世話することが仕事だった

 

工藤冬里

 
 

世話することが仕事だった
世話の必要な羊を世話するために
食べない羊を飼い始めた
給料をもらうことが仕事なのではない
世話することが与えられた仕事だった
飼うことそのものが仕事だった
飼うために飼った
きみがペットを飼っているとしたら
それがきみの仕事なのだ

草むしりは仕事ではない
野菜作りは虚しい労力の浪費であった
地面は石ころだらけで
川の氾濫もなかった
それは草も生えないその達成は今日の労働に似ていた
労働の結果は火花に似ている
着火はするが燃え上がることはない
一二月一六日的空を 心はしていた

 

 

 

#poetry #rock musician

1956と1958の厳然たる違いについて

 

工藤冬里

 
 

デイビー デイビー・クロケット
素敵ないい男
スタートダッシュで出遅れる
三つで熊を倒す
僕は四歳
万世一系の系図を憶える
二つ以上数えられない人たちが国を作る
三つ目は数えられない人たちの
政党
だだっ広い荒野
どこまで行っても離される
僕は四歳で倦怠を知る
デイビー デイービクロケット
真逆のいい男
時間とは熱の不可逆性との闘い
私は自らの体温でなんとかそれを乗り切った

 

 

 

#poetry #rock musician

muted organ

 

工藤冬里

 
 

矢が刺さる
私たちに矢が刺さる
蜂の巣のように口をあんぐり開けている間に
子供たちは飛んで行ってしまうのだ
夫は無口で
娘は勝気
夫は死んで
BUMPの追っかけをやめた娘と
こぞって屋根に上ってしまう
腐った音を食べ続けてレコード屋になるよりはマシか
ダーツに数人プールに数人
マスクしてhangingaround
ミュートして参加する
ミュートして参加するビジネス
ミュートして参加する家族
てにをはのおかしい緑のバス
Ⅰ-Ⅴ-Ⅳの無いクープラン

 

 

 

#poetry #rock musician

雑魚天

 

工藤冬里

 
 

いずれにしても服のまま運び出され
区別することの必要性を教えられながら
服のまま焼かれただろう
一度だけわざと
というのが成立しない世界を教えられながら
アビフ動画もbanされていくのだろう
国々のプラットフォームを述語とする糾弾は前菜に過ぎない
我々の国などは雑魚の中の雑魚、ジャコ天にされたその他大勢なのである

 

 

 

#poetry #rock musician

last great wilderness

 

工藤冬里

 
 

三〇〇万のための水を補聴器で 掬う
泉は一二 、椰子の木が七本あったがそれが何になるだろう
親が死んだとは言わなかった
層が二つあって
どうしようもない荒野まで来ていた
この、死亡欄上の畏怖の念を起こさせる荒野
四〇年で全て入れ替わった
その間、水はずっとあったのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

記憶に残るわんこ

 

工藤冬里

 
 

脳の中で記憶は垂直に沈んでいる
それを現在という
水の少ない球の中で
過去と呼ばれるものが現在と連結しているが
それは現在における過去なのであって
出来事と出来事の間の熱量の差に過ぎない
未来は出来事としての熱量が高い場合はこちらに流れてくる
それを希望と呼ぶ
未来を凝視しなければならない
ねえ、あん時二十歳だったのがもう四十歳だもんねえ
ずっと立ってるわんこがいたねえ
心は水だが脳は電気だ
出来事を繋ぐ橋で瀬戸内海を渡る
フェリーはとうに難波している

 

 

 

#poetry #rock musician

羅紗緬プラごみ焼却子

 

工藤冬里

 
 

環境は二の次だ
それを第一義にしてポシャったのが善意を吸い上げた一〇年代の悪霊の花傘の総括ではなかったか
絞られているのは国家の一点のみである
マグマの坦々緬は汁無し特赤の一点張でゴアの胸は安っぽく光る青い羅紗である
化学的事故や疫病を神にした報いで多国籍軍は繋ぎとしての沈下を予告される
希望だ
私は安全に住むpslm16:9が
七〇人訳では希望を持って生きるact2:26に変わっているが
それがどうした
似たようなものだ
おでんの味は煮ている時ではなく冷める時に染み込むのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

鬼滅の刃

 

工藤冬里

 
 

肩幅のないちぐはぐの後、役者みたいな
奥まって霞んだ目なのでメンタルに影響出た
奥まった緑青の
芒化した枯泡立草の原の向こう
託された最後の一葉の前景を曇らせ
難破する視線
左右に轟音行き交う冬の草刈りの不自然
ホラーの監督は皆馬鹿だ
算盤を覗くと暗黒
偽の情報が左から出て窓を塞いでしまった
どうすれば逃れられるかシンプルに考えよう
出口は全て非常口
こんな顔でいいんだろうか
ある分野に関してはよく知っている
それにしてももう飼ってはいけない
死ぬから

今は近くにしかない
自分が時間
空地が時間
自分は他者に対する回路を適用した概念の反映
人を愛するように自分を愛するように人を愛する
時間は人類が使うためにある
脳はニューロン同士を繋ぐシナプスに残された過去の痕跡の集まり
未来の痕跡が存在しないのは過去のエントロピーが低いから

egg on 唆す
ぴったりのタイミングで
貰った
緊張
小声で
震えながら
消え失せる
繰り返し読む
力が低エントロピーの果てから
逆流する
コロナは治っても肺炎が残って
力の無さの中で
自殺したデリダ
アルツの介護でパニックを発症した
いろんな人と発症した
声をかけて
希望を持って生きる
内から時間が湧き上がる
誰が設計したかは
冷める過程で染み込む
地上の事柄ではなく

 

 

 

#poetry #rock musician

冬の旅

 

工藤冬里

 
 

猫は真剣に聞いているように見える
避難する人たち

深夜、城から城、コンビニからコンビニ
暖を取る時は激辛の化調の液体
エジプトからエジプト、

イタリアでは移動が禁じられた
この町には異様な歯軋りの男とゲーム中異様な笑い声を発する男が居るので深夜喫茶は使えなかった

京都に移住してはいけない
あそこはもうじき草叢になる

城から城、コンビニからコンビニ、
化調から化調、エジプトからエジプト、

 

 

 

#poetry #rock musician

斜体の生活

 

工藤冬里

 
 

一日に何回かシニタイと口を突くのだけれども
録音出来たとしても嘘くさい台詞で
嘘くさいと思われるだろうなと思いながら聞いている
自分は首が痛く
余命もあと僅かである
詩に鯛 肢煮たい 市にタイ
人のセンスの無さを嗤うだけで
半世紀過ぎてしまった
自分はといえば
愛でるものが無くなって
目の前のコーポリーナの壁に貼り付けられたコーポリーナという斜めった字体を見ている
我が生はフォントのイタリック体に若かず
と見栄を切ってみるが
暖房を切った車体は寒さがいや増して咳が出始めるので
斜面を降りて
僕はいつも窓から帰るのである

 

 

 

#poetry #rock musician