迷い路

 

芦田みゆき

 
 

 

 

 


<ここ>を離れたくて
バスに飛び乗る

降り立ったのは

柔らかな/粗い粒子に満ちた/時折り光が射す/
森ではない/コンクリートではない/
あなたではない人人に満ちた街だ

 

 

 

 

すれ違いざまに垣間見た人人の姿は
距離とともに小さな記憶となる
そして跡形もなく散っていく

その繰り返しが心地よくて
幾度も細い道を曲がってみる

風が吹いている
名前をもたない人の笑顔が
通りすぎていく

 

 

 

森のはずれ/侵入者

 

芦田みゆき

 
 

その森は
とても深く
幾度、訪れても、森の内部への路を
みつけることができない
あたしはただ、揺れながら
歩きつづける

その日、侵入者は
森の内部から
ゴウゴウと音をたてて過ぎていった
あたしはぐらりと傾ぎ
闇を振りかえる

無数の虫の声が聴こえる