ghost apples

 

工藤冬里

 
 

一六日 天寒
どんなに良さそうに見えても欠けたところに穴があり
それは見える軍隊であったり
内向き過ぎのバランスそのものであったり
民俗風習への無批判の迎合であったり
何よりあたしであったりするので
距離を置かなければ同化してしまう
だから白鳥は食べない
自傷はしない
障害があっても食べていけるよ
あたしのように子供を火あぶりにはしてはいけない
あたしのように偏見を持ってはいけない
リベラルであってはいけないんだ
永続する国は米を通しては来ないことを知ってほしい
一七日 天上大風
あたしの考え方や感じ方に合っているから、と言うのは間違っている
それはあたしの感じ方や考え方に合っていない筈だからである
そしてあたしの考え方や感じ方を肯定する必要もある
その上であたしとは異なった考え方や感じ方にあたしを合わせるのである
一八日 ghost apples
洪水前の性欲を地表に満遍なく持ち続けている一派と
洪水後の国務野獣的な当該の仲が相当悪い
口癖が「本当の敵は」であるような
スローガンとしての米帝が遠ざかった内ゲバと同じ結構である
指を落としても目先の力任せの突破
悪よりもスピードを上げて
説明のために指を落とし続ける法廷逃走
あたしの指は何本あるんだ
姿を現したら負け
車から顔を出した地元の不良の男の子たちが「目を逸らしたら負け」と言う
あたしは
空0リンゴの形をした氷

 

 

 

#poetry #rock musician

カタンシカオシ

 

道 ケージ

 
 

パードンパードン もう一回 
カタンシカオシです
か、た、ん、し、か、お、し!
オシシカカタンをひっくり返し
お、し、し、か、か、た、ん!
(リモートと対面のハイブリッド授業)
ちょっと待て なにそのオシ…
お、し、し、か、か、た、ん!

あー! オシは「推し」な 
で、シカカタンはナニ? 擬態語?
シカ🦌カタンと泣いた奥山に道こそなけれ

それが一番ということっす
えっ、ちょと待て
そいつが勝つってことっす
イチ押しということか!
ひゃ、ダサっ

ちょっと待って
まず「勝つ」が気になる 何で勝つなのよ? 
いいとか、好きとかじゃないの?
知りません

次にこの「ん」、否定でしょ。
古文で「ん」は否定じゃないからな!
係結びなら「推しこそ勝たね」
あら、逆意になるね
「推しこそ勝たざらんや」
何言ってんのかわかりません

「シカ」が曲者やな。否定を呼び覚まし、それ以外のものはないことを示す。
「100円しかない」「君しかいない」「やるしかない」

ハライチすかん かまいたち知らん
パンパカパン らむらむらめ

なぜ長いのか? 短縮化でしょ?

使い方が違う!
だいたいもう古いですよ!
何が?
カタンシカが
かたん詩かぁ
やぁオモロイ!

 

 

 

UN stands for United Nations.
UNは国連(United Nations)の略です。 *

 

さとう三千魚

 
 

after
two wars

it was born

United
Nations

so
also called

75 years have passed
still fighting

even if spring comes

competing

for our country
fighting

there are migrants
there are young people who suicide bomb

the plague is widespread

vaccine
compete

in spring
migratory birds return to their hometown

UN stands for United Nations *

 
 

ふたつの戦さの後に

それは
生まれた

団結された
国家たち

そう呼ばれるものも

75年が
すぎて

まだ争っている

春が
来ても

争っている

自国のために
戦っている

流民たちがいる
自爆する若者たちがいる

疫病が蔓延している

ワクチンを
奪い合う

春には
渡り鳥たちが故郷に帰っていく

UNは国連(United Nations)の略です *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

daily beast

 

工藤冬里

 
 

夢の中では突飛なことが起こる
主体の感情はそのままなので
胸が張り裂けそうで苦しい
大体それはオールナイトの三本立てである
そこでは善悪と欲望が錯綜している

現実の細い畦道には彼岸花のリゾームが張り巡らされている
包丁を持って押し掛ける議事堂という隣人を俯瞰し
白鷺は旅立った 
祈りの聞かれるミジンコ型の島へ

テレグラムで詩編二三編を引用するリンウッドは
夢の中にいる
現実を剥がしたプリント基板に
銀杏の葉が半田付けされている

 

