For one thing I’m busy; for another I haven’t the money.
一つには忙しいし、また一つにはお金もない。 *

 

さとう三千魚

 
 

morning

see off a woman going out
see off with Moco

watering plants
watering it with a hose hugging Moco

then
breakfast

rice, miso soup, vegetable salad, natto, fried egg
with pickles

sometimes, mentaiko
sometimes, bake salmon

miso soup is made from dashi stock
there are lots of ingredients

heaps of vegetable salad

then
dry the laundry on the balcony

on the sofa
sleep

sleep with Moco

I feel like it’s falling to the bottom
I accept the feeling of falling to the bottom of the universe

body and mind
and money

they are empty

For one thing I’m busy; for another I haven’t the money *

 

 

女が出掛けるのを見送る
モコと見送る

草木に水をやる
モコを抱いてホースで水をやる

それから
朝食

ごはんと味噌汁と野菜サラダと納豆と目玉焼きと
漬物と

たまに明太子
たまに鮭を焼く

味噌汁は出汁から作る
具沢山です

野菜サラダも山盛りです

それから
ベランダで洗濯物を干して

ソファーで
眠る

モコと眠る

底に落ちてゆく感じかな
宇宙の底に落ちてゆく感じを受けるのかな

身も心も
お金も

スッカラカンです

一つには忙しいし、また一つにはお金もない *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

Mort sans cadre

 

工藤冬里

 
 

死んだのかなあ
嫌だなあ
夜にだって遠近はある
手前が一番暗い
透徹してしまうと死ぬ
ふたりだけになると死ぬ
ふたりだけになって死ぬ
月がきいろくふとっても死ぬ
星がテニスボールくらいにふとっても死ぬ
どんなにきれいでも死ぬ
ぶっしつに帰る
野晒しのまま朽ちていく
アザラシも野晒しに!
ただ死ぬ前は写真はきたなくなる
なぜだかはわからない
見えないものしか愛せないからかもしれない

いや死んでないよ
アーカンソーArkansasはアカンそうなので
イリノイIllinoisで割のいい仕事を探す
アイオワIowaで愛終わり
テキサスTexasで敵刺す
要するに
旅に出たんだ
写真が1947のフルトヴェングラーみたいに
詰まっていてきれいだ
フレームのない死は
もうすぐだとしても

 

 

 

#poetry #rock musician

二人の刺客

 

佐々木 眞

 
 

西暦2020年8月29日、
長剣を呑んだカムイは、帝都永田町の首相官邸に殺到したが、地団太を踏んで悔しがった。
ちょうどその日のその時、
諸国万民の敵、阿閉王が急病で引退してしまったからだ。

 
そのまま熊野にとんぼ返りしたカムイは、
遥か彼方の絶壁から一気呵成に落下する那智の滝の前に立つと、
いきなり長刀を引きぬいて一閃、二閃、三閃。

 
空0ひとーつ斬っては、特定機密保護法
空0ふたーつ斬っては、内閣人事局新設
空0みっつ斬っては、集団的自衛権行使容認

 
すると水平に切断された滝の水が、
飛沫滴る透明な立方体になって、はなだ色の大空を雁のように列をなし、
熊野本宮から奈良生駒、信貴山の方へ飛んで行くのだった。

 
ちょうどその頃、「あしたのジョー」こと矢吹丈も、
目には見えない真っ白なグローブを胸に、永田町の首相官邸に殺到したが、
時すでに遅く、奴隷の王、阿閉王は引退してしまっていた。

 
地団太踏みながらジョーが向かったのは、練馬区の「としまえん」だった。
古式豊かなメリーゴーランド「カルーセル・エルドラド」の前に立つと、
ジョーは次々に回転木馬を切り離し、鋭いジャブを一閃、二閃、三閃。

 
空0ひとーつ撃っては、安全保障関連法
空0ふたーつ撃っては、森友、加計、桜見る会
空0みっつ撃っては、共謀罪

 
見よ! 
切り離された回転木馬の数々が、色鮮やかな天馬となって帝都の夜空に立ち上り、
遥か銀河系の彼方へと翔んでいく。

 
するとどこかから
「悪をなす者に怒りを燃やすな。
 悪しき者のことを妬むな。
 悪に未来はない。
 悪しき音の灯は消える。」*

 
という声が、ジョーとカムイの耳に聞こえてきたのであった。

 

空白空白空白空白空白*「箴言」第24章19節(2018年版日本聖書協会共同訳)

 

 

 

 

Keep away from the fire.
火から離れていなさい。 *

 

さとう三千魚

 
 

morning

in front of the altar
light a candle

light incense stick

ignite the gas stove and make dashi stock over low heat
make miso soup

beside
the naked fire

the fire would have been warm

the fire would have been hot

the sun too

away from the sun
receive radiation

receive heat

even if I get stuck
receive

receive the sun’s radiation

Keep away from the fire *

 

 

仏壇の前で
ロウソクを灯し

線香に火をつける

ガスコンロに点火し弱火で出汁を作る
味噌汁を作る

裸の

火のそばに
いる

あたたかいのだったろう
火は

熱いのだったろう

太陽からも

離れていて
放射を受ける

熱を受ける

体が動かなくなっても
受ける

太陽の放射を受ける

火から離れていなさい *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

無下

 

