悲しみ

 

たいい りょう

 
 

深くうな垂れている
疲れているのか
それとも 悲しみに
慄いているのか

手が顔を覆い
腰を老人のように折り曲げ
深く椅子に沈んでいる

悲しみは癒されようもない傷として
深い淵の中に
心を落としている

いつまでも いつまでも
降り続いてゆく
深雪のように
彼岸へとさらってゆく

 

 

 

オシリス

 

たいい りょう

 
 

天は、彼に呪文をかけた。
彼は、川を下り、新天地を目指した。

どのくらい流されただろう。
気が遠くなるような
長い長い時が過ぎた。

彼はようやく目覚めた。
そして、彼の地に王国を築いた。

「オシリスに幸あれ」と皆が叫んだ。

彼は諸手を挙げて、歓喜した。

 

 

 

コロナ・ウィルス

 

たいい りょう

 
 

どんどん広がってゆく
ウィルスの感染拡大
ウィルスは、けつして死なない
別の人の体内で 生き続ける
彼らも生きるのに必死だ
遺伝子を遺そうとしている
私たちの同じ生命
どちらが勝つか
分からない
戦いは ずつと続いていく

 

 

 

空白

 

たいい りょう

 
 

何もない
何も感じない
心に空白が生まれる

子どものように無邪気に
頭の中で戯れる
意識のエラン・ヴィタルは
未来へと向かって飛躍する

真っ白な時間
その中に無限の広大な空間がある

そして 私は再び 無へと歩み始めた
今日は どこまで辿りつけるのだろう