広瀬 勉
愛知・名古屋守山。
「お母さん、ぼく、さいたま市好きですお」
「そう、それは良かったね」
「さいたま市は、浦和、大宮、与野市からできたんだよ」
「そうなの?よく知ってるね」
「お父さん、京王線、京浜東北線に似ていたよ」
「へえ、そうだった」
「そうですよ」
「お父さん、「再び」は再放送の再でしょ?」
「そうだよ」
「お父さん、無理しちゃだめでしょ」
「そうだよ」
「お父さん、無理の無って無いの無でしょ?」
「そうだよ」
「僕、無理しなかったよ」
「そうかい」
「無理よ、無理よ、無理よ」
「お父さん、小田急の回数券買った?」
「買ったよ。今日藤沢まで行って11枚買ってきたよ」
「wwwwww」
「お父さん、みなさんの英語は?」
「レディーズ・アンド・ジェントルメンだよ」
「みなさん、みなさん」
「おとうさん大弱りってなに?」
「とても困ってしまうことだよ」
「大弱り、大弱り」
「お母さん、コレステロールてなに?」
「血液の中のあぶらのことよ」
「コレステロール、コレステロール」
「お父さん、ちょっと待ってねの英語は?」
「ウエイト・ア・モーメントだよ」
「ちょっと待ってね」
「ぼく、明日ふきのとう舎から帰ってきますよ! 帰ってきますよ!」
「耕君、ほんとうはファミリーナ宮下行きたくないの?」
「行きたくないお」
「ぼく「トイレの紙そんなに使うな」って言われちゃった」
「そうなんだ」
「「耕さんダメ」っていわれちゃったの」
「それでファミリーナ行かないの?」
「そうだお」
「お母さん、戦争ってなに?」
「国と国とが戦うことよ」
「戦争嫌ですねえ」
「お母さん、崖好きですお」
「ガケ?」
「崖、高いですお」
「お母さん、ぼく常用漢字いっぱい書きますよ」
「いっぱい書いてね」
「お母さん、哀愁って悲しいことでしょう?」
「そうよ」
「あいしゅう、あいしゅう」
「お母さん、侮辱ってなに?」
「馬鹿にすることよ」
「侮辱、嫌ですねえ」
「林さんの心臓止まったの?」
「そうよ」
「心臓止まるの、嫌ですねえ」
「お父さん、ワイドドア凄いよね」
「どこのワイドドア?」
「小田急だよ」
「お母さん、志ってなに?」
「思いよ」
「こころざし、こころざし」
「お父さん、分かりませんの英語は?」
「あいどんとのお」
「分かりません、分かりません」
「お父さん、入るときはお邪魔します、失礼しますでしょ?」
「そうだよ」
「失礼します」
「お母さん、火元責任者ってなに?」
「火の管理をするひとよ」
「お母さん、マナーモードってなに?」
「電車の中でうるさいくしないようにすることよ」
「マナーモード、マナーモード」
「マナーモードってなに?」
「携帯が聞こえないようにするのよ」
「耕君、マナーモードをやめる?」
「いやだお」
「お母さん、心配の配ってくばること?」
「そうかあ、心をくばることが心配するってことなんだ」
「そう、そうですお」
「お母さん、麻薬ってなに?」
「痛い時のお薬よ」
「伊藤蘭が「麻薬なら私のところにあるわ」って言ってたよ」
「へええ、そうなの」
「こうぞうさん、先生だったでしょ?」
「そうよ」
「体調崩したのはこうぞうさんでしょう?」
「そうよ」
「横須賀ってぼうえい大学があるとこでしょう?」
「そうよ」
「お父さん、いとこの英語は?」
「カズンだよ」
「いとこ、いとこ、いとこ」
「お父さん、さらには、ってなに?」
「もっと、だよ」
「さらに、さらに、さらに」
「お父さん、陰は山陰線のかげだよね?」
「そうだよ」
「お父さん、残酷ってひどいことでしょ?」
「そうだよ。良く知ってるね」
「ざんこく、ざんこく、ざんこく」
「お父さん、意地っ張りって、頑固なことでしょう?」
「そうだよ」
「お父さん、約束の英語はなに?」
「プロミスだよ」
「僕、約束守るよ」
「お母さん、デートてなに?」
「待ち合わせて人と会うことよ」
「ぼく、デート好きだよ」
「お父さん、正面てなに?」
「wwww」
「お父さん、要らないの英語は?」
「ノット・ネセサリーかな」
「要らない、要らない」
「お母さん、圧死ってぺっちゃんこになることでしょ?」
「えっ、どうしてそんなこと知ってるの?」
「圧死、圧死、圧死」
「お母さん、早くいらっしゃいって、早く来なさいのこと?」
「そうよ」
「お母さん、つまらないってなに?」
「面白くないことよ。耕君、つまらないの?」
「つまらない、つまらない、つまらない」
「お父さん、支えるって助けること、でしょ?」
「そうだよ。耕君、誰を支えますか?」
「ぼく、お母さん支えますよ」
「お母さん、おっかさん、てなに?」
「おかあさんのことよ」
「おっかさん、おっかさん」
「お母さん、バクダンってなに?」
「バクダンはねえ、バーンていうやつよ」
「バクダン、嫌ですねえ」
深夜に
電話があった
荒井くんだった
酔ってた
時間を無駄にするなといった
おまえにはやることが
あるだろう
といった
FBに写真をのせることや
詩人たちと
付き合うのは止めろといった
電話を切った
翼を求めた
翼を求めている
昨夜
新幹線で帰った
車窓には
たくさんの灯りが
流れてた
悠治さんのシンフォニア11
を聴いてた
消えさるもの
流れさるものを
悠治さんは抱いてた
帰り着くと
闇の中
白い百合の花たちが咲いていた
モコの首を齧り
わたしは狼の声をだして眠った