコクジ行きたいですお。
そうですか。

行方不明って、なに?
どこへ行ったか分からなくことよ。

あした図書館行ってえ、たらば書房行ってえ、セイユーいきますお。
分かりましたあ。

携るって、なに?
持っていくことよ。

大変申し訳ございませんでした、って、なに?
済みませんでしたね、よ

お母さん、これなあに?
これはねえ、トースターよ?
トースターって、なに?
パ、パン焼きよ。

お母さん、このトースター、どうしたの?
ミワさんが亡くなって頂いたのよ。
ミワさんの香典返しでもらったのよ。

コウ君、お母さん年取って、もういろいろ出来なくなったわ。
ぼく、助けます! 助けますお!
コウ君が助けてくれるの、ありがとう!

お父さん、「ツれる」は車にシンニョウですよ。
え? ツれる?
ツれるのツは、連絡帳の連ですよ。
連れる、かあ。そう、そうだったねえ。

お母さん、笑って。
笑ってますよ、ハハハハ。

ぼく、オゾウニ食べますよ。
食べてね。