 

 

#poetry #rock musician

I have been there scores of times.
私はたびたびそこへ行った事がある。 *

 

さとう三千魚

 
 

when I open the window

under the clear sky
there is the west mountains

there is the ultramarine west mountains

outside the window
the electric wire runs horizontally

always
the sparrows are perched there

even now
one bird

the sparrow is coming

always come a lot
noisy

one sparrow does not ring
looking here

turn the neck
in the sun

there is a forest in front of the ultramarine mountain
will be a forest there

I have been there scores of times *

 
 

窓を
開けると

晴れた空の下に

西の山がいる
群青色の西の山が

いる

窓の外には
電線が水平に渡っていて

いつも
雀たちがとまっている

いまも
ひとり

きている

いつもたくさんきて
やかましいが

ひとりの雀は鳴かない
こちらを見ている

首をまわし
陽を浴びている

群青色の山の手前には
林が

ひろがっているだろう

私はたびたびそこへ行った事がある *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

billboards

 

工藤冬里

 
 

原発事故は一瞬全能の地位に置かれたが鮪を食べるほどには風化させられ、コロナ選挙では善悪の視野の両端を狭められた。
上下と左右を押し付けるそうした策略は悉く失敗し、今はただ脳内の標野のビルボードとなっている。
北が南で勝つことはない
問題は南で勝つことではない
あの三本立ての映画の看板のように
過ぎ去るということだ

 

 

 

#poetry #rock musician

Please take charge of this key.
この鍵をあずかってください。 *

 

さとう三千魚

 
 

this morning too

I woke up

the woman
go down the stairs

sound
I heard

so
I don’t wake up moco

I changed my clothes
I went down the stairs

to the woman
I gave her her lunch, eucommia tea and salad

with moco
I saw the woman go out

when I’m drying my laundry on the balcony

on the bank along the river
I saw an elderly man with a golf club

did he leave the company
does he live with his wife

I saw him throw a stone at the stream’s egret

egret
flew away

was the egret an enemy to men

already
me too

elderly

will not throw stones at birds

because
we are the egret

Please take charge of this key *

 
 

今朝も

目覚めた

女が
階段を降りる

音が
聴こえた

それで
モコを起こさないように

着替えた
階段を降りた

女に
弁当と

杜仲茶とサラダを持たせた

モコと
女を見送った

ベランダで洗濯物を干している時

川沿いの土手に
ゴルフクラブを持った初老の男を見た

男は会社を退めて
妻と暮らしているのだろうか

男が小川の白鷺に石を投げつけるのを見た

白鷺は
飛んでいった

白鷺は男には敵だったのだろうか

もう
わたしも

初老だが

鳥に石は投げないだろう

白鷺こそ
わたしたちだからです

この鍵をあずかってください *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

茄子の夢

 

南 椌椌

 
 


© kuukuu

 

今年の初夢は茄子の夢だった
いちふじ、にたか、さんなすび
まさか、縁起物の夢を見るとは!

まめ蔵厨房でのできごと
2021年最初のやさいカレー
清新比類なき味をたのむよ!

出てきたやさいカレーを見て
椅子から転げ落ちそうになった

黒々とした大きめの茄子が
まるごと一本どどんと
マスター絵付大皿の真ん中に
あたりまえのように鎮座している

この茄子、カットしてないけど
これお客さんに出すつもりなのか

ブルーハーツ/クロマニヨンズの
マーシーTシャツを着て
険しい顔で下向いている厨房チーフ

拳をわなわな震わせて
なにかを必死に堪えている風

43年目に入ったまめ蔵で
こんなことは初めてのこと
さてどう対応したらいいのか
正月休みのあいだに
理不尽な事態が発生したのか

俯いたまま唇を噛んでいた
マーシーTシャツのチーフは
ツッと店の裏に出てしまい
いくら待っても戻ってこない

通路に出て探してみたが
チーフはお帰りになりましたとの声

拳握ってコロナの所為とは言うまいが
客が入ろうとするそのとき
すでにお帰りになられたというのか

2021年の前途が茄子の黒光りで覆われ
あたまは真っ白になって来た
コロナの災厄に茄子一本がかさなって
大丈夫か、まめ蔵!

