ロイヤル・ラブ

 

工藤冬里

 
 

地球がカラフルだと
画像編集しなければ
永遠は存続しなかった
窒素をリサイクルしなければ
怒りの火は消えなかった
混ぜ物だらけの畑を燃やせ
鳥はわたしの枝から去る
影絵の捕食者を家に入れて
舫結びを習った
超絶技巧がぶら下がったまま乾いている
千年間動けないように縛った
一時テムズ川にはウナギしか居なくなったので
イールジェリーはイエローベストのリポビタンDとなったが
テートの口からレッドブルが出て
浄化することにより汚した
宇宙から見なくても美しい地球を
浄化することにより汚した

ロイヤル・ラブ
製薬会社の苗字のように親しい
独楽のように永遠
「目を逸らしたら負け!」と車から呼びかける若者たち
画像編集したら負け。

 

 

 

 

#poetry #rock musician

魂の行き場

 

有田誠司

 
 

自分を見つめ直すと思い出す 
あの懐かしい街並み

直ぐに剥がれる化けの皮 
罪と罰に抱かれた夜

光無き暗闇

地下を徘徊するドブネズミ達

血と肉と魂と
リアルな言葉と その重みを知れ

何処へ行く 誰に届く この言葉

魂の行き場を探して 

 

 

 

ことばをつづけられないというのも

 

駿河昌樹

 
 

そこのコスモスの一群は
秋のあいだじゅう
みごとに
しかも
ずいぶんながいこと
咲きつづけていた

すっかり枯れ切って
それでも
ひとの背よりも高く
立ちつづけているのを見ると
枯れても
じつにみごとな・・・
と思う

みごとな・・・
の後に
なにかことばを
つづけたい気もするが
蛇足にしか
ならないだろう

ことばを
つづけられない
というのも
いいものだと思う

 

 

 

利己的な遺伝子

 

一条美由紀

 
 


6畳の箱に住む住人
ゲームの山は優しく、
震える声は希望なのか
怒号ばかりの画面に、自分は
何者かに変わっていく。
怖さの中に
全てを簡単に単純に
ただ過ごしていく。

 


理想を追うほどに人は追い詰められる
最初は他人を否定し、
次に自分を否定して闇に閉じ込められる
だが、追いかけてきた先にドアはいくつか開かれている

 


半透明の子供が通り過ぎる
背中に落ちた枯れ葉が重い
石畳は過去の匂いを放つ

 

 

 

香箱蟹

 

みわ はるか

 
 

新年あけましておめでとうございます。

このエッセイを書いている今は年末であるので、どんな年始を迎えているのだろうか。

 

年末のとある日の物語。

 

毎年この季節になると香箱蟹を食べに行く。

なんと贅沢なことかと思うけれどまろさん(久しぶりに登場)がどうしても譲らないのである。

なので、この時期前後はうちの小さめの冷蔵庫はもやし、納豆、豆腐といった安価な食材がいつも以上に増える。

飢えをしのいでいる。

キラキラ輝く香箱蟹のために。

 

いつもお邪魔するところは決まっている。

京都で修行をされた店主、京都出身のおかみさん、ご夫婦で経営されている小さな割烹料理屋。

カウンター5席、テーブル席2つの上品な店内。

お手洗いには京都らしい匂い袋が吊るしてあってほっこり。

店内の明かりも暖色系でなんだか落ち着く。

おかみさんはいつもきちんと着物を着こなし忙しそうに店内を行き来する。

料理はもっぱら店主担当で少しギョロっとした目が印象的。

2人とも温厚できさくだ。

料理は言うまでもなくものすごく美味しい。

今回は、サツマイモを焼いてスープ状にしたもの、レンコンの練り物、新鮮な鯖と鰹のお造り、3種類の寿司(しゃりが絶妙な大きさで感動)、牡蠣と山菜の天ぷら、待ちに待った香箱蟹(内子と外子がしっかりとのっていた)、生シラスがふんだんに使われたお茶漬け(生シラスなんて江ノ島以来)、甘すぎないデザート。

本当に素敵な時間だった。

料理好きなまろさんは1つ1つ細かく素材のこと、仕入れ先のこと、調理方法のこと熱心に聞いてたなぁ。

そういえば先日、海辺近くに住む親族から金目鯛と伊勢海老が送られてきた。

わたしだったら調理の仕方も分からずそのまま腐らせていただろう。。。。。

まろさんは余す部分なくきれいにお刺身、寿司、ホイル焼き、椀物、まるでお店のようにやってくれた。

これもYou Tube先生のおかげだけれど、腐らすことなく消費できてよかった。

店主もその写真を見て驚いていたなぁ。

わたしはというと、こんな素敵なもののお返しにはて何が適してるかと悩んだ。

最終的には海の幸の返礼には肉だなと、わたしは食べたことのないような立派な肉を送っておいた。

美味しかったとお礼をもらったが、なにせ食べたことがないので、はぁよかったとしか答えられなかった。

 

1つ残念なことといえば、後から来店したカップルなのか(指輪はしていたような)、夫婦なのか分からないお客のこと。

このお店で一番高いコースを食べていた。

だけど、おそらく医療関係者同士なのだろう、聞こえてくるのは抗生剤がどうとか患者がどうとかそんな話ばかり。

ふと見ると、料理には目もくれずただたんたんと料理を口に運んでいる。

どんだけ丁寧にこのご夫婦が命を吹き込んでくれたメニューであるか知ろうともしてないように見えた。

とっても残念なお二人でした。

どうか、どうか、もっと丁寧に料理と向き合ってくださいませ、お二人さん!

 

ご夫婦には1人息子さんがいる。

中学生のようだが、どうやら今の夢はラーメン屋らしい。

願わくばこのお店の味を引き継いでほしいな。

人生は一度なのでもちろん好きなことをやってほしい。

でもちょっぴり期待してるよ、大事なせがれ様。

そして、わたしは2年半住んだこの街を春には去ることが決まっている。

この味にもう手軽には触れられないことが残念だ。

一緒に引っ越し先に来てくれないかな、そんなの無理か。

 

2月頃はフグのシーズンですから最後にぜひどうぞと、お土産までもらって2021年を締めくくることにした。