Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) Part 3

 

今井義行

 
 

Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) Meeting Of The Soul
(たましい、し、あわせ) *太字は作者による

これが、わたしの ≪世界最短詩≫ への 返歌

Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ)
(し、あわせ)

午後4時に 散会した後 参加者たちは それぞれに
下町・浅草橋の さまざまな路地へと 去っていった

意気投合して「早くから開いてる 居酒屋、行こうや」
そんな可笑しな会話が ふっと耳に入ってきたりした

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「命令 されなくても 出ていくずら
《世界最短詩》アゲイン なむあみだぶつ!!

“シャローム”ではじまり “なむあみだぶつ”で沸点に達した
はじめての AA 参加だった…………… (いまごろ、あの人は、
盛夏の深い緑に覆われた 古都・鎌倉への道を 辿っていることだろう)

一緒にカソリック教会を出た“ナポレオン”が 呟いた
「“あまでうす”さんだったっけ
あの人、なんていうか・・・・・・ すげえ、かったな」

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写真/佐々木 眞

 

「・・・・・・・・・・・・詩人だよ 」と わたしは言った 「それにしても、
断酒ミーティングが終わると速攻で呑みに行く人たちもいるんだなあ!!」

わたしたちは、浅草橋の駅まで歩きながら お喋りをした

「呑むか、呑まないか 死活問題だなんて言うけどさ
おれにとっては本音を言えば どうだっていいんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「家族 持ったから。持って しまったもんだからさあ
覚醒剤やると 非合法だから 投獄されちまうけれど
ナポレオン 浴びるほど煽っても 酒は合法ドラッグ
だから厚生労働省が“病気”扱いにするわけだろう
アルコール病棟の患者への蔑視、犯罪者を見る目だ
それだけの違いじゃないか なんだか馬鹿々々しい」

「神」は「紙」“霊性”に身をゆだねて、みずからを助ける、
ということなら “白紙”になることだ、って 思って
みるとしてさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なんだよー、“あまでうす”さんの受け売りかよ!?」

「いや、そうじゃない。取敢えず俺たち 何度かリセットは
してるわけだろう」

「まあな、でも俺の場合、まだ リセットとは言い切れない
迷惑をかけた家族が“しあわせ”になれるような 環境を
どうにか残してそして1人になって やっと“白紙”だよ」

“白紙”って何でも描けるね“ナポレオン”さんはどんな
ことをやってみたいの? 無理に答えなくてもいいけれど」

金髪の靡く “ナポレオン”の薄青の サングラスが 光った

「死んでもいいから ナポレオンと覚醒剤に おぼれたい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

太陽はみていた ────
わたしは、胸ポケットから 折りたたんだ 紙切れを出して
“ナポレオン”の 目の前に 開いて 差し出した ────

【 Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) 】

「これ、ぼくが ミーティング中に書いた、詩なんだ」

「へえ・・・・・・・・・・・、“イマイ”さんも 詩を 書くのか?
“あまでうす”さんの詩より 長いし 何の こっちゃ」

「“ナポレオン”さんは 家族に“しあわせ”になれる
ような 環境をどうにか残して そして1人になって
やっと“白紙” になれるって 言ってただろう?」

「ああ、そのとーり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ぼくは リセットされつつあるいま 脳が反射的に
詩を選びとった その心の動きに 身を委ねるんだ
【 Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) 】
それは、“詩”と“詩”の出会い たましいどうし
それをあわせる 詩、合わせ のミーティングだ」

「なーるほど、生きてくってほうを選んだわけだな」

「リセット(Reset)されつつあるいま 詩に心身委ね、
リボーン (Reborn)するそうできたら“しあわせ”

“今井義行”と“ナポレオン”は「また、何処かで会おう」なんて
言わないで JR浅草橋 西口の構内で 別れ別れになった・・・・・・・・

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立秋が過ぎたころ わたしはネットで調べて
『地域活動支援センターえどがわ』というNPO法人へ訪ねていった