そのとき、にゃあ
せつ子さんが寝返りを打って
小さくエマちゃん!と呼ぶ声

夢から覚めたというわけだ

42年以上のまめ蔵の歴史で
何本の茄子をカット調理してきたか
1日平均30本として1年で10,800本!
42年で453,600本!

気が遠くなるのも無理はない
そこで気を取り直した

453,600本のうちのたった1本が
まるごと入ってたからって
どうってことじゃないないか
むしろ寿ぐべき椿事じゃないか

夢の中とはいえ
貪り喰ってみればよかった
きっと目からウロコの旨さだったろう

古稀にして学習、学習
お陰様で茄子という野菜について
いろいろ調べることができた
茄子はただものではないということ

インドで有史以前に現れて
西へ向かってペルシャからアラビア半島へ
東へ向かってチベットから中国へ
やがて世界にあまねく広がり
いまでは1000種の茄子が存在するという
トマト、じゃがいも、ピーマン
茄子科の弟子たちだ

日本では奈良時代に栽培されはじめ
江戸の頃には余りに高価になったため
茄子禁止令が発布されたという
茄子には何の罪もありゃしないだろうに

色、形、料理法、さまざまあって
早生真黒茄子、蔓細千成茄子、高月丸茄子、
深雪茄子、奥三河天狗茄子、萩たまげ茄子
十市茄子、黒びかり博多茄子、薩摩白丸茄子
変わったところでは、ありがとなす、ごめんなす

薬用としては鎮静、消炎、解熱作用があり
疫病退散効果はさだかではないが
含有されるコリンやナスニンには
動脈硬化を防ぐ効果があるとされる
なかなかの優れものではないか
薄皮を上手に剥いで禿(かむろ)に貼れば
ウィッグの代わりになるだろう

上州名物茄子の蒲焼きは
浜松の鰻も棒立ちになるほどの
意外性に富んだ絶景的美味とか

盂蘭盆の供えの茄子でつくる牛は
ご先祖さまが牛にのって
ゆっくりお帰りになられますよう
そんな願いや祈りもこめて
選ばれし453,600分の1

2021年丑歳の初夢は
まめ蔵縁起
誇らしい茄子の夢だった

 

*「まめ蔵」は南椌椌が経営する吉祥寺のカレー専門店。1978年10月オープン以来43年目になる。

 

 

 

to the big tech

 

工藤冬里

 
 

世界に参画していることが朝イチで行者ニンニクを開き朝鮮人参の苗をチェックすることであるなら
私は領土紛争の水域に蕎麦の種を播き親切を心掛けるだろう
雑草を土に戻すのは全米ライフル協会の仕事でも全米トラック協会の仕事でもない
これは善と悪の戦いではなく不完全さと不完全さの戦いだからだ
愛国主義で結ばれた人々は萱鼠のように刈り取られるのを待っているイネ科の雑草の穀類を食べなさい
レメクの妻たちよ
「敵は本能寺」とテレビでも吹いているではないか
ポキポキ球根を埋め
玉葱になりたい野蒜の思い出を掘り返し
ラジオから流れる蓄膿気味の歌唱を聞いている
「ペンフレンドの二人の恋は
言葉だけが たのみの綱だね」

 

 

 

#poetry #rock musician

We were wont to meet at that pleasant spot.
私達はあの楽しい場所で会うのが常だった。 *

 

さとう三千魚

 
 

from night to morning
it’s morning

the rain has stopped

the west mountains are under the blue sky

under the blue sky
there are humans

walking

on the asphalt

there are humans and plague
there are humans, plagues and new platforms

from night to morning
it’s morning

frost is falling
it covers the ground

We were wont to meet at that pleasant spot *

 
 

朝に
なる

朝になった

雨は
あがった

西の山は青空の下にある

青空の下に
ヒトが

いる

歩いて
いる

アスファルトを

ヒトと疫病がある
ヒトと疫病と

新しいプラットフォームがある

朝に
なる

朝になった

霜が降りている
地上を白く覆っている

私達はあの楽しい場所で会うのが常だった *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life