広瀬 勉
東京・杉並高円寺南。
めざめたら
横に
モコがいた
眠ってた
寝息をたててた
ひとみを閉じてた
マリア・コゾルポヴァの
ソナタを
聴いた
それから
窓を
開けてみた
明け方の紺色の空がいた
小鳥の声がした
小鳥たちの声がした
広場に
虫たちの声も聴こえる
誰かの悪ふざけ
といったふうに
ハンガーが
おおげさな音をたてて揺れた
死んでまだあたらしい人は
親しかった人に会いにいける
というのは
こちら側でも知られていることだけど
これはちょっと
大胆すぎないか?
勘の鈍いぼくのため
とはいえ
そちら側の偉い人に
叱られやしないか心配になる
それに
いくら父親でもさ
とりこみ中ってこともあるんだよ
そこまでのことができるなら
ノックぐらいはできただろうに