神坏弥生
仲間と飲んで、歌って最後の盛り場を出た後
深夜1時半からしか開店しないラーメン屋がある
ラーメン店に来たのは夜中、一時半だったな
店主はカウンターの暖簾に隠れて顔は見えないが
白い制服と二の腕と手が見える
「閉店は何時だ?」
と、尋ねるとぶっきらぼうに太く低い声で
「3時」と答える
赤い暖簾が目印で白くラーメン店としか書かれていない
「おまちどぉ。」
カウンターからぬぅーとだした腕先の手につかまれたラーメン鉢には、なるとやチャーシュー、シナチク、ネギが等がのっており
湯気は有るんだが、
酔いのせいか記憶がない
憶えてんのは、あのラーメン店の店主が
さっとラーメン鉢を下げて店の奥に引っ込んじまった
で、辺りを見ると三畳一間の下宿に居るが、布団は無い
こんな時間だが、知り合いの親しくあの界隈に詳しい奴に
「あそこにラーメン屋ないか?」
と尋ねても、「そんな処に、ラーメン店は無い。それどころかそこで昔、人が死んだんだよ。おまえさぁ、終電ぐらいまでに帰れよ。こんな話なんだけどな、夜見のものを食ったら帰れんて知ってるか?」
恐ろしくて、黙って電話を切った
窓から夜鳴きそばのラッパ吹きの音がする
窓を開けても姿形もない
「俺は、どこに居るんだ?!」
今晩当たり、あの夜鳴きそばのラーメン屋のラッパが聴こえてきたら、潮時だ
夜見のもん食っちゃねぇ。
帰ろう帰ろう、あーさぶいっ。
終電のドアは閉まった
終電の終わった時間に、