夏(森川義信に)

 

工藤冬里

 
 

いきなりばさばさと
折り重なって始まる
手ざわり
ジーンズからコットンまで
千分の一ミリを見分ける指先の
快楽
有名人に関心を持つと感染するので
あるべきところに置く
zoomの音声を昔のラジオぽくすると
斜面は淋しくない
だが立っているのは難しい
粗い絆創帯を押さえつけようとしても
雑草の土手に憤怒は盛り上がる
池の端は夏がせり上がってきていた
鬱を超えて 
虫達と共に
アニソンのように 
置き去りにされた 
サンドイッチのレイヤーの隙間から左右を睨めつけていた
非望の詩人はビルマで戦死した
香川の観音寺の生家にあるいしぶみの手ざわりが
きっとこの夏だ
一句
土手の百合
勾配故に根に持たず

 

 

 
#poetry #rock musician

modern・近代の

 

Michio Sato

 
 

Tonight

I was listening to Chet Baker’s song

The song “time after time”

Listened repeatedly

 

Even if I say poetry is wind, it doesn’t mean that it’s poetry

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

水面

 

工藤冬里

 
 

水から上に出ている顔の部分は
裏のようでもあり
また泛子(ウキ)のようでもあった
数えれば十一だろうということは分かっていた
家族だからだ
人殺しや出産のものがたりは
水面より下で起こった
そこが表なのかもしれなかった
それでも裏を裏返すのではなく
表を「表返し」たこの水の上で
わたしたちは真理を享受するのだ
善悪を裏返すのではない方法で
わたしたちは呼吸しなければならない

母は四人で
長男は異母と寝ていた
次男と三男は人殺しで
長女はグレていた
そのようにして
排他的階級制度の最下層に居たが
裏を裏返して咲くのは花だけで
表を表返した水の上では
四男の末は王になり
十一番目は総理になった

古いラジオ放送の音質で
百舌がキチキチと啼いて
背の高い女と背の低い女が向き合ってはなしている
十一人の平和な住まい
殺しのない安全な家
ステップファミリーの心休まる平穏な場所で再び生きること
とはいえ雹によってフォロワーの多いアカウントは倒れ
東京は完全に破壊される
全ての水のそばで
椅子からずり落ちてゆく
すっかり変わってしまった水の面が昭和のようだ
裏が表として水の中にあり
表が裏として水の上にある

 

 

 
#poetry #rock musician

ビーツ

 

正山千夏

 
 

君にビーツをあげるんだ
真っ赤な血のしたたるような
ビーツを口うつしで

あなたの歯が赤く染まる
あたしたちはAIでもビッグデータでもない
真っ赤なビーツをかじるふた組のしゃれこうべ

ハートビートを聞いて
真っ赤な血のしたたるような
心臓にツメを立てる

あなたの舌が赤く染まる
あたしたちは愛しあっている
真っ赤なビーツをかじるふた組のしゃれこうべ

 

 

 

spectacle・光景

 

Michio Sato

 
 

Morning

Woke up

Open the window in the room
Sitting on a chair

The swallows are singing

chiki chiki chiki
Singing

I see when I close my eyes

I saw it when i was a kid
Saw during summer vacation

I was watching the sun swaying from the water of a stream

 

I see when I close my eyes

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

獄中で詩を書くということ

 

工藤冬里

 
 

名前を呼ばれるとは死刑執行されるということなので
いつも一瞬飛び上がり
目を閉じて
覚悟する
誰も共にいない
描かれたことのない例外を、或いはその例外が全てであるような囚獄を生きている
成し遂げることが不可能なのであれば
アルシーヴ化も不可能である
これを詩にしてみよう
名前を呼ばれる
とは
死刑執行される
ということなので
いつも
一瞬
飛び上がり
目を閉じて
覚悟する
誰も共にいない
描かれたことのない例外を、
或いはその例外が全てであるような囚獄
を生きている
成し遂げること
が不可能
なのであれば
アルシーヴ化も
不可能
である
まだ詩になっていない
名前を呼ばれるとは死刑執行されることなので
いつも一瞬飛び上がり
目を閉じて
覚悟する
誰も共にいない
描かれたことのない例外
を、或いはその例外が全てであるような囚獄
を生きている
「成し遂げられた!」と言えないので
自分をアルシーヴ化できない
まだ詩になっていない
名前を呼ばれるとは死刑執行されるということなので
いつも一瞬飛び上がり
目を閉じて
覚悟する
誰も共にいない
描かれたことのない例外を、或いはその例外が全てであるような囚獄を生きている
成し遂げることが不可能なのであれば
アルシーヴ化も不可能である
詩にならなくても良い
名前を呼ばれるとは死刑執行されるということなので
いつも一瞬飛び上がり
目を閉じて
覚悟する
誰も共に居ない
描かれたことのない例外を、或いはその例外が全てであるような囚獄を生きている
成し遂げることが不可能だったのであれば
自分のアルシーヴ化は不可能だと分かった
名前を呼ばれたら
わたしは
死刑執行される
わたしは飛び上がり
目を閉じて
覚悟する
あなたが共にいないのは
描かれたことのない例外
その例外が全てであるような囚獄を
わたしは生きている
成し遂げられた、
と言えないわたしは
自分をアルシーヴ化できなかったことを知る

 

 

 
#poetry #rock musician

ambiguity・あいまいさ

 

Michio Sato

 
 

Once

In the snow field
The wind is blowing

The fog flowed through the snow field
The fog flowed and disappeared in the forest

I saw such a scene

Almost
I forgot

In the ambiguity
I saw a certain thing

I felt like that

 

Almost
Still there

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

夜の立体駐車場

 

工藤冬里

 
 

夜啼く鳥の囀りが
立体駐車場に反響し
ブラックバードに似たその高音は
西洋に合わせた管弦の
千切れた胡弓のようだ
浅い夜
あなたのしようとしていることを済ませなさい
と言われて出てきた
モールに人気はなく
非常ボタンを押して歩く
立体駐車場の音響的結構は
ホタルの眠る長い夜を消毒してゆく

十一人は鳥のマスクをして食卓の主人を囲み
2メートル間隔で横坐りしていた
上座は奥の左だったがオットセイ達は気にしてないふりをしていた
みんなシャワーを浴びてるから体はきれいだけど
足はこんな風に洗い合いっこするのよ
先生、オットセイなのでシャワー浴びないし足無いんですけど
と言う俺を見上げて先生は
アガペーなのかアッカンベーなのか
困ったような顔をされて
あと一日で死ぬオットセイ
と仰った
まさかわたしじゃありませんよね
はいお口あーんして
介護士の感染はこのショッピング・モールもガラガラにさせた
俺に這入ったくすりには虹色の未来が入っていた
それで俺は部屋を出て
モールの管理人に知らせに来たのだ
ブラックバードが
啼いてますよと

 

 

 
#poetry #rock musician

possess・所有する

 

Michio Sato

 
 

evening

I took a walk with my dog Moco

On the bank of the river
Lantana flowers were in bloom

Like a nebula
It was in bloom

Can’t possess

No one can possess a nebula

Nebula is slightly bright yellow and pink

 

It was in bloom

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life