16歳の私

 

正山千夏

 
 

16歳の私は
自転車に乗っている
いくつもの季節を通り抜け
こぐ自転車は坂をのぼりおり
夏のひまわり たちあおい
さるすべりと内緒話をして
きんもくせいで身を飾る

いつからか
前に進むことが当たり前になっていて
空を見上げることを忘れてしまう
冬の枝葉は丸はだか
しろつめ草で編んだかんむりは
いつのまにか枯れていた
 
 
そして今日も私は
自転車に乗っている
一面の白い花はまた今年もしろつめ草
こぐ自転車は坂をのぼりおり
鼻歌まじりで空を見上げる私はまるで
冬の冷たい空気のなかに咲く
真っ赤なぼけの花

やがては
はらりはらりと散るさくらとなって
ふたたびめぐってくる
夏の朝のあさがおのように
青くひんやりとしたしあわせを胸に
こぐこぐこぐ
あしたもあさっても
こぐこぐこぐ

 

 

 

紫陽花の花を数える

 

鈴木志郎康

 
 

紫陽花の花が咲き揃った。
思わず
花数を数える。
一つ二つ三つ四つ、、、
全部で二十。
いや、
真ん中のあたりで、
花が重なってる。
数を数えられるから
数える。
数え切れないほど多ければ、
無数だ。
ビョウヤナギの花は
数え切れない。
無数だ。
桜の花って、
いつも無数だ。
一つ一つの花が
異なっていても、
無数だ。
紫陽花の花は
一つ一つ
大きさも、
色合いも、
違う。
一つ一つが
違う。
違うから
数える。
一つ一つの
違いが、
見える
紫陽花の花だ。