無い地の内地

 

ヒヨコブタ

 
 

ある日突然歩いていく方向が見えなくなる
ときがある
こころに刺さって抜けない刺をどうしたらいいかわからぬ日もある
それでも立ち止まらぬよう陽をよけて歩き
とぼとぼと
ぽとぽとと

思い出すことに救われる日もある
懐かしさが温もりのみのこともある
その真逆のときは
静かにしていようか

かつて故郷で内地と呼んだこの島は
かつての彼らには「無い地」だったのかもしれぬと思う
戻れぬ故郷を
戻らぬと決意して歯をくいしばったひとたちを
ときおり思う

そのひとたちの多くをわたしは知らず
僅かな情報は辿りたいと願った一部のことしか伝わらなかった

わたしは

どこにでも行けるのだろう
じっさい
どこにも行かなくとも

可能性という文字に放心し
戸惑いなぜかとぼんやりする日々に

思い出せる温もりは
明日に繋がると信じてきたんだ

現実にそうでなくとも
現実が醜く目を背けたくとも苦しすぎることも

繋がれた何かのさきにわたしがたまたまいる
どこの未来の命にも繋がらぬわたしが