魑魅魍魎の華は咲く

 

今井義行

 

 

安息日には「独り」 朝の陽、射さない アパートのなかで
夕、訪れて ぼっと蠢くヒカリはみな 魑魅魍魎
異貌の昆虫が舞っている
異貌の稲光が降ってくる 東京 平井 荒川の這い寄るけはいが
忍び来る デジタル数字、異貌の時刻が灯っている 綺羅綺羅羅 部屋のなかで
異貌の時刻が移っていく 綺羅綺羅羅 部屋の なかで
SNSをみつめながら そこには ことばや画像の
へんげが 在って 想う・・・・・・ 魑魅魍魎の華は咲く

夏から持ってきた 心の なかの 風鈴──
月の満ち欠けの最も細くなった瞼のところで
music from big pink 心のなかの風鈴が初秋にへんげする

右と左の手いっぱいに光りを集め
換算されると それは 初秋の・・・・・・
あなたのソレイユになるのですって
music from big pink それ、「わたし」を発信するお家

ソレイユ(太陽)・・・・ 光りの集合としてわたしが最も
すきなことば

アヴェマリア 南無妙法蓮華経 美醜・・・・・・ 魑魅魍魎

暮らしを ふるふると 歪むような世界には
したくないのに

心が 良いふるえを 求道 してしまいます

「あ」行の人たちがパンを求めて泣いていた
「か」行の人たちがパンを求めて泣いていた
「さ」行の人たちがパンを求めて泣いていた
…………………………………………………………………

わたしは「あ」行の人なんだ でも泣かない

「た」行の人たちが生乳を求めて泣いていた
「な」行の人たちが生乳を求めて泣いていた
「は」行の人たちが生乳を求めて泣いていた
…………………………………………………………………

「ま」行の人たちが草原を求めて泣いていた
「や」行の人たちが草原を求めて泣いていた
「ら」行の人たちが草原を求めて泣いていた
…………………………………………………………………

あかさたなはまやらわ あ、か、さ、た・・

music from big pink いまは 心のなかにある 「銀巴里」
「詩人の魂」という唄は うたわないでほしい

お、まりあ
奇跡を
もたらせたまえよ

唄の途中の
わたしは金魚草

お、まりあ
奇跡を
もたらせたまえよ

カラのペットボトルを ぐしゃぐしゃっと 握りつぶした
カラのペットボトルを ぐしゃぐしゃっと 握りつぶした
あしたは・・・・・・。 資源ごみ の 回収日な もんですから

お、まりあ
奇跡を
もたらせたまえよ

秋の夜空

星のシレーヌは泣いていた

自分には

なまえがあるのに

わたしはどうして

地上にいないの?

歩けないのですか ・・・・・・・・・・・・?

シレーヌ ──
悲観するな

貴方は秋の夜空で

皆をつつむ

唯一の月あかりなんだよ

地上には無情の

現状が あって

それを照らしているのが

シレーヌ 君なのだ──

地球上で何万人もの

人が亡くなろうとも

白骨を、「美」に変えるのが

シレーヌ 君の天職なんだ

泣かせ商売は いつも 笑っている

朧月夜に つめたく
なされた 約束は 反故になり
冷凍みかんが 硬く
わたしより おとなに なっている

魑魅魍魎の 華は咲く

………………………………………………

いまは こころのなかにある 「銀巴里」

銀座の道幅は広く その片隅にあったシャンソン喫茶

わたしは 美輪を聴きたくて

夢精をしたことがない うすかわの服を脱がせる
早稲みかん と して

銀座の道幅は広く その片隅にあったシャンソン喫茶

「美輪」を聴きたく、 「美輪」を聴きたく、
《魑魅魍魎の華は咲く》《魑魅魍魎の華ヒラク》《魑魅魍魎の華は咲く》

「美輪」は その頃 いまの わたしと 同じ位の 歳で
その喉は まさに 最高の 実りを むかえて いた──

その宵には泪橋に佇んでいた “お客さまは神様です”もの

内臓が泣いているのがわかるので腹を両手で押さえていた

ジングルベル ジングルベル

身体を無理やり 聖夜に変えた

お菓子が まどれーぬ
なんて名をつけられて
おしゃれ するなんて
──と、腹かかえる友
ばっかじゃねーの !!

画面の女に「いつかまた生まれるとしたら何が良い」と訊いたら

すぐさまに ≪平凡≫と言った

女の左目になみだがふくらんでいるのかと思ったら

それはカーソルの穂先だった・・・・・・・・魑魅魍魎の華ヒラク

厚い外皮から齧っていくと苦味がまざり

冷凍みかんが わたしよりおとなになっている

(Good Vibrations)

さえざえとした 抱擁をしていた

数時間。 右腕一杯に 天の川のような 青紫が

ふつふつと出ていた 濃い青紫だ 魑魅魍魎の華ヒラク

下町の秋空にあがった 青紫の花火のようだ

挨拶と挨拶は美しい けれど
そこには 熱情が欠けている

ばっかじゃねーの !!

すずをふるようにして元気に声音をだしたいこころです

わたしは 実家のひきだしにわたし宛の遺言状が入って
いるのを 知っています
万年筆が 母の 形見と なるでしょう

安息日には「独り」 朝の陽、射さない アパートのなかで
夕、訪れて ぼっと蠢くヒカリはみな 魑魅魍魎
異貌の昆虫が舞っている
異貌の稲光が降ってくる 東京 平井 荒川の這い寄るけはいが忍び来る デジタル数字、異貌の時刻が灯っている 綺羅綺羅羅 部屋のなかで
異貌の時刻が移っていく 綺羅綺羅羅 部屋のなかで
異貌の時刻が移っていく 部屋の 畳の うえに──

カラのペットボトルを ぐしゃぐしゃっと 踏みつぶした
カラのペットボトルを ぐしゃぐしゃっと 踏みつぶした
あしたは・・・・・・。 資源ごみの 回収日な もんですから

 

 

 

東京タワーが排泄物になっちゃった

 

爽生ハム

 

 

壊したかも、橙の電波で。朝と夜の気温差に穴をあけようとする。なんて楽な作業なのだろうか。私は何もしない。考えない。
帰り道にいても、足りない気がする。もっと帰りたくなる、東京の大きい国道を歩く姿などはもっと、危険とかに、さらわれればいいのに。なんだお化けか、人か、よくわからないな。夜の国道でトラックにひかれるのはどう。ネオンはどう。静まりかえったすれ違い。エッチしようよ。こういう幸せはなかった。言葉なんて人前でちゃんと話せないから。体で人前を満たそう。徒歩二分で朝食がいただける場所に着くまでに、首を締めた跡が消えてる状態にしたいから、今、漢方を飲んどくよ私は。首が街に晒される。穴をあける。落書きで交わす署名がとおる日常。