13:00の「相談予約」 冷房の効いた 小会議室で
待っていると 若いにこやかな相談員が入ってきた
産休明けの はじめての面談になるとのことだった

彼女は「どんなご相談内容ですか?」と登録用紙
を差し出しながら わたしに尋ねた ─────

「相談内容をまとめてきたので 読み上げますね」

2016/08/10

今井義行/1963年7月13日生まれ いま53歳 離職期間7年
 
無職/秋葉原メンタルクリニックでうつ治療、アルコールデイケア参加
 
他に、西大島・肝臓内科治療受診中

 

精神障害者手帳3級保持➡平成29年3月31日失効(予定)
 
精神障害者年金3級➡平成29年8月を以て支給停止(予定)
 
≪現状 年金月額 6,5000円位≫
 
毎月10万円の赤字が出ており、このままいくといずれ「生活保護申請」へ
 
●手帳が失効する前に、また年金支給が打ち切られる前に、
自分の現状に合ったかたちで、社会復帰したい。
●目標収入➡月収手取りで6〜7万円 それでも毎月10万円の赤字は出る。

≪今後の生活相談≫

わたしは、詩人です。1991-2012年までに詩集7冊上梓しました。
詩作は、現在も毎日続けており、あと1冊でよいから、詩集を出したい。
詩集というのは、ベテランでさえ私費を投じる特殊な物なので、
制作費を捻出する必要がある。また、「時代」を捉える手立てとして
労働によって、世間の動きを捉える必要があると、切実に思っております。

治療は長丁場となる見込みなので、
時間的、環境的に自分に合ったかたちの

 

就労形態を希望➡平成29年 4月からが目標

 

≪具体例≫

 

◉在宅ワーク(元編集者なので、校正、テキスト入力など)

 

◉組織体に適合しないので、近場の会社でパソコン入力など個人ペースでできる仕事

 

◉高齢者のお役に立ちたいので、資格は持っていないが、デイサービス勤務 以上です

 

「今井さん、これから多くの チャンスがあるわ」
相談員は 事務室に 戻って A3の紙を 封筒位の
大きさに たたんだ “つぼみ・8月号” と いう
登録者向けの パンフレットを わたしに手渡した

「今井さん、これにあなたの詩を載せてみない?
800部発行してるから800人の手許に届く
言葉を通じて出会いたい それが願いなのでは」

「相談員さん、ぜひ書かせてください 人の手を
握るように 詩を 届けられる好機と想います」

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使える 紙面の スペースに 制限が あるために
わたしはかつて書いた 詩のメモから1つを探し
次回の相談日に 間に合うよう手を入れていった

そうして、出来上がったのがこのような詩です

還暦
今井義行 (詩人)

あと7年 経つと 還暦になる
初老だ
いまからが ねばりどきである

数年間横たわりつつ療養をした
動かないから当然脂肪がついた

早く社会で 脂肪を燃やしたい
すいすいと動いて信頼されたい

ところが寝ている時間がとても
長かったので脚の筋肉が落ちた

階段の昇り降りが手擦りを掴み
休み休みでないと歩けなかった

会う人ごとに 「肥ったね」と
言われないように節制している
一人一人に事情を話すわけには
いかないので 動く事だと思う

そうして無駄なものは振り落し
有効なものを 奪いかえすのだ

白髪が増えても自然現象だから
堂々としていれば いいはずだ

眠ってばかりいた 眼を凝らし
街の風景をつぶさにながめれば

働いている中高年がたくさんだ
それは油彩の絵のようでもある

油絵の具の多彩な盛り上がりが
その人の 歴史になって見える

あと 7年 経つと 還暦になる
初老だ
歩いていくとふくらはぎが痛い

 

to writing_edited
写真/今井義行

◉ ご感想をお待ちしております
swrd21@aol.com

 

感想のメールは いつか 頂けるでしょうか・・・・・・・・

 
 

(完)