工藤冬里

 
 

カミキリムシを集める山で
カマキリとゴキブリは親戚と知ったが
失くしたものに感傷的価値は無く
無くならないトラウマを即座にラップするだけ
タラコスパゲッティで太っている
走って行って抱きしめようとする
よたよたとゴキブリ
時間がかかる
陽性は
和田かマリ
ひとにわだかまり
歩く力がない
彼は裁かれないためにあらゆることをした

隠棲要請
院生養成
妖精幼生
Yo! say insane

ズポン暑い
無上と最高の違いは上がないかあるか
上は愛するよう期待する権利を持っている
下は苦しみを説明できない
最高の喜び方を教えよう
反対方向に向かっていたゴキブリの顎に鍵を引っ掛けて
振り向かせた
無上の喜びと無下の苦しみは
このような関係であった

 

 

 

#poetry #rock musician

戦争と平和

 

サフジカサク

 
 

こんな僕でも(こんな僕というものを知る人はほとんどいないのでしょうが)戦争や平和について考えることがあります。
8月だからでしょうか。

当然、戦争の経験などありません。
国と国の戦争ですね。
人が死ぬのは良くない。戦争に限らずですが。僕は人々の自分の命に対して望まない死を望んでいない。(望む死は好き好きです)

国と国の戦争を縮小解釈していくと、人と人の関係になると思います。
「あいつがきらい」
「その考え方は違う」
「こうしろ、ああしろ」
「そこをどけ」
「それをよこせ」
突き詰めるとそういうことですよね。戦争はいけないと分かっているけれど、日常の中でこういう考えを消すのは難しいものです。

76億人の頭からそれが消えれば戦争はなくなるのでしょう。(他にもいろいろなくなりそうですが)

平和というのは良く戦争の対としてかたられますが、戦争がないから平和というものでもないでしょう。誰かの平和は誰かの非平和。実に難しいものです。

まぁくだくだ書きましたが、戦争は無くなればいいです。
「武器よさらば」と言える日が来るといいですね。

僕はお先に言わせてもらいます。「武器よさらば。」

 

 

 

透明な私

 

村岡由梨

 
 

透析を終えた全盲のおじいさんの隣に座って、目を閉じてみる。
世界は真っ暗闇になった。
暗闇に沈んで、世界が揺れているのを知る。
その振動に、少し酔う。
暗闇の中、私は光を探した。
光を。

ある晴れた日、
下北沢のモバイルショップの順番待ちで
些か居心地が悪くなった私は、
スマホで空を撮っていた。
雲の隙間に瞬く光の美しさを、覚えておきたかった。
楽しそうに行き交う人たちの中にいて、
私は孤独で
どこまで行っても孤独で
無意味な存在だった。
ぼんやり自分の両手を見つめても
透明で、何も見えなかった。

 

1.「水色のアイシャドウの女」(錯綜する時間の中で)

 
あの日、意識を失った私が目を覚まし、光を感じたのは
病室のベッドの上だった。

自分の部屋に積み重なった
白い箱と黒い箱の一部が消えて
残りが宙に浮き、
「現実」が足元から瓦解した恐怖に耐えられず、
私は、大量服薬したのだった。

運び込まれた病院で、一人の看護師に出会った。
むせ返るように化粧が濃く、異様に体の小さい女だった。

車椅子に乗せられ、手足の自由がきかない私に、
女は分厚い本を渡し、それを読むように、と言った。
私はそれを読み、女にその内容を話そうとした。
すると、女は言った。
「そんな本、無いわよ」

そんなことあるはずがない。
たった今、あなたが私に渡した本だ。
喉がしまるような感じがして声が出ない。
「違う」「違う」と喉を振り絞って声を出そうとする私を見て、
女は必死に笑いを堪えて
「しっかりしてくださいよぉ」
と嘲った。

次に女は、私に紙を渡し、何か字を書くように、と言った。
私はそれに応じた。
けれど、次の瞬間、書いたはずの文字が、
糸がほどけるように消えてしまった。
私はそれを女に訴えた。
女は言った。
「どこに紙なんかあるのよ」
確かに紙は無くなっていて、
私は泣きながら「違う」「違う」と訴えた。

私は車椅子から崩れ落ち、必死でその部屋から逃げようと地面を這った。
しかし、その女は先回りをし、
出口に立ちふさがり、
苛立ちと嘲笑を含んだ声でこう言った。
「ねえ、いい加減にしてくださいよぉ」

ねえ、どこに野々歩さんなんているのよ。
どこに眠ちゃんなんているのよ。
どこに花ちゃんなんているのよ。
みんな、本当は、いないのよ。
あなたも、本当はいないのよ。

野々歩さん、白黒の部屋のドアを開けないで。

不吉な鳴き声をあげて、
足元の金網に細い足を絡め、
グロテスクに体をねじって死んでしまった、私の小鳥。
グロテスクに体をねじり、奇妙に歩行する眠。
カッターで真一文字に目を切り裂かれて、悲鳴をあげる花。
あんなに慈しんできたものたちに、戦慄する私。

自分のドッペルゲンガーを見た者は死ぬ、と言う。
私が再び私と遭遇した時、私は死ぬのだと思う。

 

2.「診察室」(2009年2月)

 
まだ3歳だった眠の手を引いた私と、
まだ幼い花を抱っこひもで抱いた野々歩さんが
診察室に初めて入ったのは、
2009年2月のことだった。

先生は言った。
「あなたたち家族の『これから』の青写真を頭に思い描いてください。
それに近付けるよう、これから色々と始めて行かなければならないんです。」

先生にそう言われて、私は、未来の私たちの家族写真を想像した。
そこには、美しく成長した眠と花がいて、
中年になっても相変わらずな野々歩さんがいた。
でも、そこに私の姿が無かった。
「私だけいない。透明で、何も見えません。」
激しく泣く私を、小さな眠が心配そうに見上げて言った。
「ママ、だいじょうぶ?」

腰から下が、崩れ落ちるような恋愛をして愛し合って
娘の眠を身ごもった。
壊れかけの小さな冷蔵庫。
小さなテーブル。
不揃いの食器。
ままごとのような生活。
そして、次女の花も生まれて、
私たちは「家族」になった。

時折、美しい夢を見る。
娘たちが、黄緑色の精液の草原で寝転びながら、
透明な私の膣から伸びる白黒の臍帯で
あやとりをして遊んでいる夢。

時折、幸せな夢を見る。
小さな娘たちが、
「コンブにする?おつけものにする?」なんて言いながら、
パパのために大きなおにぎりをこしらえている夢。

時折、怖い夢に追いかけられる。
ゆりはどこだ!ころしてやる!
おとうさんが、わたしをさがしてる。
わたしは、いきをひそめて、かくれてる。
みんなが、わたしをわるいにんげんだっておこってる。

おまえはわるいにんげんだ。
おまえはうそつきにんげんだ。

おまえは おまえは おまえは
おまえは、だれだ?
お前は、誰だ?
私は、誰だ?
私は誰。
わたしは わたしは わたしは

わたしは

 

 

「ママがそんなに苦しくて死んじゃいたいなら、死んじゃってもいいんだよ。
すごく悲しいけど、ママの人生はママのものだから。」
まだ幼かった娘が、優しく諭すように言ってくれたことがあった。
こんなことを言わせてしまった自分が情けなくて許せなくて涙が溢れた。
私には、辛くなったり悲しくなったりする資格なんか、ない。けれど
泣いている私を抱きしめて、あなたは言う。
「大丈夫。大丈夫だよ。」

 

全盲のおじいさんの隣に座って、目を閉じた私。
世界は真っ暗闇になった。
この次、目を開ける時、世界はどんな風に変わっているだろう。

今度は私が、泣いているあなたを抱きしめる。
抱きしめて、背中をさすって、そして言う。
大丈夫。きっと大丈夫だよ、と。

 

 

 

蝉を詰める

 

正山千夏

 
 

アスファルトの間から
のびる草が
あまりに鋭く空を突き上げる
月影

短い夏にさようなら
道に蝉たちが転がる
あたしが蹴飛ばす
慟哭

いくつものあいた穴に
ひとつひとつ蝉を詰める
まだ熱いアスファルトに
接吻

土砂降りの雨が
流れ込む
いつか押し開けて
薄緑色の羽を広げますように

まっすぐと天にむかって
それはすっくと立っていた
もうないてはいなかった
羽もふるえていなかった

アスファルトの間から
のびる草が
あまりに鋭く空を突き上げる
跳躍

発芽する種子
もしくは時限爆弾
朝になればまた
灼熱の太陽に眩んでしまうから

いくつものあいた穴に
ひとつひとつ蝉を詰める
それは無限の可能性を秘めた
抱擁

 

 

 

He takes after his mother’s family.
彼は母方の一族に似ている。 *

 

さとう三千魚

 
 

evening

took a walk with Moco

On the roadside
Marvel of peru Yellow flowers were blooming

On top of a pallet in a plastic factory warehouse
There was a stray cat

The days got shorter

Already
It was dark

In the end my mother was stuck all over her body

From the closed eyelids
She shed one tear

and died

That was her word left behind

He takes after his mother’s family *

 

 

夕方

モコと散歩した

道端に
黄色い白粉花が咲いていた

プラスチック工場の倉庫のパレットの上に
ノラは

いた

日が短くなった

もう
暗かった

わたしの母は最後には体のどこも動かせなくなり

閉じた瞼から
涙をひとつ流して

死んだ

それが遺された言葉だった

彼は母方の一族に似ている *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

フィアンセに死なれて

 

工藤冬里

 
 

市役所職員の健診で十戒がすでに読まれましたが、指で記す死にフィアンとしてのキャラのハードルは高く、「休まなければならない。」と思いました。ラジオ深夜便的な死にフィアンが
鷲の翼に乗せられて
命は震えている
死について本当のことを知って
黄色が光る

 

 

 

#poetry #rock musician